システムの設計は、さまざまな異なる要素を理解しなければならない複雑な問題かもしれません。しかし、ソリューションのサブセクションのプロトタイプを作成し、迅速に実証することができれば、プロセスが簡素化するばかりでなく、さらに重要なこととして、設計者が対処しなければならないリスクを減らすことができます。アナログ・デバイセズ(ADI)のシステム・デモンストレーション・プラットフォーム(SDP)を使用することにより、システム設計者は中心となる要素を再利用でき、最終的なシステム実装の前に設計のサブセクションの評価と実証を行うことができます。アナログ・デバイセズの製品を広く対象とする部品およびリファレンス回路の評価用ボードがSDP上で現在使用することができますが、今後さらに利用できる評価用ボードは広がります。システム・デモンストレーション・プラットフォームを事前に使用して理解を深めることができるため、よく理解した環境で新しいカテゴリーの部品を簡単に評価することができます。SDPはFPGA評価ボードやプロトタイピング・プラットフォームに接続できるため、アナログ・デバイセズの部品と接続するためにカスタマイズされたFPGA組込み設計を簡単に作成し実証することができます。カスタマイズされた評価およびプロトタイピング・システムを短時間で構築することができ、さまざまなプラットフォーム要素の再利用によって多種多様なハードウェア/ソフトウェアのコンセプトを簡単かつ安価に実証することができます。
プラットフォームの概要
図1に示すように、システム・デモンストレーション・プラットフォームは、一連のコントローラ・ボード、インターポーザ・ボード、ドーター・ボードで構成されており、アナログ・デバイセズの部品とこれらを使用するリファレンス回路向けの使いやすい評価システムといえます。コントローラ・ボードは、USB 2.0リンクを介してPCに接続し、オンボード・コネクタを介してSDP互換ドーター・ボードに接続します。ドーター・ボードは、専用の部品評価用ボードやCircuits from the Lab™リファレンス回路が含まれています。インターポーザ・ボードは、コントローラ・ボードとドーター・ボードを接続したり、またはSDPドーター・ボードをサードパーティ・ツールに接続させたりします。小さいフットプリントの120ピン標準コネクタがピン配置も含めてこのプラットフォームの全ボードに共通しているため、カスタマイズされたシステムの構築と変更が簡単にできます。コントローラ・ボードは120ピン・コネクタ・ヘッダを搭載し、ドーター・ボードはレセプタクル・コネクタを搭載し、インターポーザ・ボードは機能に応じてヘッダ、レセプタクル、またはその両方を搭載しています。
コントローラ・ボード
図2に、2種類のコントローラ・ボード(SDP-BとSDP-S)を示します。いずれも、USB2.0リンクを用いて、PC側のユーザ・インターフェースとシステム間のデータ転送および制御を行います。
図3に示すように、SDP-Bは、コアにADSP-BF527Blackfin®プロセッサを搭載し、PC接続用にUSBミニBコネクタを使用するスモール・フォーム・ファクタのボードです。Blackfinプロセッサは、USBコントローラとして機能するほか、ドーター・ボードへの一連のペリフェラル・インターフェースを提供します。2個の同一形状の120ピン・コネクタを介して提供するこれらのインターフェースには、SPI、SPORT、I2C、GPIO、タイマ、PPI、非同期パラレルがあります。SDP-Bコントローラは、SDP用に設計されたどのようなドーター・ボードとも組み合わせて使用できます。2個の120ピン・コネクタによって、1枚のコントローラ・ボードに2枚のドーター・ボードを同時に接続できます。
SDP-Sは、小型、低価格でシリアル専用のコントローラ・ボードであり、SDP-Bに比べて、提供するペリフェラル・インターフェースの種類が少なくなります。コアにUSB to シリアル・エンジンを搭載したSDP-Sは、SDP-B上のコネクタとピン互換の120ピン・コネクタを1つ備えています。ペリフェラル・インターフェースのサブセットとして、SPI、I2C、GPIOがあります。SDP-BはSDP-S機能の上位機能を提供しているため、SDP-Sと使用するように設計されたすべてのボードは、SDP-Bにも使用できます。表1に、SDP-BボードとSDP-Sボードで使用できるペリフェラル・インターフェースの比較を示します。
表1. コントローラ・ボードペリフェラル・インターフェース |
SDP-B |
SDP-S |
SPI |
• |
• |
SPORT |
• |
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GPIO |
• |
• |
I2C |
• |
• |
非同期パラレル |
• |
|
PPI |
• |
|
タイマ | • |
ドーター評価用ボード
図4に示すように、システム・デモンストレーション・プラットフォームで機能するデータ・コンバータ、ミックスド・シグナル、RF部品のさまざまな評価用ボードが登場しています。1枚のコントローラ・ボードさえあれば、部品選択のプロセスにおいて評価したい特定の部品やリファレンス回路のドーター・ボードを購入するだけですみます。Circuits from the Lab / 実用回路集のリファレンス回路は、複数のアナログ・デバイセズ部品を組み合わせて一般的な設計課題を解決するサブシステム・レベルのビルディング・ブロックです。これらのボードはシステムに手早く簡単に組み込めるように設計、テスト、文書化がなされており、SDPに接続することで、個々の部品設計と同じくらい簡単にリファレンス回路全体のプロトタイプ作成を行うことができます。互換性のあるドーター・ボードの一覧については、www.analog.com/jp/sdpをご覧ください。ドーター・ボードは、図5に示すように、必要に応じて外部電源を使用することができ、コントローラ・ボードを介してPCと通信するためのソフトウェアがバンドルされています。
インターポーザ・ボード
SDPで提供されるさまざまなインターポーザ・ボードは、SDPの各種ボード間で信号をルーティングしたり、SDPのボードとサードパーティの評価システムを接続したりします。SDPブレークアウト・ボードは、コントローラ・ボードとドーター・ボードとの間に配置されるボードです。片側には、コントローラ・ボードに接続するための120ピン・レセプタクル・コネクタがあり、もう一方の側には、ドーター・ボードに接続するための120ピン・ヘッダ・コネクタがあります。レセプタクルからの信号は、ヘッダに直接ルーティングされます。各信号ラインにはスルーホール・プローブ・ポイントがあり、個々に観測することができます。このように、ブレークアウト・ボードを用いると120ピン・コネクタ上の各信号に簡単にアクセスすることができます。
容易にFPGA設計との統合が実現
FPGA組込みシステムのプロトタイプを作成するために、SDPドーター・ボードをBeMicro SDK-SDPインターポーザと接続することで、BeMicro SDK(ソリューション開発キット)での開発を可能にします。BeMicro SDKは、Arrow社とAltera社との連携によって開発されました。その120ピン・コネクタ・ヘッダは、アナログ・デバイセズのデバイス評価用ボードまたはCircuits from the Lab / 実用回路集のリファレンス回路ボードからの信号を、BeMicro SDKに接続されるSamtecカード・エッジ・コネクタにルーティングします。NIOS® IIプロセッサが動作するBeMicro SDKとEclipseベースの統合開発環境を用いることで、組込みプロセッサ設計を簡単にカスタマイズし、Altera社のCyclone® 4 FPGAとアナログ・デバイセズの一連の評価用ボードによるプロトタイプ・ソリューションを作成することができます。Arrow社とAltera社との連携によって開発されたBeMicro SDKは、見慣れたUSBメモリスティックの形状をしています。図6に、BeMicro SDK、BeMicro SDK-SDPインターポーザ、アナログ・デバイセズの部品評価用ボードを示します。
プラットフォーム要素の購入
コントローラ・ボード、インターポーザ・ボード、ドーター・ボードの詳細については、www.analog.com/jp/sdpとwww.arrownac.com/interposerをご覧ください。表2は、プラットフォームのボードの参考価格を示しています。
将来のモジュール
システム・デモンストレーション・プラットフォームは、使いやすいデモおよび評価用モジュールを提供することによって増大する一方の問題を解決し、システム設計プロセスを簡素化することを目的としています。SDPは、これからもさらに進化し、拡充していくでしょう。2011年9月には、プラットフォームにシステム機能モジュールが追加され、新しい機能性が追加されます。最初のモジュールはFPGAモジュールです。SDP-FPGAモジュールは、コントローラ・ボードとドーター・ボードの間に配置され、デモンストレーションやプロトタイプ・システムの柔軟性を高めます。SDP-FPGAモジュールは、コントローラ・ボードの120ピン・コネクタに接続用のコネクタと、ドーター・ボードへの接続用に120ピン・ヘッダ・コネクタを備えています。SDP-FPGAボードは差動信号用コネクタも備えているため、差動信号方式のインターフェースを持つ部品をSDPプラットフォームに組み込むことができます。
結論
システム・デモンストレーション・プラットフォームは、これまでにもあったような単一のアナログ・デバイセズ・プラットフォームのみでは得られなかった高レベルの柔軟性をシステム設計者に提供します。システム・デモンストレーション・プラットフォームの成長と発展に伴って、再使用可能でカスタマイズできるシステム・デモンストレータおよびプロトタイプ・ビルダとしてのその有効性が増大しています。デバイスの評価用ボードやCircuits from the Lab / 実用回路集のリファレンス回路も含め、多様なドーター・ボードを使用できるため、システム・デモンストレーション・プラットフォームは、設計者の評価および実証ニーズに対するワンストップのソリューションとなります。SDPについての最新情報とリリースに関しては、www.analog.com/jp/sdpをご覧ください。