アナログICの選び方

質問:

かつて、ディスクリート・トランジスタ を選ぶときはいくら慎重になっても なりすぎることはないとおっしゃって いましたが、アナログICの場合は どうでしょうか?

RAQ:  Issue 111

回答:

これはガラスのスリッパで行います。召使いにガラスのスリッパをあらゆるメーカーに持って行かせ、入口でそれを持たせます。ガラスのスリッパにアナログ・デバイセズのロゴが映っていれば、あなたの望みどおりの品を見つけることができるでしょう。

失礼しました。もう少し真面目にご説明いたします。オーバースペックや、あまり知られていない珍しいデバイスを探そうとすると、選択プロセスが複雑になっ てICやディスクリート・トランジスタのコストも上がってしまいます。ですから、見つけるのが難しい部品や不必要なパラメータを求めるべきではありませ ん。とはいえ、ICは単体のトランジスタよりも複雑なものですから、必要なパラメータはすべてあらかじめ決めておくことが非常に重要になります。

ここでは、アンプリファレンス、 あるいはコンバータといった特定のタイプのICについてではなく、一般的な原則についてご説明します。多くの高精度アナログICに共通するパラメータは、 絶対最大定格、ESD定格、電源電圧、電源電流、消費電力、温度範囲、温度係数、電源除去比、ノイズ、パッケージ、入力インピーダンス、バイアス電流、ア ナログ出力特性、周波数範囲、そして速度、ロジック・タイプ、ロジック・レベル、データ構成、チップ・イネーブル/シャットダウン機能といったデジタル・ インターフェースの仕様です。特定のタイプのデバイスのパラメータを検討する前に、これらの一般的なパラメータの中で重要なものはどれかを決定し、それら の値について許容可能な限界値を設定することが大切です。

後ほど説明するデバイス固有のパラメータを含め重要なパラメータのリストをまず作成し、重要度の順番に整理します。次に、複数のメーカーが提供しているオンライン・パラメトリック検索エンジンを使って、すべての条件を満たすデバイスのリストを作成します。そのためにはいくつものウェブサイトを調べる必要がありますが、各メーカーはそれぞれ異なるフォーマットでデータを提供しているので、販売代理店のウェブサイトを利用するのが便利かもしれません。販売代理店のウェブサイトでは、さまざまなメーカーのデバイスを一定のフォーマットで表示しています。とはいえ、残念ながら販売代理店が行っているパラメータの比較には不十分なものが多いのが現状です。これは改善されつつありますが、現時点では一般的にメーカーのサイトをご覧になって、紙面やスプレッド・シートでデバイスを比較するほうがよいでしょう。

適切なデバイスが見つからない場合は、どのパラメータの条件を緩められるか、そしてどのくらいの数値なら許容できるかを決め、それらの新しい値に基づいて再度デバイスを探します。次に、各デバイスの特長がそのアプリケーションに適切か不適切かを確認するために、そのデバイスのすべてのパラメータを調べます。

最後に、必要な機能を良好に動作するデバイスをすべてリストアップして、どれが最も安価になるかを決定します。ICの使用コストには、デバイス自体のコストだけではなく、すべての追加部品あるいは固有電源のコスト、製造時に必要となる調整やキャリブレーションにかかるコスト、そのICが占有するプリント基板面積のコストも含まれます。最も安価なデバイスを選ぶのではなく、使用する際に最もコストがかからないデバイスを選ぶようにしてください。

著者

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James Bryant

James Bryantは、1982年から2009年に定年退職するまで、アナログ・デバイセズの欧州地区アプリケーション・マネージャを務めていました。現在も当社の顧問を務めると共に、様々な記事の執筆に携わっています。リーズ大学で物理学と哲学の学位を取得しただけでなく、C.Eng.、Eur.Eng.、MIEE、FBISの資格を有しています。エンジニアリングに情熱を傾けるかたわら、アマチュア無線家としても活動しています(コールサインはG4CLF)。