2段階昇圧

低電圧から高電圧を生成する必要がある場合、昇圧コンバータを使用することができます。これは3つの基本的なスイッチング・レギュレータ・トポロジの1つで、必要なのは2個のスイッチ、1個のインダクタ、および入出力コンデンサだけです。昇圧コンバータ以外の基本的トポロジは、降圧コンバータと反転昇降圧コンバータです。昇圧コンバータの回路図を図1に示します。オン時間の間は、スイッチS1が閉じてエネルギーがコイルLに保存されます。インダクタ電流は、入力電圧とグラウンド電位の差、つまり入力電圧と共に直線的に増加します。オフ時間の間、つまりS1を開いてS2を閉じると、インダクタに保存されたエネルギーが出力に供給されます。この時間内に、インダクタの電圧は出力電圧から入力電圧を引いた値に等しくなります。

図1. 低電圧から高電圧を生成するための昇圧トポロジ

図1. 低電圧から高電圧を生成するための昇圧トポロジ

この相互作用を機能させるには、インダクタを充電および放電するための十分な時間が必要です。これは、制御ループを使って以下のように考えることができます。より多くのエネルギーが出力に必要な場合は、より多くのエネルギーを入力から出力へ運ばなければなりません。そのためには、より多くのエネルギーを一時的にインダクタへ保存する必要があります。スイッチS1も、より長時間にわたって導通を維持しなければなりません。ただし、スイッチ周波数が固定されている場合、これは、オフ時間の間にインダクタからエネルギーを取り出すために使用できる時間が少なくなることを意味します。結果として、出力電圧は目標値より低くなってしまいます。これは、特に昇圧トポロジに見られる制約です。このような理由により、使用可能な入力電圧をどれだけ上回る出力電圧が取り出せるかについての制約が生じます。代表的なアプリケーションにおけるこの最大昇圧率は3~7です。

最大可能昇圧率とそれぞれのデューティ・サイクル間の標準的な関係を図2に示します。正確な曲線は、昇圧コンバータ出力における負荷抵抗とインダクタのDC抵抗の関係によって異なります。図2に示すグラフでは、100Ωの負荷抵抗が使われています。出力電圧が48Vの場合、これは480mAの負荷電流に相当します。インダクタの直列抵抗(DCR)を2Ωとすると、実現可能な最大昇圧率は3をわずかに上回る程度です。DCRが1Ωの場合は、5をわずかに上回る昇圧率が得られます。昇圧率をこれより大きくするには、できるだけ直列抵抗値の小さいインダクタを選ぶ必要があります。

図2. インダクタ抵抗のDCR(DC抵抗)によって決まる最大可能昇圧率

図2. インダクタ抵抗のDCR(DC抵抗)によって決まる最大可能昇圧率

より高い昇圧率がアプリケーションに求められる場合は、2段階昇圧も1つの選択肢です。アナログ・デバイセズの新しいLTC7840は、1つのチップに2つの昇圧コントローラを組み込んでいます。このため、2段階昇圧の概念を容易に実現することができます。12Vの電源電圧を240Vの出力電圧に昇圧する場合の例を図3に示します。この例では2つの昇圧段がそれぞれ分担して昇圧を行っていますが、各段の昇圧率は4.5程度で済んでいます。

図3. 低入力電圧から非常に高い出力電圧を生成するための2段階昇圧の構想

図3. 低入力電圧から非常に高い出力電圧を生成するための2段階昇圧の構想

まとめ

この記事では、1段で実現可能な昇圧率よりもはるかに高い昇圧率を実現できる2段階昇圧の概念を説明しました。もちろん、入力電圧を大幅に昇圧するためにトランスベースのトポロジを選ぶこともできます。例えば、フライバック・コンバータなどが一般的です。しかし、ガルバニック絶縁が不要な場合は、2段階昇圧のほうがいくつかの点でフライバック・コンバータよりも優れています。トランス・コアでの損失によるスイッチング周波数の制約がなく、ソースにかかる負荷がパルスではなく連続的なものなので、大型で高価なトランスを使う必要はありません。したがって、様々なアプリケーションに対し、その選択プロセスで2段階昇圧の採用を考えてみることをお勧めします。

Frederik Dostal

Frederik Dostal

Frederik Dostalは、ドイツのエアランゲン・ニュルンベルク大学でマイクロエレクトロニクスについて学びました。2001年にパワー・マネージメント事業の分野で働き始め、アリゾナ州フェニックスで4年間にわたってスイッチング電源を担当したほか、さまざまなアプリケーション分野の業務に携わってきました。2009年にADIに入社し、ミュンヘンのアナログ・デバイセズでパワー・マネージメントのフィールド・アプリケーション・エンジニアとして従事しています。