電源を設計するときは、その設計を徹底的にテストすることが重要です。そのためにはハードウェアの測定が不可欠です。もちろん、このような測定の際には多くの間違いが入り込むものです。本稿では電源管理に関する短いヒントとして、テスト対象の電源と負荷の間に使用する接続ラインの影響について考えます。実験室で基板を手早く接続した場合、そのセットアップは多くが図1のようになります。ここでは、長い接続ラインを使い、テスト対象の電源を右側に見える電子的な負荷に接続しています。2本のリードは、テーブル上に比較的大きい面積のループを描きながら、特に経路を意識せずに配置されています。
より望ましいセットアップを図2に示します。こちらの例では、回路内のループ面積を最小限に抑えるために、2本のリードが互いに撚り合わされています。理論的には、これによりテスト対象電源と負荷を接続するラインの寄生インダクタンスは減少するはずです。これはあくまで理論的な話ですが、図1と図2の異なるセットアップは測定にどのように影響するのでしょうか。これを確認するため、最大6Aの出力電流用の降圧コンバータとしてADP2386評価用ボードを図1と図2のセットアップに接続し、負荷過渡応答に対する出力電圧応答を測定しました。これにより、最適化された接続ライン配置の実際の影響が分かるはずです。この例では、ADP2386が5Vの電源電圧を3.3Vの出力電圧に変換します。負荷過渡応答は電子的負荷によって生成され、約30μsで10mAから4Aに変化します。どちらの場合も接続ラインの長さは1mです。
図1に示す測定セットアップの負荷過渡応答時における、ACカップリングされた出力電圧の電圧スパイクを図3に示します。ピーク値は約103mVです。これに対し、図2に示すように接続ラインに使用するリードを互いに丁寧に撚り合わせた場合の測定結果を図4に示します。こちらの例では、出力電圧の電圧スパイクが約96mVに抑えられています。両者の差は約7mVで、接続ラインを慎重に配置した場合は、この負荷過渡テストに関して約7%の改善が見られることを示しています。
以上から、測定をきちんとセットアップすれば、より正確な結果を得られることがはっきりと分かります。テスト対象電源と負荷の間の接続ラインの実際上の空間配置とは別に、ケーブルの長さとそれぞれの接続タイプ(つまり、この例のようにワニ口クリップを使うかハンダ接合とするか)も重要です。ラインが短ければ寄生インダクタンスも小さく、負荷過渡テストへの影響も小さくなるので、常にできるだけ短い接続ラインを使う必要があります。
以上から、きちんと撚り合わせたリードは測定結果に明らかに影響すると言えます。したがって、測定セットアップでリード線を撚り合わせるのは手間がかかりますが、それだけの価値があるということになります。