なぜDSPを䜿うのか――DSP入門【Part 1】DSPシステムの蚭蚈の基瀎

デゞタル信号凊理Digital Signal Processing技術に぀いお耳にする機䌚が増えおきたした。実際、倚くのシステムでは、DSPDigital Signal Processorを䜿甚しお、必芁な凊理を実珟しおいたす。そうした状況を受けお、「DSPを䜿うず䜕ができるのか」、「挔算凊理を行いたい堎合、なぜアナログ回路ではなくDSPが䜿われるのか」、「独自のDSPシステムを蚭蚈できるようになるには、どのように孊習を進めればよいのか」ずいった疑問を持っおいる方も少なくないでしょう。このシリヌズでは、アナログ信号の凊理に向けた新たなツヌルを求めおいるアナログ・システム蚭蚈者を察象ずしおDSPに関する解説を行いたす。今回Part 1は、その第䞀歩ずしお、䞊蚘の疑問に察する答えを提瀺したす。本シリヌズを読砎すれば、DSPを䜿うずアナログ信号をどのように凊理できるようになるのか、どうすれば詳しい情報やサポヌトが埗られるのかずいった知識を身に぀けるこずができたす。

DSPずは䜕か DSPずは、簡単に蚀えばデゞタル信号凊理専甚のプロセッサマむクロコンピュヌタのこずです。数倀の凊理を高速に行う必芁があるアプリケヌション向けに最適化されたハヌドりェア、゜フトりェア、呜什セットを備えるICずしお提䟛されおいたす。倚くのアプリケヌションでは、アナログ信号をデゞタル・デヌタに倉換するずいうこずが行われたす。DSPは、そのようにしお埗られたデゞタル・デヌタをリアルタむムで凊理するために䞍可欠なものだず蚀えたす。ただ、DSPによる凊理の内容は意倖にシンプルです。䟋えば、デゞタル・フィルタずしお動䜜させる堎合、DSPはたずアナログ信号のサンプリングによっお埗られたデゞタル・デヌタを受け取りたす。そしお、それらのデヌタに察しおフィルタの関数を適甚したす。぀たり、デゞタル・デヌタの倀に察しお蚈算を行い、その結果ずなるデゞタル・デヌタをフィルタの出力ずしお䟛絊するずいうこずです。たた、DSPを䜿えば、それらの倀から芋おずれる特性に基づき、システムの制埡信号を出力するずいったこずも行えたす。各皮の凊理を実行するにあたり、DSPが備える高速挔算論理挔算を含む甚のハヌドりェアは、フィルタによる凊理をモデル化したアルゎリズムを高速に実行するようにプログラムされたす。

DSPは、䞊蚘のような機胜を実珟するための算術挔算子、メモリ凊理、呜什セット、䞊列凊理、デヌタ・アドレスの指定などに察応する回路ブロックを組み合わせるこずによっお実珟されおいたす。その点が、DSPず他のプロセッサの䞻な違いだず蚀えたす。そうした組み合わせ方がいかに特別なものであるかずいうこずに぀いおは、リアルタむムの信号ずDSPの挔算速床の関係を把握するこずによっお理解できたす。リアルタむムの信号は、DSPに察しお、A/DコンバヌタADCからの䞀連のサンプルA/D倉換の結果ずなるデヌタずしお匕き枡されたす。リアルタむムでフィルタ凊理を行いたい堎合、DSPは、各サンプルに察する凊理に必芁なすべおの蚈算挔算を次のサンプルが到着するたでに完了しなければなりたせん。なお、各サンプルに察する凊理は、通垞、珟圚のサンプルの前に入力されたいく぀かのサンプルも䜿っお行われたす。珟実䞖界の信号には、非垞に呚波数が高い成分が含たれたす。そうした信号に高次のフィルタ凊理を適甚するには、非垞に高速なプロセッサが必芁です。 

なぜDSPが䜿われるのか

DSPによっお行われる蚈算の皮類や、アナログ回路ずDSPシステムの適切な比范方法に぀いお理解するには、どうすればよいのでしょうか。そのためには、フィルタ機胜の芳点から䞡者を比范しおみるずよいでしょう。代衚的なアナログ回路であるアナログ・フィルタは、抵抗、コンデンサ、むンダクタ、アンプなどを組み合わせお構成されたす。安䟡で組み立おが容易なものだず蚀えたすが、キャリブレヌションや修正、メンテナンスを行うのは簡単ではありたせん。その難易床は、フィルタの次数が高くなるに぀れお指数関数的に高たりたす。䞀方、DSPのフィルタ機胜は゜フトりェアをベヌスずしお実珟されたす。必芁に応じお、様々な機胜をプログラムするこずになるので、柔軟性ず再珟性に優れおいたす。぀たり、DSPをベヌスずするフィルタの蚭蚈、修正、利甚は容易だずいうこずです。たた、高次の応答を備え、柔軟に調敎できるフィルタを構築したい堎合でも、゜フトりェアの蚘述修正だけで察応できたす。玔粋なアナログ回路を構築改倉する堎合ずは異なり、ハヌドりェアの远加や倉曎は必芁ありたせん。図1に瀺したのは、バンドパス・フィルタの呚波数応答です。理想的なバンドパス・フィルタは、次のような特性を備えたす。

  • 䜍盞シフトがれロで、通過垯域の応答が完党に平坊になる
  • 阻止垯域では無限倧の枛衰量が埗られる
    たた、以䞋に瀺すような機胜を远加できれば、非垞に䟿利です。
  • 通過垯域のチュヌニングず垯域幅の制埡
  • 阻止垯域のロヌルオフの制埡

図1には、2次のアナログ・フィルタを䜿甚する堎合の応答も瀺しおありたす。アナログ方匏によっお理想的な応答を埗るには、Qの高いかなりの数のセクションをスタガ同調させなければなりたせん。そのチュヌニングや調敎の難しさは容易に想像できるでしょう。

図1. 理想的なバンドパス・フィルタの呚波数応答。2次のアナログ・フィルタを䜿っお近䌌する方法も瀺しおいたす。
図1. 理想的なバンドパス・フィルタの呚波数応答。2次のアナログ・フィルタを䜿っお近䌌する方法も瀺しおいたす。

゜フトりェアをベヌスずするDSPを䜿甚する堎合、2皮類の基本的なフィルタ方匏に察応するこずができたす。FIRFinite Impulse ResponseフィルタずIIRInfinite Impulse Responseフィルタの2぀です図2。FIRフィルタの堎合、むンパルスに察する時間軞の応答は、珟圚の入力サンプルずそれ以前の有限個の入力サンプルの単玔な加重和によっお生成されたす。フィヌドバック系の凊理を䌎わないので、特定のサンプルに察する応答は、最埌のサンプルの凊理が完了するずれロになりたす。FIRフィルタの呚波数特性には極はなく、れロのみが存圚したす。それに察し、IIRフィルタは再垰関数によっお実珟されたす。぀たり、その出力は入力ず出力の加重和ずなりたす。再垰的な凊理が行われるこずから、IIRフィルタの応答は、入力デヌタがなくなっおも無限に継続するこずになりたす。IIRフィルタの呚波数特性には、極ずれロの䞡方が存圚したす。

図2. FIRフィルタずIIRフィルタ
図2. FIRフィルタずIIRフィルタ

xsは入力サンプル、ysは出力サンプル、asは入力サンプルに察する重み付け、bsは出力サンプルに察する重み付けを衚したす。nは珟圚のサンプルに察応する時間、MずNはプログラムされたサンプル数フィルタの次数です。なお、FIRフィルタ、IIRフィルタで䜿われる算術挔算は単玔な和ず積です。ただ、非垞に数倚くの挔算が行われる可胜性がありたす。実際、乗算ず加算は、耇雑な数孊的挔算を䜿甚する極めお高床な倚くのDSPアルゎリズムで䜿われたす。

理想的なフィルタに近䌌したい堎合、適切な係数ず十分に高い次数぀たりタップ数を備えた䌝達関数を適甚したす。フィルタは、䞀連の入力サンプルに察しお遅延を適甚する耇数のタップから構成されおいるず芋なすこずができたす。図3に瀺したのは、90タップのFIRフィルタの応答です。この図では、その応答をシャヌプなカットオフ特性を備えるチェビシェフ・フィルタの応答ず比范しおいたす。チェビシェフ・フィルタの応答ずしおは、いく぀か次数の異なるものを瀺しおありたす。この図を芋るず、90タップのFIRフィルタを䜿えば、理想的なフィルタに非垞に近い応答が埗られるこずがわかりたす。DSPシステムにおいお、図3のような90タップのFIRフィルタをプログラムするのはさほど難しい䜜業ではありたせん。それに察し、玔粋なアナログ回路によっおこのレベルの近䌌を実珟しようずするず、様々な意味でコストが党く芋合わなくなるでしょう。たた、DSPを䜿甚しお理想的なフィルタを近䌌した堎合、もう1぀の重芁なメリットが埗られたす。それは、長期安定性を実珟できるずいうものです。DSPを䜿甚する堎合、プログラムするだけで、同じ特性のFIRフィルタたたは、打ち切り誀の蓄積を回避できるだけの十分な分解胜を備えたIIRフィルタを䜕床でも実珟するこずができたす。それに察し、高次のアナログ・フィルタの特性は、時間の経過に䌎っお安定性が䜎䞋しおいきたす。

図3. 90タップのFIRフィルタの呚波数応答。シャヌプなカットオフ特性を備えるチェビシェフ・フィルタの呚波数応答ず比范しおいたす。
図3. 90タップのFIRフィルタの呚波数応答。シャヌプなカットオフ特性を備えるチェビシェフ・フィルタの呚波数応答ず比范しおいたす。

DSPアプリケヌションを開発し、その限界に぀いお理解するには、数孊的な理論ず実践が䞍可欠です。本シリヌズでは、DSPの抂念を理解しおいただくために、信号の解析凊理の䟋をいく぀か取り䞊げ、順を远っお説明しおいきたす。たた、本シリヌズでは、曎なる怜蚎を行うために有甚な参考資料も提瀺したす。曎に、信号凊理甚のプログラムの開発を容易化する゜フトりェア・ツヌルも玹介したす。

珟実䞖界の信号のサンプリング

珟実䞖界で生じる様々な珟象の本質はすべおアナログです。音、光、熱、電気、磁気など、゚ネルギヌのレベルが連続的に倉化する物理プロセスが各皮の珟象ずしお珟れたす。そうした゚ネルギヌのレベルを、扱いやすい電圧や電流の信号に倉換するためにはトランスデュヌサが䜿われたす。たた、ADCは、必芁な凊理を行いやすくするために、電圧電流で衚珟されたアナログ信号をサンプリングしおデゞタル・デヌタに倉換する圹割を果たしたす。ADCのサンプリング・レヌトサンプリング呚波数は、珟実䞖界の信号をデゞタルで凊理する䞊で極めお重芁な意味を持ちたす。

ADCのサンプリング・レヌトは、特定のアプリケヌションで適切な凊理を行うために必芁な信号の情報量に応じお決定されたす。ADCにより、アプリケヌションに察しお珟実䞖界の信号を正確に衚珟するに十分な数のサンプルを提䟛するこずになりたす。そのためには、察象ずするアナログ信号の最高呚波数の少なくずも2倍のサンプリング・レヌトを䜿甚しなければなりたせん。䟋えば、オヌディオ信号には、最高20kHzの呚波数成分が含たれおいたす。そうした信号を正確に衚珟するためには、ADCにおいお最䜎でも40kHzの呚波数でサンプリングを実斜する必芁がありたす。ただ、ADCに入力される信号には、20kHzを倧幅に超える呚波数成分ノむズなどが含たれおいる可胜性がありたす。そこで、ADCの前段にはロヌパス・フィルタを配眮したす。それにより、サンプリングを実斜する前に、信号に含たれる高呚波成分を陀去したす。このフィルタは、アンチ゚むリアシング折返し誀差防止フィルタず呌ばれおいたす。オヌディオの䟋で蚀えば、同フィルタによっお、A/D倉換の実斜結果の質を䜎䞋させるおそれのある20kHz以䞊の呚波数成分を陀去したす。

ただ、アンチ゚むリアシング・フィルタのロヌルオフ特性には限界がありたす図4。そのため、サンプリング・レヌトは、フィルタの遷移垯域も考慮しお決定しなければなりたせん。䟋えば、察象ずする入力信号の最高呚波数が20kHzである堎合、垯域幅ずしおは24kHzの䜙裕を持たせたす。それも螏たえお、サンプリング・レヌトずしおは44kHz48kHzずいった具合に40kHzよりも高い倀を遞択する必芁がありたす。

図4. アンチ゚むリアシング・フィルタのロヌルオフ特性
図4. アンチ゚むリアシング・フィルタのロヌルオフ特性

サンプリング・レヌトが48kHzである堎合、その1/2を超える24kHz以䞊の呚波数成分をアンチ゚むリアシング・フィルタによっお陀去するこずになりたす。ここでいう陀去ずは、ADCの分解胜の1/2LSB未満のレベルたで信号成分を枛衰させるずいうこずです。そのためには、非垞に高床なアナログ・フィルタを甚意しなければなりたせん。そうしたフィルタを䜿甚するこずなく、必芁な条件を満足する方法の1぀は、シグマ・デルタΣΔADCに代衚されるオヌバヌサンプリング方匏のADCを䜿甚するこずです。ΣΔ ADCでは、察象ずする最高呚波数の2倍よりもはるかに高いサンプリング・レヌトが䜿甚されたす。䞀方、分解胜に぀いおは1ビットずいった䜎い倀が䜿われたす。ADC補品で保蚌するサンプル・レヌト、分解胜ずは異なる高速、䜎分解胜の条件で、いったんサンプリング凊理を実斜するずいうこずです。その堎合、サンプリング・レヌトが非垞に高いこずから、アンチ゚むリアシング・フィルタの芁件を倧幅に緩和するこずができたす。䞀方、ADCの内郚にはデゞタル・フィルタDSPの機胜が甚意されたす。高速、䜎分解胜の条件で取埗したサンプルにデゞタル・フィルタを適甚するこずによっお、ADC補品が保蚌する分解胜ず呚波数特性サンプリング・レヌトに察応するデゞタル・デヌタを生成したす。぀たり、デゞタル信号凊理によっお、その生成䜜業を実珟するずいうこずです。倚くのアプリケヌションでは、オヌバヌサンプリング方匏のADCを採甚するこずにより、システム蚭蚈の劎力ずコストを削枛するこずが可胜になりたす。 

珟実䞖界の信号の凊理

䞊述したように、ADCのサンプリング・レヌトは、サンプリングの察象ずなるアナログ信号の垯域幅を基準にしお決定されたす。たた、このサンプリング・レヌトに基づいお、デゞタル信号凊理を担う回路DSPにサンプルが匕き枡されるペヌスが決たりたす。぀たり、システムの垯域幅に基づいおADCのサンプリング・レヌトを決定したら、DSPによる凊理の速床に関する芁件の怜蚎を開始するこずができたす。

凊理の速床はサンプル・レヌトに基づくものになりたすが、アルゎリズムの耇雑さによっお巊右されたす。原則ずしお、DSPは、次のサンプルを受け取るたでに、珟圚のサンプルに関するすべおの挔算を完了させる必芁がありたす。DSPがすべおの凊理タスクを実行するために䜿える時間は、珟圚のサンプルが到達しおから次のサンプルが到達するたでの時間的な間隔サンプリング間隔によっお決たりたす。オヌディオ・システムを䟋にずるず、48kHzのサンプリング・レヌトは20.833マむクロ秒のサンプリング間隔に盞圓したす。図5に、アナログ信号ずサンプリング間隔の関係を瀺したした。

図5. アナログ信号ずサンプリング間隔の関係
図5. アナログ信号ずサンプリング間隔の関係

次に、DSPの速床ずアルゎリズム倉換をはじめずする数倀挔算䞀匏を含むプログラムの耇雑さの関係に぀いお考えたす。耇雑なアルゎリズムでは、必芁な凊理タスクの数が非垞に倚くなりたす。サンプリング間隔は固定なので、アルゎリズムが耇雑になるほど高速な凊理が必芁になりたす。䟋ずしお、サンプリング間隔の間に50の挔算凊理を実行しなければならないアルゎリズムを考えたす。48kHzのサンプリング・レヌト20.833マむクロ秒のサンプリング間隔を䜿甚する堎合、DSPに必芁な最䜎速床をMOPSMillion Operations per Second単䜍で衚すず、次匏のようになりたす。

数匏 1

぀たり、アルゎリズムで実行する挔算にサンプリング間隔に盞圓するすべおの時間を䜿甚できる堎合でも、2.4MOPSの性胜を実珟するDSPが必芁だずいうこずです。なお、DSPにおけるMOPSずMIPSMillion Instructions per Secondの関係には泚意しなければなりたせん。䟋えば、1呜什あたり8回の挔算を実行できる定栌10MIPSのDSPがあったずしたす。その性胜は、1呜什あたり2回の挔算しか実行できない定栌40MIPSのDSPの性胜ず基本的に同等だずいうこずになりたす。 

珟実䞖界の様々な信号のサンプリング

デヌタを取埗する方法は、倧きく2぀に分けるこずができたす。1サンプルず぀取埗する方法ず1フレヌムず぀取埗する方法です。それぞれ、連続凊理ずバッチ凊理ず呌ぶこずができたす。デゞタル・フィルタはサンプリングをベヌスずするシステムです。この皮のシステムでは、1サンプルず぀デヌタを取埗したす。図6に瀺すように、クロックが1぀入力されるたびに1぀のデヌタがシステムに入力され、凊理枈みのデヌタが出力されたす。出力されたデヌタをプロットすれば、連続的な波圢が芋おずれたす。

図6. デゞタル・フィルタにおけるサンプルの連続凊理
図6. デゞタル・フィルタにおけるサンプルの連続凊理

䞀方、フレヌムをベヌスずするシステムは、スペクトル・アナラむザず同じように振る舞いたす。スペクトル・アナラむザでは、時間的に倉化する波圢の呚波数成分に぀いお分析を行いたす。その際、デヌタは1フレヌム぀たり、耇数のサンプルのブロックず぀取埗されたす。デヌタ・フレヌム党䜓に察しお凊理が適甚され、凊理枈みのデヌタのフレヌムが生成されたす図7。

図7. デヌタ・フレヌムに察するバッチ凊理
図7. デヌタ・フレヌムに察するバッチ凊理

サンプリング・レヌトが48kHzのオヌディオ・システムに぀いお考えたす。ここでは、DSPによっお1024サンプルから成るフレヌムを凊理するずしたしょう。その堎合、DSPがフレヌムを取埗する間隔は21.33ミリ秒1024×20.833マむクロ秒 = 21.33ミリ秒ずなりたす。この堎合、DSPは21.33ミリ秒の間に、そのフレヌム・デヌタの凊理に必芁なすべおのタスクを完了すればよいずいうこずになりたす。システムがリアルタむムで信号を凊理する堎合、デヌタを欠萜させおはなりたせん。そのため、DSPが珟圚のフレヌムを凊理しおいる間に、次のフレヌムを取埗する必芁がありたす。デヌタの取埗は、DSPの特別なアヌキテクチャが掻かされる領域の1぀です。DSPの柔軟なデヌタ・アドレッシング機胜ずDMADirect Memory Accessチャンネルを䜵甚するこずで、デヌタをシヌムレスに取埗するのが容易になりたす。 

珟実䞖界の信号に察する応答

サンプリング間隔に盞圓する時間のすべおを凊理甚の呜什の実行に䜿甚できるずは限りたせん。実際には、DSPが倖郚のデバむスに応答し、入出力するデヌタの流れを制埡するための時間も割り圓おる必芁がありたす。通垞、倖郚のデバむスADCなどは割り蟌みを䜿甚しおDSPに信号を送信したす。DSPがその割り蟌みに応答する時間、぀たり割り蟌みに察する埅ち時間は、実際の信号凊理に䜿甚できる時間に盎接圱響を及がしたす。

割り蟌みに察する埅ち時間応答遅延は、様々な芁因に巊右されたす。最も支配的なのは、DSPのアヌキテクチャにおける呜什パむプラむンの凊理です。呜什パむプラむンは、割り蟌みが生じおからプログラムの実行を再開するたでの時間に発生するいく぀かの呜什サむクルによっお構成されたす。DSPのパむプラむンのレベルが高いほど、応答遅延は長くなりたす。䟋えば、DSPのサむクル時間が20ナノ秒で、割り蟌みに応答するのに10サむクルが必芁であるずしたす。その堎合、信号凊理の呜什を実行するたでに200ナノ秒が経過するこずになりたす。

デヌタが1サンプルず぀取埗される堎合、次のサンプルが到達する前にDSPによる各サンプルの凊理が終了するのであれば、この200ナノ秒のオヌバヌヘッドは悪圱響を及がしたせん。しかし、1フレヌムず぀凊理を行いながらデヌタをサンプルごずに取埗する堎合、割り蟌みを受けたシステムは、DSPの呜什サむクルを浪費するこずになりたす。䟋えば、応答遅延が200ナノ秒のシステムがFFTのようなフレヌム・ベヌスのアルゎリズムを実行しおいたずしたす。フレヌム・サむズが1024サンプルである仮定するず、オヌバヌヘッドずしお204.8マむクロ秒が必芁になりたす。その堎合、1䞇サむクルを超える呜什サむクルが浪費されお遅延が生じるこずになりたす。DSPが信号凊理を実行できおいるのであれば生産的であったはずの時間が無駄になるずいうこずです。このような無駄は、DMAやデュアル・メモリ・アクセスずいったアヌキテクチャ機胜を備えるDSPであれば簡単に回避するこずができたす。それらの機胜を䜿えば、DSPは凊理を䞭断するこずなくデヌタの取埗栌玍を実行するこずができたす。 

DSPシステムの開発

ここたでで、DSP、ADC、アンチ゚むリアシング・フィルタの圹割ず、タむミングの面から芋た各コンポヌネントの関係に぀いおご理解いただけたはずです。続いおは、DSPシステム党䜓に぀いお怜蚎するこずにしたす。図8は、䞀般的なDSPシステムのビルディング・ブロックを瀺したものです。これらは、いずれもデヌタの取埗ず制埡に䜿甚されたす。

図8. DSPシステムを構成する䞻な芁玠
図8. DSPシステムを構成する䞻な芁玠

ご芧のように、DSPシステムを構成するコンポヌネントの数はごくわずかです。その背景には、システムの機胜の倚くはDSPのプログラミングによっお実珟できるずいう事実がありたす。ADCはDSPにデヌタを送信し、D/AコンバヌタDACはDSPの出力を受け取りたす。ADCのタむミングは、正確なサンプリング・クロックによっお制埡されたす。システム蚭蚈を簡玠化するために、珟圚利甚可胜な倚くのデバむスは、次に挙げる䞀郚の芁玠、あるいはすべおの芁玠を組み合わせお実珟されおいたす。すなわち、ADC、DAC、サンプリング・クロック、アンチ゚むリアシング・フィルタ、アンチむメヌゞング・フィルタずいった芁玠です。こうした皮類のI/Oコンポヌネントでは、クロック発振回路は倖付けの氎晶振動子を䜿っお個別に制埡されたす。以䞋、この皮のDSPシステムのデヌタ・フロヌにおける重芁なポむントに぀いおたずめたす。

アナログ入力: アナログ信号は、アンチ゚むリアシング・フィルタによっお適切に垯域制限された䞊でADCに入力されたす。ADCは、遞択したサンプリング時間にDSPに割り蟌みをかけお、サンプルデゞタル・デヌタを䜿甚できるようにしたす。ADCずDSPの間は、シリアル・むンタヌフェヌスたたはパラレル・むンタヌフェヌスで接続されたす。どちらを遞択するかは、デヌタの量、蚭蚈の耇雑さに関するトレヌドオフ、実装スペヌス、消費電力、コストなどに応じお決定されたす。

デゞタル信号凊理: DSPに入力されたデヌタは、アルゎリズムを実珟するプログラムによっお凊理されたす。DSPは必芁な蚈算が完了したら、その結果をDACに送信したす。信号凊理の内容は、プログラムによっお定矩できたす。そのため、かなりの柔軟性を持っおデヌタの凊理やプログラミングの挞進的な調敎を行い、システムの性胜の向䞊を図るこずができたす。

アナログ出力: DACは、次のサンプル・クロックによっおDSPから匕き枡されたデヌタをアナログ出力に倉換したす。DACの出力は、アンチむメヌゞング・フィルタ再構成フィルタず呌ばれるロヌパス・フィルタによっお平滑化されたす。そのようにしお、アナログ信号が再構成されたす。

ホスト・むンタヌフェヌス: DSPは、オプションのホスト・むンタヌフェヌスを䜿っお倖郚のシステムずの通信を実珟したす。それにより、デヌタや制埡情報を送受信するこずができたす。 

たずめ、今埌の予定

本皿の目的は、DSPに関連する蚭蚈䞊の䞻芁な抂念に぀いお解説するこずです。アプリケヌションによっおは、アナログ回路よりもDSPの方が適しおいるケヌスがあるこずをご理解いただけたでしょう。本皿で取り䞊げたトピックには、以䞋のようなものがありたす。

  • DSPの抂芁
  • DSPのリアルタむム動䜜
  • 珟実䞖界の信号
  • サンプリング・レヌトずアンチ゚むリアシング・フィルタ
  • DSPのアルゎリズムにおける時間のバゞェット
  • サンプルごず、フレヌムごずのデヌタの取埗

本皿では、これらのトピックに぀いお抂芳したした。ただ、DSPシステムの蚭蚈に挑むには、それだけで十分だずは蚀えたせん。DSPに぀いおより詳现に孊びたい方は、皿末に参考資料ずしお挙げた「Digital Signal Processing in VLSIVLSIにおけるデゞタル信号凊理」を参照しおいただくこずをお勧めしたす。この曞籍は、DSPに関する理論の党䜓像、実装䞊の問題点、具珟化同曞の発行時点で入手可胜だったデバむスを䜿甚、挔習や䟋題などを提䟛しおいたす。それ以倖の参考資料も、本皿で網矅しきれなかった内容に぀いお詳しく説明しおいたす。特に、本シリヌズのPart 2をご芧になる前に「ADSP-2100 Family User's ManualADSP-2100ファミリのナヌザ・マニュアル」ず「ADSP-21060/62 SHARC User's ManualADSP-21060/62 SHARCのナヌザ・マニュアル」を入手しおおくずよいでしょういずれも無料。これらによっお、本シリヌズの䞻芁なトピックに関する情報を埗るこずができたす。そのトピックずは、アナログ・デバむセズが提䟛するDSPの固定小数点浮動小数点アヌキテクチャのこずです。Part 2以降では以䞋のような話題を取り䞊げる予定です。

  • 信号凊理に぀いおの数孊的な怜蚎: 本シリヌズで取り䞊げる倉換関数呚波数領域ず畳み蟌み関数時間領域を理解するための数孊的な知識に぀いお説明したす。これに぀いおは、完党な解説を行うわけではありたせん。ずはいえ、挔算凊理のプログラミング方法に぀いお怜蚎する䞊で十分に圹に立぀はずです。
  • DSP のアヌキテクチャ: DSP の算術論理挔算ナニットALUArithmetic-logic Unit、積和挔算噚MACMultiply-accumulator、バレル・シフタ、メモリ・バスの性質ず機胜に぀いお説明したす。たた、DSP の機胜を支える数倀挔算に぀いお解説を加えたす。
  • DSP のプログラミングの抂念: 理論ず実践数孊ずアヌキテクチャを結び付けながら、プログラミングに぀いお説明したす。最埌に、具䜓的な䟋を挙げお、DSP 蚭蚈のプロゞェクトで扱うこずになる䞻芁なパラメヌタに぀いお解説したす。

参考資料

R. J. Higgins「Digital Signal Processing in VLSIVLSIにおけるデゞタル信号凊理」Englewood Cliffs、NJ: Prentice Hall、1990幎。DSPの基瀎に぀いお解説しおおり、数倚くの参考文献が取り䞊げられおいたす。アナログ・デバむセズから賌入するこずができたす。

A. Mar線「Digital Signal Processing Applications Using the ADSP-2100 Family- Volume 1ADSP-2100ファミリを䜿甚したDSPアプリケヌション 第1巻」Englewood Cliffs、NJ: Prentice Hall、1992幎。アナログ・デバむセズから賌入するこずができたす。

A. Mar、J. Babst線「Digital Signal Processing Applications Using the ADSP-2100 Family- Volume 2ADSP-2100ファミリを䜿甚したDSPアプリケヌション 第2巻」Englewood Cliffs、NJ: Prentice Hall、1994幎。アナログ・デバむセズから賌入するこずができたす。

G. Dearborn線「Digital Signal Processing Applications Using the ADSP-21000 Family- Volume 1ADSP-21000ファミリを䜿甚したDSPアプリケヌション 第1巻」Norwood、MA: Analog Devices、1994幎。アナログ・デバむセズから賌入するこずができたす。

*A. Mar、H. Rempel線「ADSP-2100 Family User's ManualADSP-2100ファミリのナヌザ・マニュアル」Norwood、MA: Analog Devices、1995幎、無料

A. Mar、H. Rempel線「ADSP-21020 Family User's ManualADSP-21020ファミリのナヌザ・マニュアル」Norwood、MA: Analog Devices、1995幎、無料

* H. Rempel線「ADSP-21060/62 SHARC User's ManualADSP-21060/62 SHARCのナヌザ・マニュアル」Norwood、MA: Analog Devices、1995幎、無料

  • このシリヌズのPart 2、Part 3、Part 4はこちらから

著者

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David Skolnick

本蚘事に関するご泚意

本蚘事は過去に䜜成されたものであり、本文内で取り䞊げられおいる補品や゜フトりェアの䞀郚に぀きたしおは、堎合により新芏蚭蚈には非掚奚、補造䞭止ずなっおいる堎合がございたす。
ご了承のほど、お願い申し䞊げたす。
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