この世界はアナログだ。必要な知識を得るにはどうすればよい?

この世界はアナログだ。必要な知識を得るにはどうすればよい?

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Uwe Bröckelmann

業界誌やインターネット上の情報を目にしていると、今日の世界はデジタル技術で埋め尽くされていることに気づきます。なかには、アナログ技術など過去の遺物だと思ってしまう方もいるかもしれません。本当にそうでしょうか。

もちろん、そんなことはありません。音声や温度など、あらゆる物理的な要素の本質はアナログ量です。そのため、それらの値を測定したり処理したりするには、アナログ技術が必要になります。また、一見するとデジタル技術だと感じられる高速デジタル信号伝送においても、アナログの事象に対する処理が不可欠です。その点を理解した技術者だけが高速デジタル信号伝送を最大限に活用できるのです。ソフトウェアによってすべての問題を解決できるわけではないということに気づけば、それ以外に何を学ぶべきなのかということも理解できるでしょう。電気自動車や再生可能エネルギーに関連する最新技術は、アナログに関する知識がなければ制御できません。それにもかかわらず、ハードウェアのエキスパートの数は減り続けています。このことは、半導体回路技術に関する知識を習得した学生であれば、非常に優位な立場で就職活動を進められるということを意味しています。

アナログ技術のエキスパートを目指す上で役立つものとして、アナログ・デバイセズは、アクティブ・ラーニング・モジュール(以下、ALM)を開発しました。これは、あらかじめ用意された実験を通じて、アナログ技術に関する知識と経験が得られるようにする学習キットです。ALMは大学における教育にも活用できますし、個人で使用することも可能です。いずれの場合でも、学習した理論について理解を深めることができます。ALMを使用すれば、現実の電子回路を使って、だれでも、いつでも、どこにいても経験を積むことができます。夜中に1人で実験を行ってもよいですし、同級生と協力して作業を進め、結果について議論するのもよいでしょう。仮に実験が失敗に終わったとしても、何度でもやり直すことができます。ALMは実験用のスペースや、時間、装置を確保するのが難しい場合にも重宝します。更に、ALMには複数の学生が並行して実験を進められるというメリットがあります。つまり、一部の学生は見学するだけという状況を避けられるということです。

ALMは、結果が用意されているPCシミュレーションとは異なり、現実の実験室で行う作業をベースとしています。具体的には、回路の構築、入力信号の印加、アナログ/デジタルの出力信号の測定、PC上での解析が行えます。また、予算が限られた学生でも購入できるよう、安価で提供されています。

以下では、ALMを含めて、現在アナログ・デバイセズが提供している実験用キットを紹介します。

ADALP2000

ADALP2000」は、基本的なIC(アナログ・デバイセズ製)や、抵抗、コンデンサなどのディスクリート部品をまとめて提供するアナログ・パーツ・キットです。ADALP2000に付属するソルダーレス・ブレッドボードを使用すれば、ハンダ付けを行うことなく様々な電子回路を構築することができます。

図1. アナログ・パーツ・キット「ADALP2000」

図1. アナログ・パーツ・キット「ADALP2000」

ADALM1000

ADALM1000」は、基礎的な実験を対象とするALMです。USBインターフェースを備えており、最大200mAの電流と2.5V/5Vの電圧を供給するプログラマブルな電源として機能します。また、2つのチャンネルから様々な電圧波形と電流波形を出力することが可能です。0V~5Vの電圧範囲と-200mA~200mAの電流範囲に対応しており、最大100kSPSで波形のサンプリングが行えます。付属ソフトウェアはWindows、Linux、Mac OS Xに対応しています。そのソフトウェアのオシロスコープ機能を使用すれば、PC上でパラメータの値を調整したり、測定結果を表示したりすることができます。ADALM1000で実施可能な多数の実験については、アナログ・デバイセズのWebサイトにアクセスし、「Circuit I and II Lab Activities」のセクションをご覧ください。

図2. アクティブ・ラーニング・モジュール「ADALM1000」

図2. アクティブ・ラーニング・モジュール「ADALM1000」

ADALM2000

ADALM2000」は、より高度な実験に対応するALMです。ADALM1000と同等のことができるのはもちろん、より充実した機能とより高い性能を備えています。ADALM1000と比較して約1000倍の高速化を達成しており、最高25MHzの信号の計測と最高30MHzの信号の生成が可能です。また、2つの電源は、0V~5Vと-5V~0Vの範囲で調整できます。加えて、ソフトウェアを使用すれば、2チャンネルのオシロスコープ機能、16チャンネルのデジタル・ロジック・アナライザ機能、電圧計の機能の実行/表示が可能です。更に、ネットワーク・アナライザ、スペクトル・アナライザ、デジタル・バス・アナライザとしても使用できます。ADALM2000に対応する実験については、「Electronics I and II Lab Activities」のセクションをご覧ください。なお、ADALM1000向けに用意された実験も、一部変更を加えればADALM2000を使って実施できます。

図3. アクティブ・ラーニング・モジュール「ADALM2000」

図3. アクティブ・ラーニング・モジュール「ADALM2000」

ADALM-PLUTO

ADALM-PLUTO」は、ソフトウェア無線(SDR)に関する知識を深めるためのALMです。高周波のワイヤレス通信に向けて、周波数帯や周波数特性をソフトウェアで設定することができます。また、325MHz~3.8GHzという高い周波数範囲に対応する送受信チャンネルを内蔵しています。システムについて効果的に理解できるように、「Software-Defined Radio for Engineers」という冊子も用意されています(analog.com/jpで無償ダウンロードすることが可能)。この冊子には、ADALM-PLUTOを使用して実施できる実験についても記載されています。

図4. アクティブ・ラーニング・モジュール「ADALM-PLUTO」

図4. アクティブ・ラーニング・モジュール「ADALM-PLUTO」

各キットについて詳しく知りたい方は、analog.com/jpで「調べる / 学ぶ」のタブを選択するか、「アクティブ・ラーニング・モジュール」を検索してください。各キットは、アナログ・デバイセズまたは販売代理店から購入することができます。各キットに関するいくつかの質問については、EngineerZone®の「Virtual Classroom for ADI University Program」のセクションで回答を公開しています。

世界は現在も将来もアナログであり続けます。そのため、アナログ技術に長けた人材は常に必要とされます。さあ、学習を始めましょう!