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閉じる気候変動に関する流れを変える:アナログ・デバイセズ、ウッズホール海洋研究所、そしてOCIA
宇宙空間の研究には複雑な科学と技術が必要とされることから、宇宙はほとんど探査も理解もされていない現象であると考えられていました。宇宙空間の探査と、宇宙が私たちの世界に及ぼす影響についての研究には多くの課題があります。しかしその一方で、宇宙よりもはるかに我々に近い存在でありながら、探査が進んでいるとは言い難い巨大な存在が1つあります。海洋です。
海洋は地球全体の気象システムの基礎をなすものであり、この惑星の2/3を占めています。人類は、酸素や食料の供給、そして特に気候調節において海洋に依存しています。海洋は私たちのエコシステムや生命にとって極めて重要な役割を果たしているにも関わらず、人間の活動と気候変動は、既に生命維持のための特性を失うリスクに直面するようなペースで、海洋に悪影響を与えてきました。
アナログ・デバイセズは、このような事態に対して総合的な対策が必要であること、そして気候変動への包括的なアプローチには海洋との関わりが不可欠であることを理解しています。アナログ・デバイセズが、ウッズホール海洋研究所(WHOI)と協力して、海洋および気候イノベーション促進コンソーシアム(OCIA)を立ち上げた理由もそこにあります。
OCIAは、産業界、学会、社会奉仕組織が一体となって進めている、この分野で初のコンソーシアムであり、地球温暖化対策として海洋の果たす重要な役割について知識を深めることに焦点を当てています。OCIAは、海洋と気候の両方に共通する新しい技術ソリューションを開発し、それを加速していくことを目標としています。
海洋と地球を守るためにWHOIとADIがOCIAを立ち上げた経緯をご覧ください。
二酸化炭素の吸収:海洋が果たす非常に大きな役割
気候変動の速度を遅らせ、その影響を軽減するために講じるべきだとして科学者が推奨してきた対策には、様々なものがあります。カーボン・マネジメント産業のスケール・アップ(これは人類が排出する二酸化炭素を規制して減らすことを意味します)は、これを実現して大きな変化に貢献するために人類が進めることのできる、大きなステップの1つです。実際、海洋はその面積が非常に広いことから、気候変動、特に二酸化炭素の吸収に関し、人類にとって好ましい形で地球に最も大きな影響を及ぼすことができます。
現在、人類が大気中に放出した二酸化炭素の大部分は、生物ポンプと呼ばれる仕組みを通じて自然に海洋に吸収されています。この生物ポンプは自然のプロセスが複数組み合わされたもので、藻類が二酸化炭素を吸収して有機物に変え、更にその有機物が海底に沈降して数千年にわたり蓄積されます。海洋ベースの気候変動ソリューションという観点からは、大気から二酸化炭素を吸収するという海洋の巨大な可能性を利用する方法に着目する必要があることは明らかです。
海洋が気候危機の解決に果たす役割の大きさについて理解を深めるには、海洋についての研究を進め、その知識を深めることに注意を向ける必要があります。しかし、過酷で予測できない海洋環境で高度な技術を使用するにあたっては、多くの課題があります。極めて高い水圧、日光の欠如、海水の塩分による機器の劣化などは、すべて、人類がこれまでに探査した海洋は全体の10%前後に過ぎないという事実に関係しています。海洋の研究と観測を進めるには、その過酷な条件に耐えることができるように、より高度な科学と技術を生み出す必要があります。
コンソーシアムメンバーの支援を受け、WHOIの研究者は、問題の解決策、軽減策、あるいは監視についての初期的かつ画期的な調査を行うための育成助成金に関して提案を行うよう求められています。これらの研究者は、その構想をまとめて完成度を高めるために、促進助成金の増額を申請することもできます。これらのプロジェクトの中で最良のものが、その内容を促進させた後に(ただしリスク・レベルを下げた上で)継続される予定であり、その場合、政府や産業界の支援を受けることが可能です。今年、OCIAは海洋の二酸化炭素吸収能力拡大に焦点を当てています。
救済に向けた助成と革新のハブ
アナログ・デバイセズは、コンソーシアムを支援するために、その幅広いリソースを大量に投入しています。手始めとして、海洋および気候イノベーション促進コンソーシアムに300万ドルの資金を提供し、海洋ベースの二酸化炭素の吸収と輸送に焦点を当てた5件の助成金をウッズホール海洋研究所の研究者に支給しました。
これらの助成金の内訳は、3件の育成助成金と2件の促進助成金です。前者は、基本研究用の資金を提供する上限10万ドルの比較的少額のものです。後者はより高額なもので、新しい最先端の科学的イニシアチブの設計および/または初期的な実施の支援を目的とし、上限は30万ドルです。OCIAは、これらのプロジェクトの中で最も高い成果を挙げたものの拡大をベンチャーキャピタル方式で助け、更に支援を続けていく予定です。
「OCIAを通じて、アナログ・デバイセズは、気候変動が海洋にどのような影響を与えるのかについて理解を深め、本来の海洋環境を取り戻すためのソリューションを開発することを目的として、海洋に関する知識を広めるために自社のエンジニアと技術を投入することに取り組んでいます。そうすることによって、気候変動に対する世界的な戦いに有意義な影響を与えられるようになることを望んでいます。」Vincent Roche
社長兼CEO | アナログ・デバイセズ
その他にも、海洋科学と気象科学に共通する新たな知識とソリューションを生み出すために、ADIとWHOIは専用の「革新ハブ」を作成しつつあります。これらのハブは、知識的および技術的なプラットフォームとしての役割を果たすことで、この規模で何らかの問題に対処するために必要な技術に関する理解を深めると共に、同様の市場戦略およびビジネス戦略を得る助けとなることを目的としています。これら3つの革新のハブでは、海洋に関する理解を深めて予想モデリングを改善し、データと分析結果が意味するところを読み取ることに焦点が当てられています。
知識/技術革新のためのハブ:
海洋でのセンシング、測定、ネットワーク化
課題:
課題は、海洋に関する広範な生物学的および化学的バイタル・サイン、ならびにその他のバイタル・サインを継続的に監視し、それらをつなぎ合わせることによって海洋についての理解を深めることです。その目標は、衛星から船舶、更には遠隔操作で海面上から深海までを自律運航する装置までを包含する、広範な利用資源と通信を行うセンサーと技術の巨大なネットワークを実現することによって、「常時オン、常時接続」状態にある海洋を作り出すことにあります。
OCIAの支援方法:
海洋でのセンシングや測定に伴う課題に最も適した新技術や既存技術を利用します。
市場戦略とビジネス・ダイナミクス
課題:
認知度を高めて行動を促し、更に重要分野における科学的能力を向上させるために必要な情報の伝達に関し、その事業方針と公共政策についての情報を伝えることが課題です。このハブは、OCIAの科学的および技術的課題に関する情報を提供し、ニーズと知識の主要なギャップを埋めることによって、ビジネスおよびポリシーメーカーとの関連性を確実なものとする助けになります(例えば、炭素取引市場の構造、炭素クレジットの標準と検証の複雑さ、または炭素吸収ソリューションの研究に影響を及ぼす規制要素)。
OCIAの支援方法:
市場と企業に技術と知識を提供し、科学的理解を現実的なビジネス上の問題に応用できるようにして、ビジネス・ニーズを科学的問題に置き換える助けとなります。
データ処理、機械学習、人工知能
課題:
WHOIのオーシャン・トワイライト・ゾーン・プロジェクト(Ocean Twilight Zone Project)、WHOI主導の下に複数の研究機関が参加する海洋観測所イニシアチブ(Ocean Observatories Initiative)、そして国際的なアルゴ・プロファイリング・フロート・プログラム(Argo profiling floats program)などを含め、複数の大きなプロジェクトやプログラムにおけるデータ・アクイジション、データの利用、そしてデータへのアクセスを統一することが課題です。これらのプロジェクトとプログラムはすべて、気候に関連する一連の主要な研究を推進します。このハブは、促進コンソーシアムが支援する研究に極めて豊富な入力源を提供しながら、アクセシビリティの改善、利用の更なる拡大、そしてこれらのプログラムが既に提供している高品質なデータ・ストリームによる理解の向上を確実なものとすることを目指しています。
OCIAの支援方法:
機械学習と人口知能の応用を通じて、リアルタイム・データの価値を有益な洞察力とソリューションに変化させます。
OCIAコンソーシアムの体制は、科学と海洋に関する研究の支援についての重大な岐路にさしかかっています。現在は、社会が直面している世界的な課題に取り組むための新たな理解を促進すると見込まれる、研究革新のためのエコシステムを構築中です。これは、各種の企業がどのように深く気候危機に取り組むことができるのかを示す、新しいスケーラブルなモデルを提供します。Peter de Menocal博士
WHOI所長兼ディレクター
WHOIとADI:世界の海洋を保全するための協力
OCIAは、海洋に関する研究を進めて知識を深めるための素晴らしい出発点ですが、効果的な海洋ベースの気候ソリューションを見つけ出すために講じなければならない多くのことの中の1ステップに過ぎません。これは1つの組織やプログラムだけで実現できるものではなく、数多くの技術的リソースとエキスパートが、共通の目標に向かって協力し合う必要があります。ADIとWHOIは、このコンソーシアムが技術産業における他の企業や組織の刺激となり、それらの企業が海洋と気候科学に関する知識を真に深めるためにこのコンソーシアムに参加し、人類にとって最も大切な天然資源を救う助けとなってくれることを望んでいます。
コンソーシアムにご参加ください。地球に残された時間は多くありません。
将来的な気候への影響を予測して、それを政策に反映するには、基本的な海洋プロセスを理解することが喫緊の課題です。複雑かつ差し迫った問題を協力して解決し、その結果を拡大していくために、コンソーシアムはますますの支援と多様な考え方、スキル、そして技術を必要としています。
私たちは気候関連の活動に取り組む組織との協力に努めています。
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