産業オートメーションの電源のジレンマ:パート2 - 同期整流レギュレータによる電源システムの改良

産業オートメーションの電源のジレンマ:パート2 - 同期整流レギュレータによる電源システムの改良

著者の連絡先情報

Generic_Author_image

Viral Vaidya

要約

新しい世代の高電圧同期整流レギュレータは、産業オートメーションの設計に関連する電源のジレンマを解決します。

はじめに

このアプリケーションノートは、産業オートメーションの電源設計における高電圧同期整流レギュレータに関する2部構成シリーズのパート2です。パート1では、産業用制御アーキテクチャおよび電源の要求とジレンマについて解説しました。シリーズのパート2では、新しい電源が同期スイッチング技術を採用しながら、以前は非現実的だった、最大60Vの電圧スパイクに耐え、最大3.5Aの供給が可能になっていることを説明します。これらの能力は効率を改善し、それによって発熱と消費電力を低減し、部品の実装面積を削減し、ディスクリートの外付け部品数を限定することによって、産業オートメーションシステムの電源設計を容易化します。

新しいタイプの同期整流レギュレータ

同期整流電圧レギュレータは、産業オートメーションシステムの電源設計の課題に対する完璧な答えのように思えます。これらのデバイスは高効率で、消費電力を制限し、システムの温度を低下させます。必要なスペースはわずかで、BOMコストが削減されます。
最大28V動作定格の同期整流レギュレータは多数存在し、一部には最大40Vの製品もあります。しかし、これらのデバイスの大半は、動作電圧定格と絶対最大電圧定格の間にほとんど余裕がないため、過電圧に対して特に敏感です。商用電源駆動のシステムに固有の電圧スパイクが発生すると、これらの部品はすぐに破壊されます。
1つの解決策は、部品の絶対最大定格電圧以下のレベルに電圧スパイクを制限する保護クランプによって同期整流レギュレータを保護することです。しかし、これらのクランプはコストを増加させ、スペースを占有し、設計スケジュールを延長させることによって、そもそも同期整流レギュレータを使用する利点の多くを無効にします。ここで産業オートメーションシステムのエンジニアは、同期整流レギュレータによる効率の向上を活用し、電圧クランプによって問題が増えることを受け入れるか、それとも同様のシステム過電圧に対応するものの、消費電力と発熱が大きくなる非同期レギュレータを選択するかというジレンマに陥ります。
半導体メーカーは、このジレンマを解決するための研究開発に巨額の投資を行い、最大60Vあるいは75Vもの入力電圧に対応可能なデバイスが発売されました。しかし、これらのデバイスの出力電流はわずか数百mAに限られており、産業オートメーションシステムで使用される大部分の機器、特にPLCの要件には遠く及びません。
しかし今では、新しい世代の高電圧、大出力電流同期整流レギュレータが発売されています。これらの新しい高機能チップの例として、マキシムのMAX1750xファミリがあります。このファミリのデバイスは2つのMOSFETを内蔵し、外付けショットキーダイオードおよびそれに関連する外付け部品を不要にします。
この新しい同期整流レギュレータモジュールファミリは、最大60Vを処理可能で、500mA、1A、2.5A、および3.5Aを含む電流出力を提供します。マキシムは、4~20mAループを使用する産業オートメーションシステムセンサー向けに、最小で数十mAの出力を備えた関連製品も供給することができます。
たとえば、MAX17503は、最大90%の効率を提供し、競合する高電圧非同期レギュレータより最大50%低い温度で動作するように設計されています。このデバイスは4.5V~60Vの入力電圧範囲で動作し、最大2.5Aの出力電流を提供します。図1は、産業オートメーションシステムの中でMAX17503 (および姉妹製品のMAX17501)が標準的に使用される場所を示します。
産業オートメーションシステムにおけるDC-DCコンバータのMAX17501およびMAX17503の対象アプリケーション
図1. 産業オートメーションシステムにおけるDC-DCコンバータのMAX17501およびMAX17503の対象アプリケーション
さらに、MAX17503は基板スペースを最大50%節約し、部品数を最大75%削減します。200kHz~2.2MHzの高周波数スイッチングによって、外付けインダクタが小型化するため、さらなるスペースの節約が可能です。
さらに、MAX1750xレギュレータはPFM機能を内蔵しています。PFMは逆インダクタ電流を抑止し、軽負荷時にパルスをスキップすることによって動作します。PFMの特長は、電源から引き込む自己消費電流(IQ)が減少するため軽負荷時の効率が高くなることです。
MAX1750xレギュレータが備える高集積度によって、外付け部品数が減少しコストが低減するだけでなく、設計上の課題も容易化されます。外付けコンデンサや補償抵抗の値を計算する(そして供給を受ける)作業はすでに済んでいるため、エンジニアが行う必要はありません。図2は、このチップのアプリケーション回路を示します。
 MAX17503のアプリケーション回路(スイッチング周波数:500kHz)
図2. MAX17503のアプリケーション回路(スイッチング周波数:500kHz)

結論

このシリーズのパート1では、産業用制御アーキテクチャおよび高電圧同期整流レギュレータに求められる要求について説明しました。パート2では、新しいタイプの同期整流レギュレータおよび電力バジェットの問題に影響を与える技術に注目しました。産業オートメーションシステムの電源のジレンマを解決することによって、新しい世代の同期整流レギュレータは堅牢な電源を手に入れるための作業からエンジニアを解放し、産業オートメーションシステムの動作の最適化に専念することができるようにします。詳細については、MAX17503Aの評価キット(3.3V出力電圧アプリケーションの場合)およびMAX17503Bの評価キット(5V出力電圧アプリケーションの場合)を参照してください。