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閉じる5Gに対応するスタジアム無線ネットワークでユーザ体験をより豊かに、超高速のモバイル・ブロードバンド・アクセスを提供
音楽やスポーツのファンは、お気に入りのバンドが演奏したり、贔屓のチームの選手が決勝ゴールを決めたりするとき、どこにいたいと思うでしょうか。当然のことながら、現場であるスタジアムでバンドや選手を目の当たりにしたいと考えるはずです。また、その瞬間の写真をSNSにアップするのも何よりの喜びでしょう。しかし、これまで多くの携帯電話ネットワークには、スタジアムで何万人ものファンが同時に接続できるほどの容量はありませんでした。この状況は、5Gをベースとするスタジアム無線ネットワークによって大きく変化するはずです。
JMA Wireless(以下、JMA)は、モバイル・ネットワーク機器のリーディング・メーカーです。同社は、技術パートナーであるアナログ・デバイセズと協力し、5Gに対応する新たなモバイル技術を開発しました。その技術を利用することにより、広帯域で遅延のないインターネットへのアクセスを実現し、1つの基地局に対して10万ものデバイス/ノードを接続することが可能になります。その結果、世界中のスタジアムにいるファンが、友人や家族とオンラインで喜びを分かち合えるようになります。
JMAの概要
事業内容
JMAは、次世代通信システムの設計/構築を担うリーディング・メーカー。世界中のネットワークで4G LTE、5G、CBRS(Citizens Broadband Radio Service)、LAA(Licensed Assisted Access)の利用を可能にする極めて強力な技術を提供している。
アプリケーション
JMAがモバイル・ワイヤレス接続ソリューション向けに提供する製品により、インフラの信頼性を確保し、サービスの運用を効率化し、ワイヤレス性能を最大化することができる。対象となる業界は、不動産、スポーツ、エンターテインメント、接客、モバイル・ネットワーク事業者など多岐にわたる。
課題
5G対応のモバイル・ネットワーク・セルを開発し、容量、カバレッジ、サービスの面で最大限の差別化を図る。同時に、消費電力、設置面積、運用コストを削減する。
目標
先進的な分散型アンテナ・システム(DAS:Distributed Antenna System)のプラットフォームとCell Hub(光ファイバ接続型の小型無線ノード)を開発する。それにより、公共施設や企業のビルにおいて、来場者、ファン、従業員の誰もがシームレスにブロードバンド・ワイヤレス接続を利用できるようにする。
「見えない壁」を打ち破る
満員のスタジアムで、携帯電話による信頼性の高いネットワーク接続を提供するのは容易ではありません。多くのスポーツ・ファンは、試合当日にスタジアムを取り囲む「見えない壁」の存在を感じたことがあるはずです。その壁は、ローカルの基地局からの信号に携帯電話からアクセスすることを阻みます。結果として、携帯電話の画面には「圏外」というメッセージが表示されることになります。
この現象は、何万人ものユーザが同時に携帯電話ネットワークにアクセスした場合に発生します。各ユーザは、音声通話を行ったり、メッセージを送信したり、インターネット・ベースのサービスを利用したり、それぞれの事情に応じてネットワークにアクセスします。従来の携帯電話のインフラは、一般的な都市環境では優れた接続性を発揮します。しかし、何万人ものユーザがスタジアムのような会場で、すし詰めになっている状況には対応できないことがあります。JMAは、自社の専門技術を適用すれば、大きな会場に対応できる機器を開発できると考えました。5Gを利用したスタジアム無線ネットワークを実現できると考えたのです。
JMAが考案したシステムの成否は、顧客の要求に応えられるかどうかにかかっていました。モバイル・ネットワーク・インフラの事業者らは、容量、カバレッジ、サービスの面で最大限の差別化を図りつつ、製品のサイズと消費電力の削減の面でも競い合っています。言うまでもなく、事業者はネットワークを運用するためのコストを削減できる製品を望んでいます。
5Gで大きく変わるのは、性能と複雑さ
5Gに対応する最新のモバイル技術は、大きな期待を背負っています。なぜなら、上述したすべての要件を満たせるだけの性能を実現できると考えられているからです。その半面、携帯電話の接続技術は、新世代のモバイル・ネットワークが登場するたびに複雑化し、実装が困難になるという課題を抱えています。実際、4G/LTEでは3Gと比べて著しく複雑さが増していました。5Gの導入に伴い、機器メーカーの設計チームは、より難易度の高い課題に直面することになります。このような背景から、JMAが新たな製品を市場に投入するためには、最高レベルの5G技術を提供してくれる企業からの協力を得る必要がありました。
補完的な専門知識を備えたパートナーとの連携
「RFフロント・エンドの実装は、アナログ・デバイセズの技術をベースとして実施しました。それにより、JMA自身は、新たな仮想化プラットフォームの開発に集中することができました。このプラットフォームにより、5Gの信号を数万人もの加入者に対して同時に配信することが可能になりました。」Massimo Notargiacomo氏
JMA Wireless 技術担当ディレクタ
JMAには、公共施設や企業向けの無線インフラ・ソリューションに関するプロジェクトで、アナログ・デバイセズとの協業を成功させた経験がありました。そのため、本案件を完遂するための協業先を選択するのは容易でした。JMAでジェネラル・マネージャを務めるRemo Ricci氏は「当社は、長年にわたり、経営や技術の面でアナログ・デバイセズと素晴らしい関係を築いてきました。製品開発においても、アナログ・デバイセズのソリューションと専門知識を頼りにしています。新たなDASとCell Hubの開発について考える際にも、RFフロント・エンドに関する協業先としてはアナログ・デバイセズが真っ先に頭に浮かびました」と語ります。
JMAは、アナログ・デバイセズと協力し、迅速かつ成功裏に製品を市場に投入するための明確な計画を立案していました。その計画は、アナログ・デバイセズが提供する完全なRFフロント・エンドと標準的なサーバ上で動作するO-RAN対応のソフトウェア(仮想化アーキテクチャ)の採用をベースとしていました。開発プロセス全体を通し、アナログ・デバイセズはモバイル通信に関する専門知識を活かして、JMAがRFシステムを自社のサーバ・ベースのアーキテクチャに統合する作業を支援しました。
アナログ・デバイセズでキー・アカウント・マネージャを務めるGaetano Piarinoは、「当社の関連事業部門は、JMAの技術チームと一連のミーティングを実施しました。また、電話会議を定期的に開き、技術的なディスカッションを重ねました。加えて、インドの当社トランシーバー・チームに、JMAに固有の設計業務を担当させました。このような取り組みによって設計プロセスを加速し、JMAが製品を市場に投入するまでの時間を短縮しました。設計期間については挑戦的な目標が設定されていましたが、その達成に貢献することができたのです」と述べています。
JMAで技術担当ディレクタを務めるMassimo Notargiacomo氏は、アナログ・デバイセズが提供したシステム・レベルのサポートを高く評価しています。同氏は「RFフロント・エンドの実装は、アナログ・デバイセズの技術をベースとして実施しました。それにより、JMA自身は、新たな仮想化プラットフォームの開発に集中することができました。このプラットフォームにより、5Gの信号を数万人もの加入者に対して同時に配信することが可能になりました」と述べています。
新たな種類のモバイル・ネットワーク・セル
アナログ・デバイセズは、集積度が高く電力効率に優れるRFソリューションを提供しています。それらのソリューションは、JMAが公共施設や企業のビルなどに向けて最適化した設計を行う上で非常に役に立ちました。例えば、JMAのDASでは、リモート・ユニットの設置面積が業界最小のレベルに抑えられています。また、JMAのCell Hubは、アナログ・デバイセズが提供するマルチチャンネル対応のRFトランシーバーを採用しています。このトランシーバーは集積度が高いので、ノードごとに必要な部品点数を少なく抑えられます。その結果、省スペースのソリューションを実現することができました。
アナログ・デバイセズのPiarinoは「当社のトランシーバーは、DPD(Digital Predistortion)機能を集積しています。そのため、システムの低消費電力化に大きく貢献することができます。DPDを集積する製品を採用したことから、JMAは同機能をディスクリートのFPGAに実装する必要がなくなりました。アナログ・デバイセズの技術を選択することで、JMAは部品点数と消費電力の削減というメリットを享受することができました。そして、最終的には部品コストの低減という効果を手にすることができたのです」と述べています。
5G対応の新たな無線ネットワーク機器に求められる主要な要件
設置面積と消費電力の最小化
集積度が高く電力効率に優れるRFソリューションにより、DASのリモート・ユニットの設置面積を業界最小レベルに抑えることができました。
運用コストの削減、市場投入までの時間の短縮
部品点数と消費電力を削減することにより、部品コストを抑えられました。また、モバイル通信の専門家の参画によって設計プロセスが加速し、JMAが製品を市場に投入するまでの時間を短縮することができました。挑戦的な目標であった設計期間の短縮も達成できたということです。
JMAは5Gに対応するスタジアム無線ネットワーク機器を米国で開発しました。それらを大型商業施設やスタジアム、その他の会場に配備すれば、世界のあらゆる地域のモバイル通信事業者が提供するLTE/5Gのサービスを利用できるようになります。また、CBRSによる米国内の市民バンド・サービスにも対応できます。
JMAは、仮想化ソフトウェアのアーキテクチャをベースとしたスケーラブルなモジュール式のネットワーク機器を提供しています。従来の携帯電話基地局と比べて容易かつ迅速に設置できるので、ビルや各種会場に適した選択肢として頭角を現しつつあります。システムの通信性能とセキュリティ・レベルは、専任の技術者から成るオンサイトのチームがサポートしなくても維持できます。そのため、運用コストを削減することが可能です。
モバイル通信事業者にとっての主要な要件
カバレッジと容量
シームレスなブロードバンド・ワイヤレス接続をサポートする柔軟でスケーラブルなインフラ製品を提供することが求められます。
サービスの差別化
ARやVRなどに対応する新たな機能の提供が求められます。
JMAの技術は、プロ・スポーツのリーグやチームのフランチャイズ企業を支援します。例えば、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)に対応する新たな機能を5Gでサポートする可能性を追求するのにも役立つはずです。具体的な例としては、携帯電話のカメラで撮影したピッチの映像に、試合の経過/結果やシーズンの戦績をリアルタイムに重ねて表示する機能が考えられます。あるいは、スタジアムで試合が行われている際の各選手の現在位置を反映させたARゲームなどのアプリケーションも想定できます。そうしたAR/VRの機能は、JMAの機器によって運用される超低遅延/広帯域幅で5G対応のスタジアム無線ネットワークを導入することによって初めて可能になります。
世界中の会場を5Gのモバイル・ブロードバンド接続で満たす
JMAとアナログ・デバイセズによる協業の結果として、5Gに対応する一連のインフラ製品が市場に投入されました。それらにより、公共の施設や建物におけるモバイル・ネットワーク・サービスの提供に必要な柔軟性とスケーラビリティを得ることができます。モバイル・ブロードバンド・アクセスは、スタジアムや商業ビルの事業者にとって重要な差別化要因になります。JMAの機器を配備することによって、どれだけ多くの観客がスタジアムを埋め尽くし、どれだけ多くの客がオフィス・ビルにやって来ても、シームレスなブロードバンド・ワイヤレス接続を実現することができます。
JMAのRicci氏は「アナログ・デバイセズは、集積度が高く電力効率に優れるRFソリューションを提供してくれました。それらの製品は、競争力の高いソリューションを設計する上で重要な役割を果たしました。電力がスケーラブルな5G対応の当社無線ユニットは、ターゲット市場における競合他社の製品よりも設置面積が小さく抑えられています。重要なのは、アナログ・デバイセズのシステム・レベルの専門知識と専任技術者によるサポートのおかげで、DASとCell Hubの開発プロジェクトが大きく前進し、ソリューションの市場投入を加速することができたという事実です」と語ります。
いずれは、JMAのスタジアム無線ネットワーク機器が配備され、より多くのスタジアム、建物、地域が5Gで満たされるようになるでしょう。その結果、容量が増大し、より多くのファンが、遠く離れた場所にいる友人や愛する人と一緒にイベントを楽しめるようになります。つまり、人生の中でも非常にエキサイティングな体験を共有することが可能になるということです。