実装面積0.5cm2、PCB 裏面に配置可能なDDR、QDR、QDR-IV SRAM 向け超薄型トリプル出力μModule レギュレータ

実装面積0.5cm2、PCB 裏面に配置可能なDDR、QDR、QDR-IV SRAM 向け超薄型トリプル出力μModule レギュレータ

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Sam Young

Sam Young

デザインノート551: はじめに

最も高いRTR(ランダム・トランザクション・レート)を持つQDR(クワッド・データ・レート)SRAM のQDR-IV は、広帯域ネットワーキング、高性能コンピューティング、集中的データ処理アプリケーションに対応して最大400Gbps のデータ転送を実現します。このような高速データ・レートにおける主な課題は、SRAM とデバイス(高速FPGA およびプロセッサなど)間のデータ転送のインテグリティを保つことです。

ひとつの解決策として、SRAM—QDR-IV、QDR、またはDDR などをPCB 上面のインタフェース・デバイスのすぐ近くに配置することがあります。PCBの面積を節約し、PCB の寄生ノイズがデータ・バス・ラインに乗るのを最小限に抑えるため、QDRIVSRAM データ・バス・ドライバに電力を供給するDC/DC レギュレータ回路を近くに配置する必要があります。そこで問題となるのは、高密度なPCB 上にレギュレータを配置する場所を見つけることです。

1 つの方法は、コンパクトなパッケージにインダクタとMOSFET が内蔵された完全なDC/DCレギュレータを使用することです。しかし、PCB の上面の面積が極めて限られていることから、いかにコンパクトなソリューションでも不十分な場合があります。DC/DCレギュレータ・ソリューションの面積、高さ、重量を十分削減できる場合、利用できるPCB の裏側に配置できます。

超薄型の小型パッケージで、入力電圧12V からのVTT、VDDQ、VREF を出力

LTM4632 は、新しいQDR-IV および従来のDDRRAM に必要な全3 種類の電圧レールに対応することに特化して設計された完全なトリプル出力降圧μModule® レギュレータです。0.21g の小型で超薄型LGA パッケージ(6.25mm×6.25mm×1.82mm)に収容されています。

スイッチング・コントローラ、2 分割回路、パワーFET、インダクタ、および支持部品がパッケージに搭載されています。省スペースで、外付け部品点数が少ない(1 本の抵抗と3 個のコンデンサのみ)ため、わずか0.5cm2(両面)または1cm2(片面)の面積に収まります。薄型のため、PCB の裏面に実装して上面のスペースを空け、超小型の基板デザインが可能になります。

LTM4632 は3.3V~15V の入力電圧で動作し、0.6V~2.5V の高精度な出力レール電圧を提供します。2 つのスイッチング・レギュレータ出力、VOUT1およびVOUT2 は、それぞれ、VDDQ 用に最大3A、VTT バス終端レール用に±3A を供給します。3 つ目の出力は、終端リファレンス(VTTR)トラッキング電圧用に低ノイズ・バッファされた10mA 出力を供給します。図1 は、標準的なDDR3 アプリケーションにおけるLTM4632 回路を示します。シンプルなソリューションで、部品点数が少ないことが分かります

Figure 1. Typical LTM4632 DDR3 Application

図1.標準的なLTM4632 DDR3 アプリケーション

複数のSRAM モジュールの駆動

LTM4632 を使用すると柔軟な設計が可能になるため、幅広いアプリケーション要件に対応できます。たとえば、VDDQIN 入力により、VTT とVREF のレール電圧の設定を、標準的な1/2×VDDQ 電圧だけで行うだけでなく、外部リファレンス電圧で他の値に設定することもできます。LTM4632 は、±3A より大きい終端レール電流を要するアプリケーションに対応して、VTT 用の2 相シングル出力レールとして構成できます。これらの機能により、LTM4632 は、多くの異なるSRAM の電圧要件に適合し、負荷電流要件を拡張して大規模なメモリ・アレイに対応可能です。

このようなLTM4632 の柔軟性を図2 に示します。LTM4632 の2 つのスイッチング・レギュレータ出力は、PolyPhase® 電流分担構成で接続され、大規模メモリ・バンクに対応可能な最大±6A のVTT 電流を供給しています。6A より大きいVDDQ を供給するには、LTM4632 を他のμModule レギュレータ(LTM4630 など)と組み合わせて用いることで、大規模SRAM アレイに対応可能な最大36A の出力電流を供給することができます。図3 に効率と電力損失を、図4 にLTM4632 の熱性能を示します。

Figure 2. LTM4632 Two Phase Single Output ±6A VTT with 36A LTM4630 VDDQ Supply

図2.36A LTM4630 VDDQ 電源を持つ、LTM4632 2 相シングル出力の±6A VTT

Figure 3. LTM4632 Efficiency and Power Loss. 12V Input. (Figure 2 Design)

図3.LTM4632 の効率と電力損失、12V 入力(図2 のデザイン)

 
 
Figure 4. LTM4632 Thermal Performance. 12V Input, 3A. (Figure 2 Design)

図4.LTM4632 の熱性能、12V 入力/3A(図2のデザイン)

高速トランジェント応答による厳密なレギュレーション

LTM4632 の独自制御されたオンタイム電流モード・アーキテクチャと内部ループ補償により、幅広い動作条件と出力容量にわたって良好なループ安定性を持つ高速トランジェントが可能になります。スイッチング・レギュレータの出力電圧レギュレーションは高精度で、入力、負荷、および温度の全範囲にわたって、最大でわずか±1.5%の全DC 出力電圧誤差を保証しています

図5 および図6 は、図2 の回路のLTM4632 のVTT レールの高速トランジェント性能と厳密な負荷レギュレーションを示しています。

Figure 5. VTT Load Step, −3A to 3A (Figure 2 Design)

図5.VTT の負荷ステップ、−3A~3A(図2のデザイン)

Figure 6. VTT Load Regulation (Figure 2 Design)

図6.VTT 負荷レギュレーション(図2 のデザイン)

まとめ

超薄型のLTM4632 は、DDR/QDR RAM アプリケーションに要求される全3 種のレールに対応する高性能なレギュレータの完全なソリューションを提供します。幅広い動作範囲、機能、省スペース性により、高い柔軟性と堅牢性を実現し、PCB の上面および裏面の極めて小さいスペースに収まります。