DN-264: 高出力デスクトップLCDバックライト・コントローラによる広い調光率のサポートと、ランプ寿命の延長
はじめに
ラップトップ・コンピュータやハンドヘルド機器で長いこと標準的表示装置として使われてきた液晶ディスプレイ(LCD)は、デスクトップ・コンピュータの表示装置としても普及してきています。大型ディスプレイには複数の高出力冷陰極蛍光ランプ(CCFL)が必要です。これらのランプの調光範囲と予測寿命は前世代のデスクトップ・ディスプレイと同等である必要があります。効率を維持したままランプの寿命と調光範囲を最大にするには、CCFLドライブはDC成分を含まないサイン波とし、CCFLメーカーの定める電流定格を超えないようにします。クレスト・ファクタの低い正弦波でCCFLをドライブすることによっても、電流から光への変換効率を上げ、ディスプレイのちらつきを減らし、EMIとRFIの放射を抑えることができます。LT1768高出力CCFLコントローラは、ユニークなマルチモード・ディミング™を使って、必要なドライブをおこない、広い調光範囲を可能とし、ランプの寿命を最大限延ばします。
LT1768デュアルCCFLバックライト・インバータ
図1の回路はデュアルの接地ランプ・バックライト・インバータで、9V~24Vの入力電源で動作し、1個のCCFL当たり0mA~9mAの電流を供給し、調光率は100:1を超えます。この回路で使われているLT1768は、350kHz固定周波数の電流モードのパルス幅変調器で、ランプ電流制御機能を備えています。
CCFL電流はLT1768のPROGピンのDC電圧によって制御されます。この電圧はLT1768のマルチモード・ディミング・ブロックに印加されます。このブロックはこの電圧を電流へ変換してVCピンへ供給します。VCピンの電圧が上昇すると、LT1768のGATEピンは350kHzでパルス幅変調されます。このパルス幅変調により、VCピンの電圧に比例した平均電流がインダクタL1に流れます。CCFLは、T1、C4およびQ1で構成されるRoyer-classのコンバータによってドライブされます。Royerコンバータは、L1の平均電流に基づいて、効率が90%でDC成分がゼロの60kHz正弦波を発生します。両方のCCFLからの正弦波電流はDIO1/DIO2ピンを通ってLT1768へ戻ります。CCFL電流の一部はVCピンに流れて、ループを閉じます。VCピンにコンデンサを1個接続すると、ループ補償を与え、CCFL電流を平均化するので、ラインや負荷の状態にかかわらず、CCFL電流は一定に保たれます。マルチモード・ディミング・ブロックによってVC電流源の値を変えると、CCFL電流が変化し、その結果光度が変化します。
マルチモード・ディミング
以前の解決法では、リニア制御あるいはPWM制御のいずれかに限定された輝度制御法が使われていました。リニア制御法では最高の効率の回路が実現できますが、調光範囲が制限されてしまうか、あるいは調光率を大きくするとランプの仕様から外れてしまいます。PWM制御法では広い調光範囲が得られますが、CCFLの寿命に対して有害な高いクレスト・ファクタの波形を発生し、高電流では電力を浪費します。LT1768のマルチモード・ディミング(特許取得)は両方の制御法の長所を組み合わせて、できるだけ広い調光範囲を実現するとともにCCFLの寿命を延ばします。
図1の回路は0V~5VのDC電圧あるいは0V~5Vの1kHzPWM波形のどちらかをDC電圧へ変換します。フィルタをかけた入力電圧はLT1768のPROGピンへ送られます。このピンはLT1768を5つの異なった動作モードの1つへ設定してランプの輝度を制御します。図2に示されているように、どのモードが使われるかは、PROGピンとPWMピンの電圧およびRMAXピンとRMINピンから流れ出す電流によって決定されます。
オフ・モード(VPROG < 0.5V)では、CCFL電流はゼロに設定されます。
最小電流モード(0.5V < VPROG < 1.0V)では、CCFL電流はRMIN抵抗で設定される最小レベルに正確に設定されます。このモードは最小のランプ電流と輝度を決定します。
最大電流モード(VPROG > 4V)では、CCFL電流はRMAX抵抗で設定される最大レベルに正確に設定されます。このモードのCCFL電流をメーカーの最大定格へ設定すると、最大輝度が達成され、ランプの寿命を損なわないことが保証されます。
リニアモード(VPWM < VPROG < 4V)では、CCFL電流はPROGピンの電圧によってリニア制御されます。
リニアモードでは最良の電流-光変換と最高の効率が実現されます。
PWMモード(1V < VPROG < VPWM )では、CCFL電流は最小CCFL電流とVPROG = VPWMでのリニアモードのCCFL電流値の間で変調されます。PWM周波数はCTピンに接続された1個のコンデンサで設定されます。PWMのデューティ・サイクルはPROGピンの電圧によって設定されます。1Vが0%に相当し、VPWMが100%(リニアモード)に相当します。LT1768のPWMモードは、広い調光率を可能とする一方、PWMのみの調光方法の場合にみられる高いクレスト・ファクタを下げます。
これらの5つの動作モードを組み合わせると、DC制御のCCFL電流プロフィールを実現することができ、この電流プロフィールを調整して、可能な限り広い調光率を実現し、CCFLの寿命を最大限延ばすことができます。
LT1768のフォールト・モード
LT1768にはフォールト検出機能も備わっており、フォールト状態でもランプの電流定格とRoyer変圧器の定格を超さないように保護します。CCFLランプの1つが開放状態になると、LT1768はフォールト・フラグを有効にしてもう1つの電流を調節し、RMAX抵抗で設定されている最大電流を超さないようにします。両方のランプが開放状態になると、LT1768はRoyer部分をシャットダウンして危険な高電圧状態を回避します。
追加機能
LT1768は温度補償された5Vのリファレンス、低電圧ロックアウト機能、サーマル・シャットダウン、さらにロジック回路で駆動できるシャットダウン・ピン(これを有効にすると電源電流が下がります)を備えています。LT1768 は16 ピンSSOP パッケージで供給されます。