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Image shows the planet Earth and a Satellite from Lower Orbit.
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      Yasmine King
      Yasmine King,

      アナログ・デバイセズ 航空宇宙/防衛/RF製品担当ゼネラル・マネージャ

      Analog Devices, Inc.

      著者について
      Yasmine King
      Yasmine Kingは、アナログ・デバイセズのゼネラル・マネージャ(GM)です。20年以上にわたり半導体分野の業務に携わっています。DSP用のソフトウェアを専門とする技術者としてキャリアをスタートした後、エンジニアリング、ビジネス開発、セールス、全般管理に関する職務を歴任。現在は、革新的なビジネス・リーダーとしてのスキルとエンジニアリングの経験を組み合わせて、航空宇宙/防衛部門のGMとして変革に取り組んでいます。非営利団体FIRSTが主催する「FIRST Robotics Competition(FRC)」を通して次世代技術者の育成にも注力。日常生活においてもトライアスロンに積極的に参加するなど、身体能力の向上という面でもリーダーにふさわしい粘り強さを発揮しています。
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      商業衛星の新時代


      ここ数年の間に、宇宙業界におけるビジネスのあり方は劇的に変化しました。莫大なチャンスをビジネス上の成果に結び付けるために、野心あふれるプロジェクトを掲げた新興企業らが新たな市場に参入してきています。実際、軌道に打ち上げられる商業衛星の数は急増しています。一方で、必要なコストは数分の一のレベルまで削減されています。ムーアの法則によってもたらされる恩恵により、打ち上げロケットの低コスト化や衛星の小型化は数桁の単位で進行しました。旧来の衛星は非常に複雑なものであり、大きさもバスと同じくらいの規模に達していました。現在では、簡素化と軽量化が進んだ結果、バイク程度の大きさで衛星が実現されるようになっています。ロケットについても、はるかに低コストで構築/打ち上げが行えるようになりました。

      商業衛星の分野では、設計/製造の進化、標準化、市場に製品を投入するまでの時間の短縮が強く望まれています。そうした課題を解決することにより、より柔軟かつ迅速に衛星を配備することが可能になります。SpaceX(Space Exploration Technologies)やOneWeb、Telesat、Amazonなど、民間宇宙ビジネスに参入した企業による取り組みはNewSpaceと呼ばれています。そうした企業は、今後10年の間に数千基もの地球低軌道(LEO:Low Earth Orbit)衛星で構成されるメガコンステレーションを構築することを計画しています。その目的は、通信環境が整っていない世界中の地域を含め、グローバルな接続ネットワークを提供できるようにすることです。

      Image shows Planet Earth from outer space and Satellites communicating with network connectivity signals back to Earth.

      LEO衛星と比較すると、はるかに高い軌道で周回する対地同期軌道(GEO:Geosynchronous Earth Orbit)衛星を利用するには、多大なコストがかかります。それだけでなく、厳しい制約も課せられます。商業衛星の市場は、主に、GEO衛星よりも低コストのLEO衛星で構成されています。そのことが、急速に拡大する同市場の推進力になっています*。ただ、そうした市場の変化を注視すると、1つの疑問が浮かび上がります。それは、LEO衛星においては、どれだけの耐放射線性を実現するのが適切なのかというものです。宇宙の分野で使われてきた「従来」のIC/コンポーネント/機器(以下、「従来の製品」と表記します)は、耐放射線性をはじめとする厳しい要件を満たしてきました。しかし、そうした製品は、量産型にシフトした今日の商業宇宙市場にとって、価格的に手が届くものではありません。しかも、多くの場合は必要なものでもありません。

      従来の製品は、もともとはNASA(米航空宇宙局)のミッションで使われていたものです。そうした信頼性の高い製品は、惑星に向けて打ち上げられたり、地球高軌道のGEO通信衛星で使用されたりすることを前提としています。そのため、極めて過酷な宇宙環境で数十年間にわたって使用できるように設計されています。宇宙環境は放射線(宇宙放射線)のレベルが高く、宇宙探査機の電子部品に障害が発生してしまう可能性があります。上記のようなミッションでは、15~20年間の耐放射線性が求められます。ただ、現在では衛星市場におけるその種のミッションの割合は縮小傾向にあります。NewSpaceが対象とする今日の商業市場の場合、ミッションの期間は数ヵ月から数年程度です。そのため、宇宙放射線の脅威は比較的小さく、さほど高い耐放射線性は必要とされません。つまり、従来の市場とは要件が異なるということです。


      Image shows graphics representation of Space Radiation from our Sun and its effects on the Planet Earth.

      宇宙放射線への対応

      衛星や宇宙探査機の電子システムにとっては、宇宙放射線が最大の脅威になります。その影響の度合いは、一時的な誤動作、長期的な劣化、壊滅的な故障といった具合に様々です。最良の防御策は、耐放射線性を備えた電子部品を使用することです。そうした製品については、宇宙放射線のレベルが高い環境下でも性能と機能を維持できることを確認するための特別な試験が行われます。

      商業衛星の市場拡大を牽引する要素

      • 打ち上げコストの削減
      • 宇宙探査機の小型化、軽量化、低コスト化
      • 最新のIC技術と多機能化に対するニーズ
      • LEO衛星をベースとするミッションとメガコンステレーションに対する強い関心
      • 製品を市場に投入するまでの時間の短縮
      97%
      宇宙市場の売上高3660億米ドル(約47兆円)に占めるSpace for Earth事業の割合
      Harvard Business Review、2021年2月12日

      メガコンステレーションがもたらすメリット

      商業宇宙(CS:Commercial Space)の市場が爆発的に成長した結果、かつてないほど容易に宇宙ビジネスに参入できるようになりました。低コストの衛星から成るメガコンステレーションの配備は既に始まっています。メガコンステレーションは、地球低軌道を周回する数千基もの衛星で構成されます。

      SpaceXは、商業衛星の業界を主導する企業だと言えます。同社は、打ち上げロケット「Falcon 9(F9)」を再利用しつつ、一度に最大60基の安価な衛星を地球低軌道に打ち上げています。一度に複数の衛星を打ち上げることと、ロケットを再利用することによって、打ち上げにかかるコストの抑制が実現されています。実際、衛星1基あたりのコストは100万米ドル(約1億3000万円)程度まで引き下げられました。それらのLEO衛星は、高度341マイル(550km)の軌道を周回します。この高度は、対地同期軌道(geosynchronous orbit)までの距離のわずか3%程度にすぎません。

      地球低軌道を対象とすることにより、信号の遅延がはるかに小さくなります。そのため、ミッション・クリティカルな通信、ロボットを使った遠隔手術、金融取引、ゲームなどのアプリケーションに必要なより高速な応答を得ることができます。しかし、低軌道上の衛星から観測できる地球表面の範囲は、従来のGEO衛星を使用する場合と比べてかなり狭くなります。GEO衛星と同等の範囲をカバーするためには、より多くの衛星が必要になります。

      小型衛星とメガコンステレーションの数はより増加する傾向にあります。今後も、年に1000基を超えるLEO衛星が打ち上げられる見込みです。

      上述したように、メガコンステレーションを構築するには多数の衛星が必要です。しかし、民間企業は、1個で数千米ドルもするような従来の部品を使用して多数の衛星を配備することはできません。NewSpaceに取り組む企業に対しては、そのミッション、リスクと利益のバランスに最も適合する実用的かつ経済的なソリューションが必要です。


      Image shows the Planet Earth from outer space and a grid of colors that represent Satellites orbiting the Planet Earth.

      メガコンステレーションに必要な要素

      NewSpaceとは、民間による宇宙開発のことです。その市場には、世界中の異業種企業やベンチャー企業などが参入しています。そうした企業が求めているのは、放射線のレベルが低い比較的穏やかな環境と短期間のミッションに対応できる製品です。つまり、耐放射線性を備えた、できるだけ小型で、性能が高く、費用対効果に優れる製品が必要になっています。

      目標

      • 参入障壁の引き下げ
      • 小型、安価、500kg未満で単一の機能を提供できる衛星の開発
      • 高度がGEOのわずか3%で、放射線のレベルが低いLEOを対象とする衛星の打ち上げ
      • より密度の高い通信ネットワークの提供

      ギャップを埋める商用ソリューション

      今日の小型衛星には、従来の部品とは異なる革新的な設計ソリューションが必要です。そのソリューションは、サイズ、重量、消費電力、コストを低減できるものでなければなりません。宇宙分野のアプリケーションでより安価なCOTS(商用オフザシェルフ)のデバイスを使用できれば、次のようなメリットが得られます。すなわち、先端技術を導入しつつ、優れた集積度/性能/SWaP(サイズ、重量、消費電力)を実現できるということです。しかし、COTSのデバイスだけでは、宇宙分野への参入を目指す多くのベンチャー企業にとって最適な保護機能、テスト内容、信頼性は得られない可能性があります。

      現在、アナログ・デバイセズはCS分野に向けて各種の製品を提供しています。それらは、よりローエンドのCOTSの製品と従来の製品のギャップを埋めるものです。一般に、従来の製品はハーメチック・パッケージを採用し、QML-Vの認証を取得して、宇宙の用途に完全に対応しています。それに対し、アナログ・デバイセズが新たに提供している製品は、信頼性の高さとコストのバランスをとりつつ、許容できるレベルまでリスクを抑えたものとなっています。また、ウェーハ・レベルのロットの均一性とトレーサビリティも確保されています。加えて、放射線のモニタリング機能も備えています。更に、高度な試験を実施済みです。これらは、商用グレードのCOTS製品にはない特徴です。

      アナログ・デバイセズで航空宇宙/防衛/RF分野の製品ライン・マネージャを務めるChris Chipmanは「より大規模なメガコンステレーションの実現を目指す企業の中には、標準的なプラスチック・パッケージを採用したCOTS製品を衛星で使用したいと考えるところもあるかもしれません。つまり、耐放射線性を備えておらず、宇宙関連の規格には一切準拠していない製品です」と述べています。その上で「シグナル・チェーンの中には、非常に高いリスクをはらんでいる部分が存在します。例えば、無線機能をテレメトリ制御するための機能などは、飛行システムの重要な調整を担います。そうした機能に関連する部分で故障が発生することは許されません。また、ビジネスを展開する企業の立場として、サービスを長期間停止させるわけにもいきません。したがって、よりレベルの高いコンポーネントの採用を検討する必要があります」(Chipman)と指摘しています。

      CHART製品のグレードを評価するためのチャート

      Illustration Chart shows Satellites in Space and the graphic displays the relationship between Costs and Reliability/Quality Levels.

      CS製品を分類するための2つの新たなグレード

      アナログ・デバイセズは、放射線のレベルが低い環境で運用されるLEO衛星/メガコンステレーションをターゲットとして、2つの新たな製品グレードに対応するポートフォリオを構築しました。その目的は、新たなCS業界の多様なニーズに応えることです。この業界に参入した企業は、従来のGEO衛星と比較して、コストの面でより厳しい圧力に直面しています。アナログ・デバイセズは、40年以上にわたって宇宙用途に対応した製品を開発してきました。それによって培った知識を基に、任意のミッション・プロファイルに対して最適な柔軟性/信頼性/品質レベルを提供可能な製品の開発に注力しています。

      CSLグレード

      CSL(Commercial Space Low)グレードの製品は、コスト面での制約や量産時の要件を満たすように設計されます。放射線のレベルが低い環境で運用されるLEO衛星/コンステレーションに適した基本的な試験とスクリーニングを経て提供されます。

      CSHグレード

      CSH(Commercial Space High)グレードの製品は、最高水準の信頼性を維持しつつ、従来の製品よりもコストを抑えながら高度な機能を利用したいと考えるお客様を対象として設計されます。このグレードの製品については、最高レベルのスクリーニングと、耐放射線性に関する最も厳しい試験が行われます。そのため、ハーメチック・パッケージ品を選択できない場合でも使用可能です(SAE AS6294規格を指針としてQML-V相当の水準が実現されています)。CSLグレードの製品で求められるすべての事柄に対応することに加え、高い信頼性を得るためのスクリーニングと、高い信頼性/品質を得るための適合検査が行われます。

      生活の質を高めるための新製品

      COTS、CSL、CSHに対応する製品は、いずれもSWaPの改善、衛星の小型化、メガコンステレーションの実現に貢献します。それだけでなく、生活の質の向上や救命活動を支える手段としても機能します。

      商業衛星の分野では、より革新的な製品の開発や、ベンチャー企業らによる野心的なNewSpaceの取り組みが行われています。その成果として、上記のような製品は今後更に拡大していくと考えられます。

      Image shows a farm crop and a woman specialist evaluating and studying the plants.

      地球観測衛星によって取得したデータは、河川、海洋、森林、インフラに関する貴重な洞察と深い理解を得るために利用できます。つまり、より生産性の高い農業や、水/資源/野生生物のより良い管理の実現に役立ちます。

      Image shows a firefighter with a water hose spraying on a forest fire.

      ブロードバンド接続によって地球を網羅する衛星システムは、気候の変動に伴い発生頻度が高まったハリケーンや森林火災などの大災害の緩和に役立つ可能性があります。実際、森林火災に見舞われたワシントン州マルデンの救急隊員らは、生活の再建を目指す被災者を支援するための復旧作業において、宇宙を介したコネクティビティを活用しています。

      Image shows a female student at a desk look at a remote classroom video meeting on a computer while the conference has poor connection on the screen.

      非常に小さな都市も、衛星システムによってもたらされるメリットを享受できます。例えば、テキサス州西部のエクター郡オデッサは、荒涼とした平らな乾燥地帯に位置する小都市です。同市では、ブロードバンド接続サービスの信頼性が低いか、同サービスを全く利用できない世帯が全体の40%近くを占めています。宇宙空間に存在する「飛ぶルータ」によってコネクティビティを提供することで、子供たちはオンライン授業を受けたり、ホームスクーリングを継続したりできるようになります。

      アナログ・デバイセズの宇宙製品グループ

      45年以上にわたり、信頼性と費用対効果に優れる宇宙用途向け製品を提供してきた実績

      アナログ・デバイセズは、堅牢性、信頼性、耐放射線性に優れた宇宙用途向けの製品群を提供しています。その包括的なポートフォリオは、従来の製品と2つの新たなグレードに対応するCS製品で構成されています。それにより、実績のある企業もNewSpaceに取り組む企業も支援しています。言い換えれば、GEO衛星でもLEO衛星でも迅速に宇宙に打ち上げて運用できるようサポートを行っているということです。アナログ・デバイセズは、お客様にとっての信頼できるパートナー、協力者、技術アドバイザとして、最も厳しい環境で動作する製品を設計/開発し、最も難易度の高いミッションを遂行できるよう支援してきました。それぞれがターゲットとする市場において、他社に負けない地位を確立できるようお客様を支えています。

      * Bank of Americaは、「宇宙産業は主にB2B(企業間取引)/官民投資機会に支えられ、2030年には、2019年の4240億米ドル(約55兆円)から230%成長し、1兆4000億米ドル(約181兆円)の規模に達する」と予測しています。(CNBC、2020年10月4日)
      電気通信、インターネットのインフラ、地球観測機能、国家安全保障用の衛星を含みます。