デジタルIC電源用のデュアル・リニア・レギュレータがオンザフライ出力調整と動的なヘッドルーム最適化を実現

はじめに

低ドロップアウト(LDO)リニア・レギュレータは、多くの場合、プロセッサ・コアや通信回路にクリーンな電源を供給するために使われます。これらのアプリケーションにおいて、とりわけLDOレギュレータが有効なのは、電源出力ノイズや負荷過渡応答に関して、プロセッサやパワー・アンプに厳しい性能条件があるからです。多くの場合、これらの回路には、ソリューションのサイズを最小に抑えるため、電流定格やそのICのレールに適したLDOレギュレータが必要です。

通常、LDOレギュレータの出力電圧を調整するには、ハードウェアを変更する必要がありますが、仕様が定期的に変更されるような場合は、ボードや部品の変更によって開発時間が大幅に増えるおそれがあります。そのようなアプリケーションでは、ソフトウェアで出力電圧をプログラムできるLDOレギュレータを使用すれば、時間とコストを節約することができます。

しかし、LDOレギュレータの出力電圧のソフトウェア制御は、問題の一部を解決するにすぎません。LDOレギュレータは、しばしばスイッチング・レギュレータのポストレギュレータとして使われます。LDOレギュレータの視点からすると、スイッチング・レギュレータは、多くの場合、リニア・レギュレータの前段で入力電源を事前にレギュレーションするために使われます。スイッチング・レギュレータの出力は、適切な量のヘッドルームを持っている(LDOレギュレータのドロップアウト電圧を超えている)のが理想的です。これは、LDOレギュレータを最も効率的な範囲で使用し、最適な過渡応答が得られるようにするためです。LDOレギュレータへの入力電圧を最適な値に保つには、スイッチング・レギュレータの出力をLDOレギュレータの出力に合わせて調整する必要があります。この場合も、コストのかかるハードウェアの変更なしで行えるのが理想です。

LT3072デュアル2.5Aリニア・レギュレータは、デジタルIC電源に関するこの難しい要求を満たす一方で、ハードウェアに依存せずに出力電圧調整を行うことを可能にします。これは、LT3072がプリレギュレータからの入力電源を使用する場合も同様です。LT3072は、UltraFast過渡応答機能と80mVの低ドロップアウト電圧が特長で、負荷が急激に変化する条件下でも、厳密にレギュレーションされた電源電圧を容易に生成することができます。

LT3072の12μVrmsという低い出力ノイズとUltraFast過渡応答は、わずか10μF(1μF + 2.2μF + 6.8μF)の出力容量で実現することができます。通信回路やセンサー回路を高い性能に維持するには、低ノイズであることが重要です。

LT3072は、1つのパッケージに2つの完全に独立した2.5A LDOを内蔵しています。LT3072の出力電圧範囲は0.6V~2.5Vと十分に広く、広範なデジタルICレールに電力を供給することができます。LT3072の各チャンネルの出力電圧は、いくつかのスリーステート・ピンを設定することによってプログラムします。これは、ジャンパ、マイクロコントローラ、あるいはパワー・システム・マネージメント(PSM)ICを介して簡単に行うことができます。

低ノイズ、UltraFast過渡応答のプログラマブル・デュアル出力

図1に、電源条件の厳しいデジタルIC負荷に適したスタンドアロン回路でのLT3072の使用例を示します。厳しい電源仕様の重要な要素の1つは、図2に示すLT3072のUltraFast過渡応答のように、迅速に負荷過渡応答に対応できることです。

図1 デュアルチャンネル、2.5AのLT3072はUltraFast負荷過渡応答、12µVrmsの出力ノイズ、80mVのドロップアウト電圧などの機能により、電源条件の厳しいデジタルICのニーズを満たす。この図では、スリーステート・ピンVO1B2–0がOUT1を2.5Vに、VO2B2–0 がOUT2を0.6Vに固定するように示されているが、出力電圧はこれらのピンの状態を変えるだけで簡単に変更でき、時間とコストのかかるハードウェアの変更を行うことなく、LT3072をソフトウェア制御することが可能。

図1 デュアルチャンネル、2.5AのLT3072はUltraFast負荷過渡応答、12µVrmsの出力ノイズ、80mVのドロップアウト電圧などの機能により、電源条件の厳しいデジタルICのニーズを満たす。この図では、スリーステート・ピンVO1B2–0がOUT1を2.5Vに、VO2B2–0 がOUT2を0.6Vに固定するように示されているが、出力電圧はこれらのピンの状態を変えるだけで簡単に変更でき、時間とコストのかかるハードウェアの変更を行うことなく、LT3072をソフトウェア制御することが可能。

図2 LT3072の単一出力に関するUltraFast過渡応答は、わずか10µF(1µF + 2.2µF + 6.8µF)の出力容量で、セトリング時間を数マイクロ秒以内に短縮。中段の出力波形は、容量を追加すれば変動幅を制限できるが、その場合はセトリング時間がわずかに長くなることを示している。

図2 LT3072の単一出力に関するUltraFast過渡応答は、わずか10μF(1μF + 2.2μF + 6.8μF)の出力容量で、セトリング時間を数マイクロ秒以内に短縮。中段の出力波形は、容量を追加すれば変動幅を制限できるが、その場合はセトリング時間がわずかに長くなることを示している。

それぞれの出力値は、スリーステート・ピンVO1B2、VO1B1、VO1B0、およびVO2B2、VO2B1、VO2B0によってプログラムします。それぞれのスリーステート・ピンは、接地する、フロート状態にする、または電圧を加えることによって設定します。これにより、出力を0.6V~2.5Vの範囲でプログラム可能です。 

公称プログラム電圧への設定に加えて入力のマージニングを行えば、プログラムされた出力電圧から、更に±10%の調整を行うことができます。それぞれの入力電圧は、過渡応答性能のヘッドルームを最適化するために、2.5Vおよび0.6Vの出力電圧より200mVだけ(つまりごくわずかだけ)高くすることができます。出力電圧の状態はPWRGDピンによって示されます。また、出力電流のアナログ・モニタリング用のピンもあり、これらのピンによって精度±7%の出力電流制限をプログラムできます。更に、ダイ温度のアナログ・モニタリング用のピンもあります。

プリレギュレータの動的制御

LT3072は、前段にあるスイッチャの出力を動的に制御することができます。これにより、LDOレギュレータの入力電圧を、高効率と高速負荷過渡応答を維持できるレベルに保ちながら、その出力電圧をオンザフライで調整することができます。

図3でLT3072のプリレギュレータに使われているのは、42Vデュアル1.5V/2.5A同期整流式モノリシック降圧レギュレータLT8616です。このセットアップには、システム入力電圧範囲が3.6V~42Vのシングル電源を使用できます。このソリューションでは、LT3072のOUT1のプログラマブルな出力範囲は0.6V~1.8Vです。OUT1チャンネルはVIOCを使って対応する LT8616の出力を制御し、最適な効率と過渡応答変換領域でLDOレギュレータを使用できるようにします。OUT1は、VO1B2-1ピンを使って0.6Vから1.8Vまで動的に調整できます。 

図3 LT3072のIN1とIN2は、デュアルチャンネル降圧レギュレータLT8616によって事前にレギュレーションされる。LT3072のVOIC1とLT8616のTR/SS1を接続すれば、LT3072のIN1入力を動的に事前レギュレーションして最大限の効率と負荷過渡応答性能を実現しながら、ハードウェアを変更することなくLT3072の出力電圧を調整することが可能。

図3 LT3072のIN1とIN2は、デュアルチャンネル降圧レギュレータLT8616によって事前にレギュレーションされる。LT3072のVOIC1とLT8616のTR/SS1を接続すれば、LT3072のIN1入力を動的に事前レギュレーションして最大限の効率と負荷過渡応答性能を実現しながら、ハードウェアを変更することなくLT3072の出力電圧を調整することが可能。

OUT1リニア・レギュレータ・チャンネルの電流制限は1.8Aに設定されていますが、これは、LT8616のチャンネル1の最大出力電流1.5Aよりわずかに高い値です。OUT2は0.6Vに固定されており、2.5Aの電流を出力できます。制限値は3Aです。

LT3008-3.3はLT3072にBIASを提供します。LT8616のPG2(パワーグッド)ピンは、LT3072の起動前にわずかな遅延を発生させます。図4にLT3072によるスイッチャ・チャンネルの動的制御を示します。スイッチャ・チャンネルはLDOレギュレータの入力を事前にレギュレーションします。

図4 図3の回路の動的テスト。波形は、ソフトウェアによってスリーステート・ピンVO1B2とVO1B1(VO1B0は接地)に加えられた変更が、LT3072のOUT1の電圧をどのように変化させるのかを示す。更にLT3072はLT8616のチャンネル1出力を動的に制御し、チャンネル1出力はLDOレギュレータのIN1入力を事前にレギュレーションする。このようにして、LDOレギュレータのIN1電圧は、LDOレギュレータのOUT1に対して固定された値に維持される。つまり、最大限の効率と最良の負荷過渡応答が得られる電圧差が保たれる。これらは、すべてハードウェアを変更することなく行うことが可能。

図4 図3の回路の動的テスト。波形は、ソフトウェアによってスリーステート・ピンVO1B2とVO1B1(VO1B0は接地)に加えられた変更が、LT3072のOUT1の電圧をどのように変化させるのかを示す。更にLT3072はLT8616のチャンネル1出力を動的に制御し、チャンネル1出力はLDOレギュレータのIN1入力を事前にレギュレーションする。このようにして、LDOレギュレータのIN1電圧は、LDOレギュレータのOUT1に対して固定された値に維持される。つまり、最大限の効率と最良の負荷過渡応答が得られる電圧差が保たれる。これらは、すべてハードウェアを変更することなく行うことが可能。

まとめ

デジタルIC電源用のLT3072デュアルLDOレギュレータは、2つの低ノイズ・チャンネルとUltraFast負荷過渡応答が特長です。2つの出力電圧は、いくつかのスリーステート・ピンを設定することによってプログラムします。抵抗は不要です。LT3072への入力電源がプリレギュレータの場合は、LT3072のVIOC機能を使って入力電源を制御し、過渡応答性能や効率を低下させずに、出力電圧を動的に変更できます。

Andy Radosevich

Andy Radosevich

アナログ・デバイセズのシニア・アプリケーション・エンジニア。Power by Linearの非絶縁型、DC/DCスイッチング型、リニア型の電圧および電流レギュレータを担当。サンノゼ州立大学でMSEEを取得。専攻はパワー・エレクトロニクス。モーション・コントロールと小規模ないし中規模の製造工程の知識も有する。公共交通機関の熱心な利用者で、シリコン・バレーのエンジニアリング・イベントに行くのにバスを利用することも多い。