EtherCATフィールドバスの紹介

EtherCAT®(Ethernet for Control Automation Technology)は、I/Oレベルでリアルタイム性を実現したイーサネットです。柔軟なトポロジにより、設計の自由度が高まります。また、EtherCATフィールドバスを採用することでケーブル数が少なくてすみ、障害の発生リスクが低減されます。高速かつダイナミックな通信構造が可能であることから、この技術は幅広く採用され、オートメーション分野のオープン・スタンダードとなっています。データで使用されるフォーマットはイーサネットと同じであるため、イーサネット・ネットワークに直接接続することができます。特別なルータやスイッチは必要ありません。

EtherCATフィールドバスが広く利用されている理由

第1の理由として、EtherCATフィールドバスは極めて高速です。ツイスト・ペア・ケーブルや光ファイバ・ケーブルを使用して、1,000個の分散I/O信号を30μsで処理したり、100個のモータ軸を100μsで処理したりできるため、リアルタイム性能の限界が更新されます。こうした高速性を備えているEtherCATフィールドバスは、オートメーションや産業用モノのインターネット(IIoT)など、リアルタイムでの最適化が求められるアプリケーションに最適です。

第2の理由として、EtherCATフィールドバスは幅広く採用されているオープン・スタンダードです。フィールドバスやワイヤレスで接続されるデバイスが増加の一途をたどるなか、EtherCATは、そうした接続を行うために好んで使用される技術の1つです。つまり、Beckhoff AutomationのEtherCAT IPを使用し、同じインターフェースを介して、幅広い製品を対象に通信を行うことができます。

第3の理由として、EtherCATフィールドバスは耐久性に優れています。EtherCAT端末は、業界標準のイーサネット・ケーブルを使用して-25°C~+60°Cの温度範囲内で動作できます。ADI Trinamic™ EtherCATコントローラは、-40°C~125°Cのオートモーティブ・グレードの温度仕様にも対応しています。

EtherCAT対応の製品に投資することは、将来に投資することを意味しています。アナログ・デバイセズが、EtherCATプロトコル・スタックを備えたモータおよびモーション制御IC用に使いやすいTrinamic製品を提供しているのは、そうした理由からです。

EtherCATのメイン・ノードとサブノードのアーキテクチャ

通常、プライマリのEtherCATコントローラは、イーサネットMACを持つ標準コンピュータや組み込みコンピュータ上のソフトウェア・ソリューションとして実装されます。EtherCATフレームを含むパッケージを実際に作成して下流のサブノードに送信できるのは、メイン(コントローラ)ノードのみです(フレームあたりのデータは最大1,518バイト)。SOEM(Simple Open EtherCAT Master)などのオープンなEtherCATコントローラ実装のほかにも、100社を超える企業が様々な汎用または専用のEtherCATコントローラ製品を提供しています。

標準のイーサネット・デバイスとは異なり、EtherCATサブノードは、非常に厳しいタイミング要件でフレームをオンザフライで処理します。その際、EtherCATサブノードは、フレームの通過時にデータを読み出し、その同じフレームに独自の情報を追加します。こうした処理を行うには、EtherCATサブノード・コントローラ(ESC)に専用のハードウェアが必要です。シンプルなサブノード・デバイスには、追加のマイクロコントローラは必要ありませんが、よりスマートで複雑なデバイスには、プロトコル処理とアプリケーション・コード用のプロセッサが必要です。こうした独自のフレーム処理方法のおかげで、EtherCATは最も高速な産業用イーサネット技術となっています。EtherCATの帯域幅利用率やそれに対応する性能を超える技術は他にありません。

EtherCAT Main/Subnode Architecture

機能の原理

EtherCATのメイン・ノードがテレグラムを作成して、下流のすべてのサブノードに送信します。データがネットワーク内の各ノードを通過するときに、サブノードはフレームを読み出し、フレームにデータを追加します。また、それと同時にストリームの下流に別のサブノードがあるかどうかを確認します。ネットワーク・セグメント内の最後のノードは、検出したポートが開いていた場合は、テレグラムの送信先のデバイスがもうないものと即座に認識します。この場合、テレグラムは、事前定義されたトポロジに従ってEtherCATのメイン・ノードに返されます。

EtherCATのメイン・ノードはデータをオンザフライで処理します。このため、サブノードがフレームを読み出したり、フレームにデータを追加したりしても、フレームの移動が停止することはありません。遅延の原因になるのはハードウェアの伝搬遅延時間のみで、受信フレームと送信フレームの間のポート間遅延は1μsです。一般に、イーサネット技術の全2重を使用して、メイン・ノードがテレグラムを送信してから受信するまでの間の遅延はわずか数ナノ秒です。

ネットワーク全体で処理する必要のあるデータは、単一のテレグラムを使用してすべて伝達できます。ただし、データが大きすぎないことが条件です。言い換えると、EtherCATのメイン・ノードはサブノードごとに新しいパッケージを作成する必要がないため、時間が節約され、集中型I/Oが不要になります。

更に、EtherCATの各サブノードはソフトウェアではなくハードウェアを介して通信します。このため、リアルタイムの重要なタスク用に残される計算能力が増加し、安定した性能が維持されると共に、ネットワーク内の他のすべてのEtherCATデバイスに対して完全な互換性が確保されます。ネットワークがEtherCATデバイスのみで構成されている場合、スイッチは必要ありません。つまり、時間の遅延が大きくなることも、インフラストラクチャの設定のために追加のコストがかかることもありません。

EtherCAT Topology

トポロジ

EtherCATはイーサネットの物理レイヤを土台にしています。データグラムは全2重で転送できます。つまり、ポートごとにバッファを備えたスイッチを介して接続が行われます。1つ、2つ、またはそれ以上のポートを持つEtherCATサブノードを使用することで、単純なライン型、スター型、ツリー型など様々なトポロジを構成できます。単一のEtherCATネットワークでは、トポロジの制限なしで最大65,535台のデバイスをサポートできます。

物理レイヤはイーサネットであるため、特別なケーブルは必要なく、クロスオーバも不要です。つまり、画像に示すように、メッシュの中心に追加の接続は必要ありません。このようなケーブルの冗長性を確保することで、障害のリスクが最小限に抑えられます。

ネットワークのセグメント(ブランチ)内の各EtherCATサブノードが下流のデバイスの有無を自動的に検出して、それぞれのポートを開閉します。チェーン末端のデバイスは、ポートを閉じてパケットを送信側に返します。メイン・ノードに戻る途中のフレームは他のすべてのサブノードで受信されますが、フレームは無視されてそのまま通過していきます。

同期

複数のサーボ軸をすべて同時に始動または停止するなど、分散アプリケーションでタイムリーな同期アクションが必要な場合は、EtherCATの分散クロック・システムが役立ちます。

分散クロック・メカニズムによってすべてのサブノード・デバイスのクロックが同期され、偏差は1µs未満になります。これらのクロックが同期されると、ネットワーク内では軸がマイクロ秒単位で同期されます。このため、通信サイクルのジッタが増加した場合でも、ジッタはごくわずかに抑えられます。

ADI Trinamicのソリューションは、オリジナルのBeckhoffコードを使用しているため、コントローラとモジュールは他のすべてのEtherCATデバイスと簡単に通信できます。このソリューションは、EtherCAT Foundationによって実証および認定されています。

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