絶縁型ゲート・ドライバのピーク電流

概要

ゲート・ドライバについて、よく寄せられる質問があります。それは、「ドライバのピーク電流とは何なのか?」というものです。ピーク電流は、ゲート・ドライバの性能指標の中で最も重要なパラメータの1つです。実際、ゲート・ドライバの駆動能力を表す最も重要な指標だと言ってもよいでしょう。MOSFET/IGBTのターンオン時間/ターンオフ時間は、ゲート・ドライバが供給できる出力電流の影響を受けますが、それだけですべてを説明できるというわけではありません。ピーク電流という用語は、業界で広く普及しています。そのため、ゲート・ドライバ製品のデータシートを見ると、多くの場合、その名前で性能が示されています。ところが、ピーク電流という言葉の定義はメーカーや製品によって様々なのです。本稿では、ピーク電流を指標としてゲート・ドライバ製品を選択する際に生じる問題点について説明します。また、ピーク電流に関してデータシートでよく見られるいくつかの表現について検討します。更に、ピーク電流として記載された値が同程度のゲート・ドライバ製品をいくつか例にとり、それらの実力を比較することによって、駆動能力に関する議論を深めます。

アプリケーションの例

絶縁型ゲート・ドライバの主機能は、パワー・デバイスのゲートを駆動することです。それに付随するものとして、レベル・シフトや絶縁の機能も備えています。絶縁型ゲート・ドライバを使えば、ハイサイドとローサイドのパワー・デバイスを駆動することができます。また、適切な製品を選択すれば、バリア機能によって安全性を確保することも可能になります。図1に、絶縁型ゲート・ドライバを使用する標準的なアプリケーションの例を示しました。VDD1とVDD2は、それぞれ異なるグラウンドを基準にしており、それぞれの電圧は異なっている可能性があります。本稿では、1番~3番ピンが存在する方を1次側と呼び、4番~6番ピンが存在する方を2次側と呼ぶことにします。ゲート・ドライバが備える絶縁性能は、優に数百Vのレベルに達するので、高いシステム・バス電圧に対応可能です。

適切な絶縁型ゲート・ドライバを使用すれば、1次側のタイミングを2次側で再現し、スイッチング時の遷移仕様を満たすようパワー・デバイスのゲートを十分高速に駆動することができます。スイッチング時の遷移を高速化することは、スイッチング損失の低減につながります。そのため、高速にスイッチングする能力が求められるケースは少なくありません。一般に、特定のスイッチング技術を使用する場合、パワー・デバイスで扱える電力が多いほど、ゲート・ドライバにかかる負荷は大きくなります。

図1. 絶縁型ゲート・ドライバの標準的な使用例。ゲート・ドライバとしては「ADuM4120」を使用しています。
図1. 絶縁型ゲート・ドライバの標準的な使用例。ゲート・ドライバとしては「ADuM4120」を使用しています。

絶縁型ゲート・ドライバは、多くの場合、図2に示すようなハーフブリッジ構成で使用されます。ハイサイド用のドライバは、システム・グラウンドと電圧VBUSの間でスイングできるものでなければなりません。

図2. 一般的なハーフブリッジ構成
図2. 一般的なハーフブリッジ構成

負荷について考慮すべき事柄

ゲート・ドライバのスイッチング速度は、MOSFET/IGBTのゲートの充放電に要する時間によって決まります。実使用上は、ゲートに外付けの抵抗を直列に追加して、ゲート電圧の立上がり時間/立下がり時間を調整すると共に、同抵抗とゲート・ドライバICとの間で電力損失を分担することになります。ここで、ゲート・ドライバICとパワー・デバイスの接続部分をモデル化してみましょう。すなわち、出力用MOSFET段を備えるゲート・ドライバとコンデンサが、外付けの直列ゲート抵抗を介して接続されていると考えます。そうすると、図3のようなRC回路が得られます。この単純化したモデルにおいて、ソースのピーク電流はIPK_SRC = VDD/(RDS(ON)_P + REXT)という式で表されます。一方、シンクのピーク電流はIPK_SNK = VDD/(RDS(ON)_N + REXT)という式で表されます。ピーク短絡電流を測定する場合にはREXTを0Ωに設定しますが、実際のアプリケーションではREXTを外付けで使用します。

図3. ゲートへの充放電を単純化したRCモデル
図3. ゲートへの充放電を単純化したRCモデル

各変数の意味は以下のとおりです。

RDS(ON)_N:ゲート・ドライバのNMOSのオン抵抗

RDS(ON)_P:ゲート・ドライバのPMOSのオン抵抗

REXT:ゲートに接続した外付けの直列抵抗

CGATE_EQUIV:パワー・デバイスの等価容量

データシートにおける曖昧な表記

ピーク電流という指標は、ゲート駆動能力を簡潔に比較したい場合に使用されます。ところが、メーカーや製品ごとにピーク電流という言葉の意味が異なるため、必ずしもその目的に適うものにはなっていません。図4に、ゲート・ドライバが備える出力用FETのI-Vカーブの例を示しました。この図には、よく目にするいくつかのレベルも示してあります。これらのレベルは、ゲート・ドライバのメーカーがピーク電流の値を提示するためによく使用しています。特定のMOSFETにおいて、I-Vカーブの飽和レベルは製造プロセスや温度によって大きく変化します。実際、標準値の2倍あるいは1/2に変化することもよくあります。そのため、図4には標準飽和電流に加え、最大飽和電流と最小飽和電流が示されています。

多くのデータシートでは、ピーク電流として標準飽和電流の値が記載されています。その値は、出力とグラウンドの間に比較的大きな容量を接続するか、ドライバを非常に短い時間だけパルス的に短絡することによって取得されます。温度とプロセスの変動に対する最小飽和電流/最大飽和電流のI-Vカーブを示したデータシートを目にすることはめったにありません。しかし、標準飽和電流の値をピーク電流の値として使用すると、大きな問題が生じることがあります。実際のアプリケーションにおいて、十分な電流をソースすることもシンクすることもできないデバイスに遭遇する可能性があるのです。製品によっては、データシートに最大飽和電流の値を記載しているものもあれば、最小飽和電流の値を記載しているものもあります。ゲート・ドライバのピーク電流を定義する方法はもう1つあります。それは、最小飽和電流のI-Vカーブにおいて、線形領域内の最大電流値(最小線形電流)をピーク電流として扱うというものです。この方法を採用している場合、実際のアプリケーションにおいて、すべてのデバイスがこの規定値よりも大きな電流をソース/シンクできることになります。やや控えめな値を規格値にすることにはなりますが、外付けの直列ゲート抵抗の値を適切な大きさに設定すれば、温度やプロセスが変動しても、ゲート・ドライバの出力用FETが飽和領域に入ることはありません。

ピーク電流の出荷テストは、テスト環境で使用されるコンタクタに電流制限があることから、非常に困難であることが少なくありません。そのため、絶縁型ゲート・ドライバのピーク電流は、設計値や特性評価の結果を根拠として保証するという方法がよく用いられます。メーカーによって、データシートにピーク電流の最大値/最小値が記載されることもあれば、記載されないこともあります。以上のような理由から、製品を比較するためにピーク電流を指標として使用するは困難です。製品ごとに、ピーク電流の定義が異なっている可能性があるからです。加えて、ピーク電流は一定の値で流れ続けるものではありません。また、流れ続ける電流の平均値がデータシートに記載されるわけでもありません。ピーク電流は、ゲート・ドライバの出力用FETが線形領域で適切に動作している場合に、スイッチング動作の開始直後のごく短い期間に流れるだけです。

図4. ゲート・ドライバが備える出力用FETのI-Vカーブ
図4. ゲート・ドライバが備える出力用FETのI-Vカーブ

データシートに、温度とプロセスの変動に対する最小/最大飽和電流の完全なI-Vカーブが記載されていることはほとんどありません。ただ、メーカーによっては、出力用FETの標準的なI-Vカーブであれば提供していることがあります。その場合には、おそらく短絡によって取得したI-Vカーブが示されているはずです。あるいは、外付けの直列ゲート抵抗を用いて、実際のアプリケーションにおける条件をより忠実に再現して取得したI-Vカーブが示されていることもあるでしょう。後者の方法で取得したI-Vカーブでは、通常は電圧軸として2次側の電圧が使用されます。つまり、ゲート・ドライバ内部のRDS(ON)と外付けの直列ゲート抵抗に印加されたVDD2が用いられることになります。

ADuM4121」は、アナログ・デバイセズが提供する絶縁型ゲート・ドライバです。この製品のデータシートには、図5に示す標準飽和電流のI-Vカーブが掲載されています。ご覧のように、標準飽和電流は7A以上に達しています。一方、データシートの冒頭(タイトル部)には、この製品の駆動能力は2Aであると記載されています。つまり、データシートのタイトルに記述するピーク電流としては、控えめな定義に基づく値を使用しているということです。言い換えれば、温度やプロセスがどれだけ変動しても、この製品は2Aの電流を確実に供給できるということです。また、図5のI-Vカーブは、実際のアプリケーションにおける性能を再現するために、2Ωの直列ゲート抵抗を外付けした状態で取得されたものです。製品の比較を実施する際には、ピーク電流の定義がすべての製品で同一であることを確認しなければなりません。これを怠ると、比較において大きな過ちを犯してしまうことになります。

図5. I-Vカーブの例。ADuM4121のデータシートに掲載されているものです。
図5. I-Vカーブの例。ADuM4121のデータシートに掲載されているものです。

ミラー容量

MOSFETやIGBTは、ほぼ容量性の負荷だと見なすことができます。ただ、ゲート‐ドレイン間の容量が動的に変化することから、その挙動は非線形になります。例えば、MOSFET/IGBTがターンオン(またはターンオフ)する際には、状態遷移の最中に容量が変化してミラー・プラトーが観測されます(図6)。ゲート容量を充電するための電流は、このミラー・プラトーの期間中に最も多く流れます。ピーク電流の値は、この期間に流れる電流値を想定したものではありません。ただ、ピーク電流の値が大きいということは、ミラー・プラトーの期間に流せる電流量も多いということを意味します。

図6. IGBTがターンオンする際の電圧/電流。ミラー・プラトーが観測されています。
図6. IGBTがターンオンする際の電圧/電流。ミラー・プラトーが観測されています。

電力損失について考慮すべき事柄

パワー・デバイスのゲートを充放電するということは、エネルギーが消費されるということを意味します。これについて、等価容量のモデルを基に考察してみましょう。ここでは、絶縁型/非絶縁型ゲート・ドライバによる1回のスイッチング動作(スイッチング・サイクル)でゲートが完全に充放電されることを前提とします。そうすると、ゲートのスイッチング動作による電力損失は次式で表されます。

数式1

各変数の意味は以下のとおりです。

PDISS:1回のスイッチング・サイクルで生じる電力損失

CEQ:ゲートの等価容量

VDD2:パワー・デバイスのゲートにおける総電圧振幅

QG_TOT:パワー・デバイスのゲートに充電される総電荷

FS:システムのスイッチング周波数

ここでは、ゲートの等価容量CEQは、パワー・デバイス製品のデータシートに記載されているCISSと同一ではないことに注意しなければなりません。多くの場合、CEQの値はCISSの値より3~5倍大きいので、より適切な数値としては総ゲート電荷QG_TOTの値を使用すべきです。また、この式には充放電にかかわる直列抵抗が関わっていないことにも注意しなければなりません。この式は、スイッチング動作によって生じる総電力損失を表しています。ゲート・ドライバIC内の総電力損失を表しているわけではありません。

絶縁型ゲート・ドライバ向けの規格では、異なる絶縁領域を適切な沿面距離とクリアランス距離で分離することが求められています。1次側から2次側への経路にガルバニック導体が存在する場合には、その分を沿面距離とクリアランス距離から差し引きます。そのため、絶縁型ゲート・ドライバにおいて露出パッドやヒート・スラグを目にすることは非常に稀です。つまり、ICの熱抵抗を下げるための効果的な1つの手法を利用できないということになります。そのため、絶縁型ゲート・ドライバでは、電力損失の発生個所をパッケージの外に移し、周囲温度がより高い場合でも問題なく動作できるようにすることが非常に重要になります。

繰り返しになりますが、絶縁型ゲート・ドライバにはヒート・スラグを適用できません。そのため、パッケージの熱抵抗は、ピン数、内部の金属配線、リードフレームの接続、パッケージ・サイズにほぼ依存することになります。そこで、製品間で比較を実施する場合には、できればパッケージ・サイズやピン数、ピン配置が同じものを候補とするようにします。そうすれば、θJAの値がほぼ同等の製品を比較できることになります。

ゲート・ドライバICでは、内部の熱放散によって接合温度が上昇します。式1で示したのは、パワー・デバイスのゲートをオン/オフすることで生じる総電力損失です。ゲート・ドライバIC内部の電力損失は、出力用FETのオン抵抗RDS(ON)_N、RDS(ON)_Pと外付けの直列ゲート抵抗REXTに割り振られます。ゲート・ドライバが主に線形領域で動作する場合、その内部で生じる電力損失の割合は次式で与えられます。

数式2

RDS(ON)_N = RDS(ON)_P = RDS(ON)と仮定すると、式2は以下のように簡略化できます。

数式3

パワー・デバイスのスイッチングによりゲート・ドライバICで発生する総電力損失は、式1と式3を乗じたものになります(以下参照)。

数式4

上式から、RDS(ON)が小さいほど、絶縁型ゲート・ドライバの内部で生じる電力損失の割合が小さくなることがわかります。目標とする立上がり時間/立下がり時間に適合させるには、パワー・デバイスのゲートの充放電に関わるRC時定数の値を維持する必要があります。RC時定数の抵抗成分は、オン抵抗RDS(ON)と外付けの直列ゲート抵抗を直列に接続したものです。ここで、アプリケーションにおいて、競合する2つのゲート・ドライバ製品の立上がり速度/立下がり速度が同一になるように使用するケースを考えます。その場合、RDS(ON)が低い方のドライバでは、外付けの直列ゲート抵抗としてより値の大きいものを使用しても、トータルの直列抵抗の値を維持することができます。そうすれば、ゲート・ドライバIC内部で生じる電力損失をより低減することが可能です。

現実の製品の比較

ここでは、現実の製品を例にとり、ピーク電流に関連する比較を行ってみます。その目的は、ピーク電流の定義が製品によってどのように異なる可能性があるのかを示すことです。また、絶縁型ゲート・ドライバ内部のRDS(ON)が小さいことによって得られるメリットを示すことも目的の1つです。比較の対象とする絶縁型ゲート・ドライバとしては、4Aのピーク電流に対応する3つの製品を選択しました。ADuM4221、競合品1、競合品2の3つです。いずれも、沿面距離、クリアランス距離、ピン配置、ランド・パターンは同等です。そのため、レイアウトが同じ基板を使用して3つとも評価することができました。具体的には、ADuM4221の評価用ボードをプラットフォームとして使用しました(図7)。

図7. ADuM4221の評価用ボード
図7. ADuM4221の評価用ボード

各製品のデータシートには、ソース電流/シンク電流について表1のように記載されています。

表1. 各製品のデータシートの比較
  ソース電流〔A〕 シンク電流〔A〕
ADuM4221 4 4
競合品1 2 4
競合品2 4 6

これを見ると、競合品2は最もゲート駆動能力が高く、所定の負荷に対して最も短い立上がり時間/立下がり時間を実現できるようです。ここでは、分析を簡素化するために、負荷としてセラミック・コンデンサを使用し、ミラー・プラトーが電流/電圧波形に現れないようにします。また、デュアル出力のドライバのうち、一方の出力だけを使用することにしました。

1つ目のテストでは、図3に示す構成で各ドライバの評価を行いました。具体的な条件としては、0.5Ωの直列ゲート抵抗を外付けし、それを介して100nFの負荷を駆動することにしました。ドライバの出力がターンオン/ターンオフするのは各1回だけとし、ドライバの内部で発生する電力損失を抑えました。このような手法により、ピーク短絡電流のテストを適切に実施することができます。それによって得られた結果を図8、図9として示しました。

 

図8. ターンオン時の電圧波形(a)と電流波形(b)。0.5ΩのREXTと100nFの負荷を使用して評価を実施しました。
図8. ターンオン時の電圧波形(a)と電流波形(b)。0.5ΩのREXTと100nFの負荷を使用して評価を実施しました。
図9. ターンオフ時の電圧波形(a)と電流波形(b)。0.5ΩのREXTと100nFの負荷を使用して評価を実施しました。
図9. ターンオフ時の電圧波形(a)と電流波形(b)。0.5ΩのREXTと100nFの負荷を使用して評価を実施しました。.

図8を見ると、製品ごとにターンオンの速度が大きく異なることがわかります。意外にも、最大のピーク電流を謳う競合品2の立上がり時間が最も長くなっています。トータルの立上がり時間は、電流値の積分によって決まります。図8(b)の電流波形を見ると、いずれの製品も表1に示した値を超える電流を供給しています。但し、競合品2は大きな電流値を維持できていないことがわかります。一方、図9(a)に示したターンオフ時の電圧波形を見ると、いずれの製品も似たような結果になっています。ただ、図9(b)のように、競合品2では保持される電流値が最も小さくなっています。それでも、ターンオフについてはいずれも同様の性能を示すと言ってよいでしょう。以上の結果から、データシートを基に判断すると最も性能が高いはずの製品が、実力では他の製品よりも劣っていることがわかります。

続いて、3つの製品の熱性能を比較してみます。その評価は、立上がり時間/立下がり時間が3製品で同等になるように調整し、一定のスイッチング周波数でデバイスを動作させることで行いました。図8に示したとおり、立ち上がり時間はADuM4221が最も短くなっています。したがって、残り2製品と立上がり時間が同等になるようにするために、外付けの直列ゲート抵抗としてより値の大きいものを使用できます。競合品1には0.91Ω、競合品2には0.97Ωの抵抗を外付けしました。それに対し、ADuM4221には1.87Ωの抵抗を外付けすることで立上がり時間を同等にすることができました。ADuM4221のターンオフ抵抗は0.97Ωに調整しました。以上の結果、3製品の入出力波形は図10のようになりました。

図10. 3つの製品の立上がり時間/立下がり時間を調整した結果。チャンネル1に示したのは入力電圧です。チャンネル2はADuM4221、チャンネル3は競合品1、チャンネル4は競合品2の出力電圧です。
図10. 3つの製品の立上がり時間/立下がり時間を調整した結果。チャンネル1に示したのは入力電圧です。チャンネル2はADuM4221、チャンネル3は競合品1、チャンネル4は競合品2の出力電圧です。.

立上がり時間/立下がり時間が同等になるように調整すると、電流波形の積分値は同等になります。また、パワー・デバイスにおけるスイッチング損失は、実際のアプリケーションの値と同等になるでしょう。外付けの直列ゲート抵抗としてより値の大きいものを使用することで、絶縁ゲート・ドライバの外部により多くの熱負荷を分担させることができます。図11、図12、図13に示したのは、それぞれ同一周囲温度の条件下で動作している3つの製品の熱画像です。これらは、スイッチング周波数が100kHz、2次側の電圧が15V、負荷容量が100nFという条件で取得しました。

図11. ADuM4221の熱画像
図11. ADuM4221の熱画像
図12. 競合品1の熱画像
図12. 競合品1の熱画像
図13. 競合品2の熱画像
図13. 競合品2の熱画像

画像中の十字印の部分が、各絶縁型ゲート・ドライバの出力領域です。その右側にある明るいスポットは、外付けの直列ゲート抵抗の部分にあたります。直列ゲート抵抗の部分を比較すると、ADuM4221では競合品1、競合品2よりも温度が高くなっていることがわかります。これは想定どおり、かつ望ましい状態です。いずれの製品も、同一のスイッチング周波数、同一の負荷容量で動作させているので、トータルの電力損失も同等です。したがって、外付けの抵抗で消費する電力が多いほど、ゲート・ドライバICの内部で消費する電力は少なくなります。

競合品1は、その表面温度がADuM4221よりも35.3°C高い状態で動作しています。競合品1はRDS(ON)が高いため、熱性能の面で限界があるということです。同様に、競合品2も内部の電力損失により、表面温度がADuM4221よりも18.9°C高くなっています。同一の動作条件において、ADuM4221よりも発熱が大きくなるということです。この評価結果から、ゲート・ドライバ製品を選択する際には、オン抵抗の値を確認し、高い熱性能が得られるか否かを検討すべきだということがわかります。この熱性能は、より高い周囲温度で動作させる場合に重要な意味を持ちます。表2に、評価結果をまとめておきます。

表2. 熱性能の比較(温度が低いほど優れている)
  REXT_ON (Ω) REXT_OFF (Ω) ICの温度〔°C〕
ADuM4221 1.87 0.97 104.6
競合品1 0.91 0.91 139.9
競合品2 0.97 0.97 123.5

まとめ

本稿で説明したように、データシートに記載されているソース電流/シンク電流の値は、実際の値と大きく異なっている可能性があります。データシートのタイトルを眺めただけで製品の駆動能力を把握したつもりでいると、大きな問題が発生してしまうかもしれません。残念ながら、ピーク電流の定義は透明性に欠けています。そのため、ユーザ自身で十分なテストを実施しなければ、製品の能力を過大評価/過小評価してしまうおそれがあります。その結果、アプリケーションで使用する製品の選択を誤ってしまうかもしれません。データシートに記載されているピーク電流の値が同一の定義に基づくものであるか否かを確認することが重要です。それにより、初めて適切な比較が行えます。絶縁型ゲート・ドライバの評価を実施する際には、熱性能の面で余裕があることや、RDS(ON)が十分に小さいことの重要性を認識する必要があります。本稿で示したとおり、異なる2つ以上の製品の立上がり時間/立下がり時間が同等になるように調整することは可能です。しかし、RDS(ON)がより小さい製品を選択すれば、スイッチング速度に関する柔軟性が高まると共に、熱性能の面で余裕を得ることができます。

Ryan Schnell

Ryan Schnell

Ryan Schnellは、アナログ・デバイセズのアプリケーション・エンジニアです。iCoupler技術を適用した絶縁型ゲート・ドライバなど、様々なパワー・マネージメント製品を担当しています。コロラド大学で電気工学の学士号と修士号、パワー・エレクトロニクスに関する研究で博士号を取得しています。

Sanket Sapre

Sanket Sapre

Sanket Sapreは、アナログ・デバイセズのインターフェース/絶縁技術グループに所属するアプリケーション・エンジニアです。iCoupler®技術によって絶縁を実現するゲート・ドライバ製品などを担当しています。ムンバイ大学で電子工学の学士号、コロラド大学ボルダー校で電気工学の修士号を取得しています。