高精度電源リファレンス・レベル・シフト付きの高性能差電圧アンプ(Difference Amp)

ジオメトリィの小さなプロセスによって設計された高性能A/Dコンバータ(ADC)は、一般に1.8 ~ 5Vの単電源で動作します。このようなコンバータで±10V以上の信号を処理するときは、ADCの前にアンプ回路を配置し、信号を減衰してADC入力の飽和を防ぎます。信号に大きな同相電圧が含まれるときは、多くの場合差電圧アンプが使用されます。

差電圧アンプが同相電圧をどれだけ除去できるかは、ゲイン設定抵抗の比のマッチングによって決まります。マッチングの度合いが高いほど、同相ノイズ除去比(CMR)が高くなります。0.1%精度の抵抗を使用したディスクリート・アンプの場合、CMRは計算上54dBまでです。それに比べて、オペアンプと高精度にレーザー・トリムされた抵抗を内蔵したICでは、80dBを上回る高いCMRを実現できます。

初期の差電圧アンプは、ほかの多くのアナログICと同様、±5 ~±15V電源での動作が普通でした。ADCやその他の部品の電源電圧が低くなり、時に両電源を必要とする回路はフロントエンドの差動アンプだけとなってしまいました。しかし、この単電源動作する回路の中にひとつだけ負電源を追加するのはかなり面倒でした。

新しい差電圧アンプは2.7 ~ 15Vの単電源で動作しますが、オペアンプの入出力は特定の動作条件下では負のレール(グラウンド)に張り付いてしまいます。負の同相電圧を含む信号を測定するには、同相入力電圧を負のレールより上げる必要があります。負の信号を測定するには、アンプの出力を負の電源レールよりシフトする必要があります。これらのレベル・シフトはいずれも、正の電圧をリファレンス・ピンに印加することで可能です。たとえば、単電源5Vの場合、リファレンス・ピン に2.5VのDC電圧を入力し、出力を電源中央値に設定し、オペアンプ入力の同相電圧をシフトします。このDC電圧はソース・インピーダンスを低くしてCMRの低下を防ぎ、ドリフトを抑えて全温度範囲で精度を維持する必要があります。図1に、2個の外付け高精度抵抗と低ドリフトの高精度オペアンプを使用した代表的なソリューションを示します。

図2に示すのは、代わりのソリューションです。このソリューションは、複数の高精度トリム抵抗を内蔵した差電圧アンプAD8271を使用することでコストを低減し、性能を向上させます。オンチップ抵抗器がデバイスの出力を電源中央値に設定します。抵抗器はすべて同じ品質の低ドリフト薄膜抵抗材料で製造されており、全温度範囲で良好な抵抗の比のマッチングを示します。これらの抵抗は回路内のほかの抵抗ともマッチングするように調整されているため、CMR性能が低下することはありません。

高精度プログラマブル・ゲイン差電圧アンプ

ゲインをプログラムできる低歪み差電圧アンプAD8271 は、高精度オペアンプと7個のレーザー・トリムされたゲイン設定抵抗器を備えており、0.5、1、2の差動ゲインを選択できます。また、−2 ~+3のゲイン範囲で40通り以上のシングルエンド構成に設定することができます。このデバイスには2つのグレードがあります。B グレードは、最大ゲイン誤差が0.02%、最大ゲイン・ドリフトが2ppm/℃、最大オフセットが600μV、同相ノイズ除去比が80dBミニマムに仕様規定されています。A グレードは、最大ゲイン誤差が0.05%、最大ゲイン・ドリフトが10ppm/℃、最大オフセットが1000μV、同相ノイズ除去比が74dBミニマムです。いずれのグレードも、高調波歪みは−110dB、帯域幅は15MHz、スルーレートは30V/μsと規定されています。高速性と高精度を兼ね備えたこのデバイスは計測用アンプとして、またADCの駆動アンプ、レベル・シフト、自動試験装置に最適です。AD8271は5 ~ 36Vの単電源と±2.5 ~±18Vの両電源で動作し、電源電流は2.3 mAです。動作温度範囲は−40℃~+85℃で、製品価格は1.25ドル(1000個単位)からです。

Figure 1
図1. 電源中央値出力を備えた単電源差電圧アンプ
Figure 2
図2. AD8271は外部部品を使用せずに出力を電源中央値にシフト

Moshe-Gerstenhaber

Moshe Gerstenhaber

Moshe Gerstenhaberは、アナログ・デバイセズのディビジョン・フェローです。1978年の入社以来、長年にわたり製造、製品エンジニアリング、製品設計などの部門でさまざまな上級職として活躍してきました。現在は、集積アンプ製品グループの設計マネージャです。アンプ設計、特に計装アンプや差動アンプなどの超高精度特殊アンプ分野でこれまで多大な貢献があります。

Michael O'Sullivan

Michael O'Sullivan

Michael O’Sullivanは、2004年からアナログ・デバイセズに勤務しています。現在は、集積アンプ製品グループの製品&テスト・エンジニアリング・マネージャであり、製品の特性評価、計装アンプや差動アンプなどの超高精度特殊アンプのリリースをサポートしています。入社以前も、半導体分野の製品エンジニアとして14年以上の実績がありました。