信頼性の高い連続的な振動監視を実現する内蔵型インテリジェンス/コミュニケーション

センサーベースのプロセス監視と予知保全により、ゼロ・ダウンタイム、メンテナンス・コストの削減、優れた労働安全性を実現できます。従来のテクノロジーを採用した製品にはメリットより制限事項が多いことに加え、オーバーヘッド・コストやリスクが関係していたため、これらのメリットを容易に実現できませんでした。

個別のテクノロジーを活用して複雑な問題を解決する代わりに、振動の監視をより慎重かつ戦略的にシステム全体として捉えることで、テクノロジーの価値を発揮できます。

センサーとセンサー処理の進歩により、機器の欠陥、アンバランス、性能低下、その他の異常を確実に検出および解析できるようになる、完全内蔵型の自律的センシング・システムを導入できます(図 1)。

図 1. 状態監視およびメンテナンスの自動化はワイヤレス・センシング・ネットワークの有望な分野。

完全内蔵型の自律的センシング・システムを実装する前に、システム設計に関する次の 4 つの事項を解析および考慮することが重要です。

  1. 信頼性の高いプロセス・データにアクセスする
  2. データを解釈して配信する
  3. プロセスの変動に対応する
  4. 最新技術の進歩を理解する

信頼性の高いプロセス・データにアクセスする

プロセス監視は、感度の高い電子部品の製造など、価値の高い機器の製造施設で特に有用です。このような場合、組み立てラインのわずかな変化は、工場出荷量の減少や最終機器の仕様の変化を招くことがあります。以前は、図 2 に示しているようなハンドヘルド型振動プローブを使用していました。この方法の主な欠点の1 つとして、再現性の高い測定が行えないことが挙げられます。プローブの位置や角度のわずかな違いにより、一貫性のない振動プロファイルが生成され、長期的な比較が不正確になります。もう 1 つの制限事項は、振動の変化に関するリアルタイム通知を行えないことです。

図 2. 再現性および信頼性の低い現在の手法による機器の振動監視。

理想的なセンサーは、機器に直接かつ永久に内蔵できる十分にコンパクトな統合型センサーで、測定位置が変わるという問題が発生せず、測定のスケジュールを柔軟に設定できます。このようなセンサーは、センサー、解析、ストレージ、およびアラーム機能のすべてが小型パッケージに収められ、振動の変化を迅速に通知し、時間ベースのトレンドを提供することができる完全自律型センサー処理システムです。このため、根本的に手法を変える必要があります。現在、これを実現するテクノロジーは存在しますが、それだけでは問題は解決しません。

データを解釈して配信する

工場の機器には、通常、複数の振動源(ベアリングの欠陥、アンバランス、ギアのかみ合い)があります。これには正常動作時にも振動が発生するドリルやプレス機など、設計上回避できない振動源も含まれます。機器に対する時間ベースの解析では、これら複数の振動源が複合した波形が生成され、高速フーリエ変換(FFT)解析を後から実行するまでは、わずかな識別情報が提供されるのみです。一方、内蔵 FFT 機能を使用する場合、自律型センサーはリアルタイム通知を実行できます。

既存の多くのソリューションでは、統合レベルの低いピエゾ・センサーをベースにしているため、FFT の計算と解析を外部で実行する必要があります。リアルタイム通知が不可能な他、機器開発者にとって設計上の負担が実質的に大きくなります。センサーでの内蔵 FFT 解析により、特定の振動源から振動の変化を直ちに分離できます(図 3)。完全に統合されたセンサーを使用することで、機器設計者の開発期間も 6 ~ 12 ヵ月短縮できます。

図 3. プログラマブルなフィルタリングおよびチューニング制御の機能を備えた内蔵 FFT 解析。

既存のソリューションのもう 1 つの複雑な点は、ほとんどがアナログ出力のみであることです。このため、伝送時に信号が劣化するとともに、複雑なオフライン・データ解析が必要となります。振動監視のメリットがある産業用機器のほとんどは、騒音が大きい場所、物理的な移動が発生する場所、アクセス不能な場所、または危険な場所に配置されています。これらの場合、インターフェース・ケーブル配線の複雑さを軽減し、振動源で可能な限り多くのデータ解析を実行して、機器の振動を正確に捉えることが強く望まれます。

内蔵型(ワイヤレスを推奨)のスマートな振動センサーを使用することで、瞬時にアクセスできるようになり、大幅にコストを削減して簡単にセンサー・ネットワークを導入できます。ただし、導入後に発生する問題を事前に対処しない場合、システムの完全性が損なわれることがあります。

プロセスの変動に対応する

工場の環境では、振動プロファイルは複雑であり、時間によって変化する他、機器、材料、および場所によっても変動します。センサーの設置場所は重要ですが、機器のタイプ、環境、および機器のライフ・サイクルにも大きく依存します。センサー素子のコストは高く、プローブ設置場所が 1 か所または数か所に制限されるため、設置場所はさらに重要になります。また、センサー・データ自体の完全性も重要になります。信頼性の高いセンサーを使用しないと、特定した性能の変化が機器によるものか、センサーによるものかわからなくなります。

サポート期間が終了していない機器で発生した変化をセンサー解析プログラムで評価する場合、ベースライン機器の反応が有効な指標になります。単純なアナログ・センサーを使用している場合でもこのような対応が可能です。この場合はオペレータが測定とオフライン解析を行って、このデータをオフラインで保存し、特定の機器およびプローブ位置に適切にタグ付けします。一方、間違いが少なく推奨される方法は、センサー・ヘッドでベースライン FFT データを保存することです。これで、データ紛失の可能性がなくなります。ベースライン・データはアラーム・レベルを設定する際にも役立ちます。これもセンサー側で直接プログラミングします。このため、警告またはエラー状態が検出される後続のデータ解析およびキャプチャで、リアルタイムの割込みを生成できます。

適切な振動解析プログラムでは、技術的な方法に関係なく、数 10ヵ所または数 100 ヵ所で監視を実行することがあります。これにより、特定の機器の耐用期間にわたって、数千のレコードをキャプチャする必要が生じる可能性があります。予知保全プログラムの完全性を高めるには、センサー収集ポイントを位置および時間の観点で適切にマッピングする作業が非常に重要です。リスクを最小限に抑えて有益なデータを得るには、内蔵ストレージを用意することに加え、センサーに固有のシリアル番号を割り当て、データのタイム・スタンプを記録する必要があります。

ここまで説明したように優れたトレーサビリティを実現した場合でも、機器の性能のわずかな変化を適切にキャプチャすることや、センサーをさまざまな機器に適応させることが課題となります。信号およびセンサーのコンディショニングと処理は、各機器とそのライフ・サイクルによって異なりますが、センサーの設計にはいくつかの重要な考慮事項が存在します。

例えば、設計者は、機器が故障する可能性の低いライフ・サイクルの初期と、機器が故障する可能性が高いうえに有害な影響を与える可能性も高いライフ・サイクル末期のどちらを重視してセンサーを設定するかを判断する必要があります。推奨される方法は、ライフ・サイクル期間中の変化に応じて、システム内でプログラマブル・センサーを設定することです。例えば、ライフ・サイクルの初期は頻繁に監視を実行せず(消費電力を最小限に抑える)、変化(警告閾値)が検出されるようになった時点で、頻繁(ユーザー設定期間)に監視を実行するように設定を変更します。

内蔵の A/D 変換および処理(例えば、センサー・ヘッドと機器の外部のどちらで変換を行うか)に関して、システム内での設定および調整が可能です(図 4 を参照)。理想的なセンサーは、ベースライン・データの迅速なキャプチャ、フィルタリングの操作、アラームのプログラミング、およびさまざまなセンサー位置でのテストを通じて、機器のセットアップを容易にする単純なプログラマブル・インターフェースを提供します。この調整機能と内蔵ベースライン性能のデータに基づいて、システム内で内蔵センサーの特性を機器のライフ・サイクルに適応させることができます。

図 4. 完全内蔵型のインテリジェントな振動監視システムの代表的な統合例

最新技術の進歩を理解する

ここまでの説明では、プロセス制御および予知保全に関する振動監視において、既存のセンサーベースの手法を改善する方法について取り上げてきました。フォールト・トレランスと監視が問題の中心であるため、センサー自体の信頼性を詳細に調査する必要があります。機器ではなく、センサーが故障(性能が変化)したらどうしますか?また、完全自律型センサーを使用して運用する場合、センサーが継続的に機能するという見通しにどの程度確信を持てますか?ピエゾベースのトランスデューサなど、多くのトランスデューサでは、どのような種類のシステム内セルフテストも実行できないため、これは重大な制限事項となります。信頼性の高いプロセス制御プログラムの重要な要件は、トランスデューサを遠隔操作でセルフテストできることです。この機能は、一部の MEMS ベースのセンサー(図 5)で利用可能です。このようなセンサーでは、内蔵デジタル・セルフテストを使用して、信頼性の高い振動監視システムを実現するため、すべての問題点を解消できます。

図 5. センサーのセルフテストというメリットをもたらす MEMS ベースの振動センサー。

MEMS ベースの振動センシングとワイヤレス接続のメリットを組み合わせた最新のソリューションでは、さまざまなワイヤレス標準インターフェースを通じて複数のリモート・センシング・ノードとゲートウェイ・ノードの間で通信を実行し、データ集約機能やさらなるオフライン・トレンド解析および学習の機能を提供できます(図 6)。

図 6. 6 個のリモート・センサー・ノードが自律的にデータを検出、収集、および処理し、結果を中央コントローラ・ノードにワイヤレス伝送。

ワイヤレス接続により、振動センシングをさらに広い範囲に配備できます。このように完全に統合されたセンサーは、配線/インフラストラクチャの改修に依存せず、性能の変化をより正確かつ信頼性の高い方法で検出できるので、事前メンテナンスと定期メンテナンスのコストを大幅に削減できます。

最後に、内蔵型の連続的なモニタリングへの移行とクラウドベースの解析を組み合わせることで、機器監視分野で現在使用しているインテリジェンスと専門技術によるさまざまな効果をさらに高めることができます。MEMS 手法を活用して実現された高信頼性および高機能センサー・ノードを使用したこの「センサー/クラウド」モデルにより、状態ベースのリアルタイム予知保全の可能性を最大限に引き出せるようになります。

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Bob Scannell

Bob Scannell は、アナログ・デバイセズの慣性 MEMS 製品のビジネス開発マネージャーです。ADI に 20 年間在籍、センサー、DSP、ワイヤレスなどのさまざまなテクニカル・マーケティング部門およびビジネス開発部門で勤務してきました。それ以前は、Rockwell International で設計およびマーケティングを担当していました。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で電気工学の学士号、南カリフォルニア大学でコンピュータ・エンジニアリングの修士号を取得しました。