車載用のディスプレイ【Part 1】TFT液晶/有機EL/マイクロLEDの基本

概要

車載分野では、新たな種類のディスプレイが普及しつつあります。これは、より大型で、輝度/解像度/コントラスト比が高く、曲面形状に対応できるディスプレイに対する需要がかつてないほど高まった結果です。これまで自動車業界では、フラット・パネル・ディスプレイの主流としてTFT(Thin Film Transistor)液晶ディスプレイが使われてきました。しかし、現在の自動車メーカーは有機EL(OLED)ディスプレイとマイクロLEDディスプレイに注目しています。なぜなら、有機EL技術やマイクロLED技術を利用すれば、表示効果に優れ、消費電力が少なく、柔軟性が高い超薄型の製品を実現できるからです。本稿では、まずこれら3種のディスプレイ技術の比較を行います。その上で、液晶ディスプレイで使用される2T1C構成の画素(ピクセル)ドライバと、有機ELディスプレイ/マイクロLEDディスプレイで使用される7T1C/2C構成の画素ドライバについて解説します。

はじめに

本稿は、車載用途で使用されるTFT液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、マイクロLEDディスプレイについて解説する記事のPart 1です。今回は、まずそれぞれの技術の概要、特徴、特性などについて詳しく解説します。

特に車載ディスプレイの基礎、トレンド、課題、アーキテクチャに注目することにします。その上で、それぞれに対応する画素ドライバ技術を包括的に比較します。このことは、車載ディスプレイ向けの電源技術について深く理解することにつながります。

Part 2では、車載ディスプレイ向けのTFT技術と電源技術について解説します。具体的には、エッジ型(Edge-lit)/直下型(Direct-lit)のバックライトなど、ディスプレイ向けの様々な技術を取り上げます。また、ミニLEDディスプレイにおけるローカル・ディミング(局所輝度制御)についても簡単に説明することにします。

車載デジタル・キャビンのトレンド

自動車の業界は、いくつかの技術分野で急速な進化を遂げています。特に注目すべき分野は、コネクティビティ、電動化、自動運転、シェアリング・モビリティなどです。また、ユーザ・エクスペリエンスを高めるためにコックピットのデザインも大きく変貌しました。ディスプレイについては、大型化、曲面形状への対応、解像度/コントラスト比の向上が図られました。加えて、車載用のディスプレイとしては新たな種類のものに対する需要も高まっています。IHS Markit(現Omdia)が行った市場調査の結果「Automotive Display Market Tracker」によると、2018年には1億6150万枚の車載ディスプレイが出荷されました。そして、2025年の出荷枚数は2億枚を超えると予想されています1

キャビン・エクスペリエンスを向上させるために、最近の自動車は複数種のディスプレイを搭載しています。インスツルメント・クラスタ、CID(Center Information Display)、HUD(Heads-up Display)、助手席用のディスプレイ、スマート電子ミラー・ディスプレイ、サイドミラー用ディスプレイ、リア・エンターテインメント用ディスプレイなどです。これらのうち、インスツルメント・クラスタは運転者に対して速度や燃料の残量といった重要な情報を提供します。HUDは、重要な情報をフロント・ガラスに投影するためのものです。リア・エンターテインメント用ディスプレイと助手席用のディスプレイは、インフォテインメント・システムの一部として機能します。これらを使用することにより、搭乗者に対して映画鑑賞をはじめとする娯楽を提供することができます。また、デジタルCMS(Camera Monitor System)を採用すれば、バック・ミラーを2~3台のカメラに置き換えることが可能になります。サイドミラー用ディスプレイと電子ミラー・ディスプレイは、運転者が周囲の状況を視覚的に認識しやすくなるよう支援します。

IHS MarkitのAutomotive Display Market Trackerによると、2018年に出荷された車載ディスプレイ・パネルのうちサイズが10インチのものが占める割合は10%でした。この割合は、2025年までに18.4%に増大すると予想されています1。また、インスツルメント・クラスタでは12.3インチ以上のディスプレイ・パネルが主流になっています。

2017年に、Teslaは「Model 3」のタッチ・スクリーンとして15インチのディスプレイを採用しました。それ以来、車載ディスプレイ・パネルはより大型化していきました。また、解像度とコントラスト比がより高く、曲面を含むフリーフォームのデザインに対応可能なディスプレイへの移行が進みました。2019年には、Li Autoの「Li Xiang ONE」にピラーtoピラー・ディスプレイが導入されました。同ディスプレイは12.3インチと16.2インチの2つのスクリーンから成ります。2023年には、BMWの「3Series」に14.9インチの曲面タッチ・スクリーンが導入されました。運転席の端からセンター・コンソールまでにまたがるこのスクリーンは、ローカル・ディミング技術を採用しています。更に、Mercedes-Benzのコンセプト・カー「VISION EQXX」では、ローカル・ディミング技術を適用した47.5インチのピラーtoピラー・スクリーンが採用されました。図1は車載ディスプレイのトレンドについてまとめたものです。

図1. キャビンのディスプレイに関するトレンド2
図1. キャビンのディスプレイに関するトレンド2

BMWのコンセプト・カー「Vision Neue Klasse」で使われたHUDは、2025年に生産開始の予定です。この革新的なHUD技術を使えば、フロント・ガラス全幅にわたり情報を表示できます。つまり、全搭乗者にとって視認性が高い状態を実現可能です。フロント・ガラスの下部には、より高い輝度とコントラストで運転者と搭乗者に必要な情報を表示できます。更に、中央にはフリーフォーム・ディスプレイが配置されています3

ディスプレイ・パネルのアーキテクチャ

TFT液晶、有機EL、マイクロLEDは、いずれも車載ディスプレイの機能に革新をもたらす技術です。

TFT液晶ディスプレイでは、2枚のガラス基板の間に挟まれた液晶を使用します(図2)。下側の基板にはTFTが埋め込まれています。一方、上側の基板はカラー・フィルタとして機能します。液晶は通過する光の回転を調整できるように配置されます。その調整は、トランジスタに流れる電流を制御し、電界を変化させることによって実現します。カラー・フィルタを様々な比率で照らすことにより、それぞれのピクセルが異なる色になります。

図2. TFT液晶ディスプレイの構造
図2. TFT液晶ディスプレイの構造

有機ELディスプレイは自発光方式なのでバックライトは不要です。有機ELの基本構造は、ITO(酸化インジウムスズ)ガラスの上に有機発光層を重ねるというものになります(図3)。有機発光層は、仕事関数の低い2つの金属の電極に挟まれています。上の電極は陰極(カソード)、下の電極は陽極(アノード)です。

陰極と陽極に電圧が印加されると、電子輸送層(ETL:Electron Transport Layer)と正孔輸送層(HTL:Hole Transport Layer)によって、制御された量と速度で電子と正孔が有機発光層に注入されます。有機ELディスプレイはこのプロセスによって発光します。異なる化学物質を使用した有機ELを使用することにより、赤色、緑色、青色の光を生成することができます。この仕組みにより、有機ELディスプレイでは液晶ディスプレイと比べて薄型化を図ることが可能になります。それだけでなく、有機ELディスプレイはエネルギー効率、色の再現性、コントラストの面でも液晶ディスプレイより優れています。

図3. 有機ELディスプレイの構造
図3. 有機ELディスプレイの構造

マイクロLEDディスプレイは、最近になって大きな進化を遂げた技術です。その中核となる要素としては、微小なLED(個々のピクセルに相当)のアレイが使用されます(図4)。一般に、マイクロLEDのチップのサイズは50μm未満です。つまり、人間の目ではほとんど見えません。その微小なサイズと先進的なアセンブリ技術により、赤色、緑色、青色の光源が1つのピクセルに組み込まれます。マイクロLEDディスプレイにはカラー・フィルタや液晶は必要ありません。

マイクロLEDディスプレイでは、ピクセル内の各LEDが個々に発光することから、高い輝度、深い黒色、優れたエネルギー効率が得られます。この技術は、ディスプレイの分野における大きなイノベーションだと言えます。実際、構造と性能の面で他の技術では得られない長所が実現されます。マイクロLEDディスプレイは、車載用途だけでなく、スマートフォン、テレビ、ウェアラブル機器、AR(拡張現実)機器といった様々な用途に適しています。

図4. マイクロLEDディスプレイの構造
図4. マイクロLEDディスプレイの構造

TFT液晶ディスプレイは比較的成熟した技術を用いて実現されます。コストの面で圧倒的なメリットが得られるため、自動車業界ではフラット・パネル・ディスプレイの主流として位置づけられてきました。しかし、最近になって自動車メーカーは有機ELディスプレイとマイクロLEDディスプレイに高い関心を寄せています。

有機ELディスプレイは、表示効果に優れており、消費エネルギーが少なく、柔軟性が高いという特徴を備えています。また、非常に薄いディスプレイを実現できます。一方、マイクロLEDディスプレイは次世代のディスプレイ技術として台頭しつつあります。輝度とコントラストの高い曲面ディスプレイを実現できるので、車載スクリーンを設計する際の柔軟性が高まります。

但し、有機ELディスプレイには画面の焼き付きという問題があります。静止画を長時間表示するとピクセルが劣化してしまうのです。また、液晶ディスプレイと比べて寿命が短いことも欠点になります。マイクロLEDディスプレイは、量産/商用化の面で課題を抱えています。そのため、製品の価格が高くなります。

表1は、TFT液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、マイクロLEDディスプレイを比較したものです。

表1. TFT液晶、有機EL、マイクロLEDの比較3
  TFT液晶 有機EL マイクロLED
発光方式 バックライト 自発光 自発光
発光効率 低い 中程度 高い
コントラスト 中程度 高い 高い
応答時間 ミリ秒 マイクロ秒 ナノ秒
消費電力 多い 中程度 少ない
コンパクトさ 低い 中程度 高い
寿命 長い 中程度 長い
視野角 狭い 広い 広い
コスト 低い 中程度 高い

TFT液晶ディスプレイは、ミニLED(1mm未満のLED)をバックライト光源として使用すると共に、ローカル・ディミング技術を適用することでアップグレードできます。ミニLEDは、従来のLEDのサイズを縮小したものですが、マイクロLEDほど小さくはありません。一般的には、サイズが200μ未満のものはミニLED、100μm未満のものはマイクロLEDとして分類されます5

上記のように、ミニLEDは主に液晶ディスプレイのバックライト光源として使われます。それにより、コスト効率の改善、薄型化、コントラスト性能の向上を図ることができます。

画素ドライバ

光の三原色(赤、緑、青)を混合すれば、様々な色を実現できます。三原色を混合するためには、図5に示すようなピクセルが用いられます。各ピクセルは3つのサブピクセルから成り、各サブピクセルは1つのピクセルの中で管理/結合されます。

図5. ピクセルの構造
図5. ピクセルの構造

TFT液晶、有機EL、マイクロLEDはそれぞれ固有のディスプレイ技術であり、製造プロセスも全く異なります。また、各技術で実現したディスプレイのサブピクセルはそれぞれに異なる手法で駆動されます。ちなみに、TeslaのModel 3は、解像度が1920×1200ピクセルでサイズが15.4インチのTFT液晶ディスプレイを搭載しています。そのサブピクセルの総数は691万個に達します。

図6に示したのは、TFT液晶ディスプレイにおいて、液晶にかかる電界を制御するために使用されるサブピクセル用のドライバの等価回路です。この回路の構成は、1T2C(トランジスタが1個、液晶コンデンサが1個、蓄電コンデンサが1個)と呼ばれます。ゲート・ドライバは、ゲート高電圧(VGH:Voltage Gate High)と呼ばれる正の電圧を供給することでTFTをオンにします。また、ゲート低電圧(VGL:Voltage Gate Low)と呼ばれる負の電圧を供給することでTFTをオフにします。画像の情報がソース・ドライバに送信されると、同ドライバによって液晶コンデンサCLCに電荷が蓄積されます。蓄電コンデンサCSTは、CLCからのリーク電流を防ぐためのバッファとして機能します。TFT液晶ディスプレイで使用されるその他の画素ドライバについては、稿末に示した参考資料4New Driving Structure to Increase Pixel Charging Ratio for UHD TFT-LCDs With High Frame Rate(フレーム・レートの高いUHD TFT液晶ディスプレイのピクセル充電率を高める新たな駆動構造)」を参照してください。

図6. 従来の画素ドライバ
図6. 従来の画素ドライバ

有機ELディスプレイだけでなく、TFT液晶ディスプレイでも画像の焼き付きやちらつきは発生します。それらは、TFTのゲートのノードとドレインのノードの間に存在する寄生容量CGDによって引き起こされます。画像が変化してTFTがオンの状態からオフの状態に切り替わると、CGDとCLC¦¦CSTから成る容量性の分圧器によってCLCの電圧が低下します。共通バックプレーン電圧VCOMは、パネルの性能の一貫性を高めることに寄与します。この電圧は、ピクセルの遷移時間中にピクセル電圧の中心値になるように調整されます。

マイクロLEDディスプレイと有機ELディスプレイにも画素ドライバが必要です。それらのドライバのトポロジは、TFT液晶ディスプレイ用のドライバと似ています。ただ、回路の構成はより複雑になります。なぜなら、ガラス基板上またはポリイミド基板上にTFT回路が形成され、それがLEDと共に集積されることになるからです。このような構成により、各ピクセルのLEDが個別に駆動され、それぞれに異なる輝度が実現されます。

図7に示したのは、2T1C(トランジスタが2個、蓄電コンデンサが1個)と呼ばれるシンプルな画素ドライバです。このドライバについては、稿末の参考資料5Driving Technologies for OLED Display(有機ELディスプレイ向けの駆動技術)」で説明されています。この画素ドライバでは、LEDの発光に対応するアナログ信号がTFTであるM1に伝達されます。すると、閾値電圧VGSがCSTに印加されます。CSTに蓄積された電荷は、TFTであるM2を飽和領域(図8)で駆動するために使用されます。駆動用のTFTであるM2は、正の電圧VDDと陰極の電圧VSSによってLEDの電流を一定に保ちます。2T1C構成の画素ドライバによってTFTを飽和領域で駆動すれば、線形領域で動作させる場合と比べてLEDの寿命を延ばすことができます。

図7. 有機EL/マイクロLEDで使用される2T1C構成の画素ドライバ
図7. 有機EL/マイクロLEDで使用される2T1C構成の画素ドライバ
図8. MOSトランジスタの出力特性
図8. MOSトランジスタの出力特性

但し、2T1C構成の画素ドライバには欠点もあります。その欠点とは、ムラが発生したり、バイアスが加わると閾値電圧がシフトしたりするというものです。ここで言うムラの発生とは、ディスプレイの明るさが不均一になることを指します。その主な原因としては、製造プロセスに依存するばらつきが挙げられます。つまり、TFT層の密度やLEDの順方向電圧と閾値電圧の均一性のばらつきの影響が画質の問題として現れるということです。非常に優れた製造プロセスを採用しても、閾値電圧のシフトを解消することはできません。そこで、画質を改善するために、電圧をフィードバックする方法や閾値電圧のシフトを過補償する方法を適用した画素ドライバが提案されています。

図9に示したのは、7T1C構成の画素ドライバです。この回路は稿末の参考資料6Image Quality Enhancement in Variable-Refresh-Rate AMOLED Displays Using a Variable Initial Voltage Compensation Scheme(可変初期電圧補償方式を用いて可変リフレッシュ・レートのAMOLEDディスプレイの画質を改善する)」で提案されています。この回路には、図10に示すように、それぞれ初期化、補償、発光に対応する3つの動作段が含まれています。TFTであるM4は、駆動用のTFTであるM3のダイオード接続に使用されています。補償動作としては、ソース・ドライバからの電圧によってCSTに蓄積された電荷がLEDの発光を維持する役割を担います。TFTであるM1、M6、M7は、LEDがオンになるのを防ぐために使用されます。なお、稿末の参考資料7A Highly Uniform Luminance and Low-Flicker Pixel Circuit and Its Driving Methods for Variable Frame Rate AMOLED Displays(可変フレーム・レートのAMOLEDディスプレイに適したピクセル回路とその駆動方法、輝度の均一性が高くちらつきの少ない画像を実現)」では7T2C構成の画素ドライバが提案されています。

図9. 7T1C構成の画素ドライバ
図9. 7T1C構成の画素ドライバ
図10. 7T1C構成の画素ドライバに含まれる3つの段。(a)は初期化、(b)は補償、(c)は発光に対応する動作を実現します。
図10. 7T1C構成の画素ドライバに含まれる3つの段。(a)は初期化、(b)は補償、(c)は発光に対応する動作を実現します。

ディスプレイのバックプレーン技術も進化を続けています。具体的には、水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)ベースのTFTから、低温多結晶シリコン(LTPS:Low Temperature Polycrystalline Silicon)ベースのTFTと低温多結晶酸化物(LTPO:Low Temperature Polycrystalline Silicon and Oxide)ベースのTFTへの移行が進みつつあります。LTPSとLTPOは、民生用電子機器で使用される次世代のバックプレーン技術です。a-Si:HベースのTFTは電子の移動度が低い(1cm2/Vs)ので、バックプレーンのサイズが大きくなると共に消費電力が多くなります。それに対し、LTPSベースのTFTでは電子の移動度が高くなります(50cm2/Vs以上)。このことが理由となって有機ELディスプレイに適用されています。但し、LTPSベースのTFTではオフ時の電流が多くなる傾向があります。それに対し、LTPOベースのTFTではオフ時の電流を少なく抑えられます。そこで、LTPSベースのTFTとLTPOベースのTFTを組み合わせたハイブリッド型のピクセル構造が考案されました。それを有機ELディスプレイやマイクロLEDディスプレイのバックプレーンで使用することが検討されています。

まとめ

自動車で使用されるディスプレイは、キャビン・エクスペリエンスを向上するための重要な役割を担っています。実際、消費者は、視認性、安全性、ユーザ・エクスペリエンスなどが向上することを期待しています。結果として、車載ディスプレイはより優れた画質を提供できるようにするという大きな課題に直面することになりました。必要なのは、解像度/コントラスト比の向上、フリーフォームへの対応、大型化、コスト効率の向上といった要件を満たすことです。

本稿では、TFT液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、マイクロLEDディスプレイについて詳しく説明しました。より優れた性能を実現するために、有機ELディスプレイやマイクロLEDディスプレイで使用される画素ドライバは、TFT液晶ディスプレイで使われるものよりも複雑になっています。このことが原因となって、有機ELディスプレイとマイクロLEDディスプレイは量産/商用化の面で課題を抱えている状態にあります。最も大きな問題は、製品が高額になることです。そのため、ミニLEDとローカル・ディミングを適用した液晶ディスプレイが、マイクロLEDディスプレイ/有機ELディスプレイへの移行が進むまでの1つの代替手段になっています。

次回(Part 2)は、車載ディスプレイの電源技術について説明します。具体的には、バックライト・ドライバ、TFTのバイアスに使用するパワー・マネージメントIC、ローカル・ディミングなどについて解説します。

※初出典 2025年 TECH+(マイナビニュース)

参考資料

1 You Xiang Stacy Wu「Automotive Display Market Outlook( 車載ディスプレイ市場の見通し)」2019 26th International Workshop on Active-Matrix Flatpanel Displays and Devices (AM-FPD)、IEEE、2019年9月

2 Robert Prange「Trends in Automotive Display Glass Processing(車載ディスプレイ用のガラス加工のトレンド)」Glastory、2024年12月

3What Are Micro LED, Mini LED, and Micro OLED? Different Emerging Display Technologies Explained(マイクロLED、ミニLED、マイクロ有機ELとは何か - 新たなディスプレイ技術について理解する)」LEDinside、2021年8月

4 Chih-Lung Lin、Jui-Hung Chang、Fu-Hsing Chen、Po-Cheng Lai、Yi-Chien Chen、Cheng-Han Ke「New Driving Structure to Increase Pixel Charging Ratio for UHD TFT LCDs With High Frame Rate(フレーム・レートの高いUHD TFT液晶ディスプレイのピクセル充電率を高める新たな駆動構造)」IEEE Access、Vol. 10、2022年8月

5 Yojiro Matsueda「Driving Technologies for OLED Display(有機ELディスプレイ向けの駆動技術)」Handbook of Organic Light-Emitting Diodes、Springer、2022年

6 Li Jin Kim、Sujin Jung、Hee Jun Kim、Bong Hwan Kim、Kyung Joon Kwon、Yong Min Ha、Hyun Jae Kim「Image Quality Enhancement in Variable-Refresh-Rate AMOLED Displays Using a Variable Initial Voltage Compensation Scheme(可変初期電圧補償方式を用いて可変リフレッシュ・レートのAMOLEDディスプレイの画質を改善する)」Scientific Reports、Vol. 12、2022年4月

7 Younsik KIM、Kyunghoon Chung、Jaemyung Lim、Oh-Kyong Kwon「A Highly Uniform Luminance and Low-Flicker Pixel Circuit and Its Driving Methods for Variable Frame Rate AMOLED Displays(可変フレーム・レートのAMOLEDディスプレイに適したピクセル回路とその駆動方法、輝度の均一性が高くちらつきの少ない画像を実現)」IEEE Access、Vol.11、2023年

著者

Yujie Bai

Yujie Baiは、アナログ・デバイセズのシニア・アプリケーション・エンジニアです。2020年にMaxim Integrated(現在はアナログ・デバイセズに統合)に入社。車載用パワー製品のアプリケーション開発とサポートを担当しています。マイアミ大学(米国オハイオ州)で電気工学の修士号を取得しました。