要約
ディジタルビデオの人気が上昇していますが、アナログビデオは依然として数多くのアプリケーションで使用されています。この記事では、アナログビデオソースを切り替える標準的なアナログビデオフォーマットと方法について説明します。
はじめに
歴史的に見ると、RS-170が、30 (米国)または25 (欧州)フレーム/秒の標準フレームレートでビデオが各フレームに分割された最初の白黒のビデオ規格でした。放送用テレビは、各フレームを2つのインタレースフィールドに分割します。北米のテレビの場合は、15750ラインの水平レートが、インタレースビデオ/フレームの2つのフィールドを使って1/30秒で表示されました。慣例により、黒は、シンクチップが黒を下回る最も負のアクティブビデオ信号です。信号の各部のDCレベルは、図1に示されています。
白レベル~黒レベル間はアクティブビデオ部の場合は100 IREユニットになるように定義され、このため白~シンクチップ間は140 IREユニットでした。信号が減衰された場合は、白~黒間および白~シンクチップ間の比は一定状態を維持しました。信号が減衰されたか増幅されたかを問わず、白~シンクチップ間の信号の値は140 IREユニットでした。
今日のコンポジットビデオベースバンド信号(CVBS)は、白~シンクチップ間が公称1.0Vに設定され、RS-170から派生しています(+0.714で白、0Vで黒、-0.286でシンクチップ)。どのIREの値もまだ存続しているため、これは71%減衰されたRS-170信号として見なすことができます。全米テレビジョン方式委員会(NTSC)方式は一部の水平値および垂直値を調整し、帯域幅が縮小された色情報を実質的に同じベースバンド信号に極めて巧妙に適合させています。白黒情報はすでに伝送されていたため(初期の白黒互換性に必要)、白黒信号はカラーシステムの一部としてとどまる必要がありました。この情報は、Yまたはルミナンス情報として知られています。Yは、RGB信号の合計から構成されます1。
NTSCと、後期のPALおよびSECAMは同様の特性を利用しています。Yはすでに放送されていたため、RGBを生成するにはR-YおよびB-Yが必要です。RGBは、以下のようなちょっとした代数操作によってコンポーネントから抽出することができます。
Y = R + G + B, R = Y + (R - Y), G = Y + (G -Y), G = Y - R - B
これらの操作を数個の簡素な回路における合計および差で実行することができます。NTSCおよびPALの場合は、R-Y (U)とB-Y (V)の情報が変調され、UV信号をベースバンド信号から容易に再生することができます。たとえば、DVDプレーヤからベースバンドにおけるカラーNTSC信号を観察すると、この信号はRS-170信号と酷似しています。ただし、シンクチップの直後に約3.58MHz/4.43MHzの多数の「リングサイクル」を示すカラーバースト周波数を確認することができます(バックポーチ)。PAL信号は、わずかに異なるHおよびV同期とカラーバースト周波数ですが、酷似しています。振幅は、白~シンクチップ間で公称1.0Vです。
慣例によりビデオケーブルの公称インピーダンスは75Ωです。RG-59/RG-6は、コンポジットビデオ用のRCAコネクタを通常備えるビデオデバイスを相互接続するための標準ケーブルです。欧州では、CVBSは、CVBS信号および音声信号を取り込むSCARTコネクタに存在します。
CVBSの切替え
CVBS信号の帯域幅は、全システムで6.5MHz未満に制限されています。駆動点インピーダンスは低く、帯域幅が制限されているため、今日の大部分のアナログCMOSスイッチはそのタスクを容易に処理することができます。信号はグランド以下で、設計者は容量結合を使用し、信号をブラックレベルにクランプすることができます。注意をしないと、シンクチップがカラーバーストリファレンスとともに消失する場合があります。慣例により1.0V信号は±6dB変動するため、この信号は、約-600mVのシンクチップで2.0VP-Pの大きさになる場合があります。設計者は、問題を回避するためにスイッチに応じて±5.0Vの電源バイアスを備えるアンプを選択することができます。信号が別のCVBS入力に再び渡される場合は、設計者はバイポーラ電源方式をほぼ確実に採用します2。信号が同じボードにとどまり、内部ディスプレイ用に使用される場合は、より低コストのバイアス方式を採用することができます。
アプリケーション1―バッファ出力付きCVBS
利用可能な+5および-5V電源があると仮定すると、バッファリングを行うのにビデオオペアンプがほとんどの場合必要です。CVBS信号が非反転入力に印加されます。信号が2:1で増幅されるようにオペアンプは通常+6dBの利得に設定され、インピーダンスを適切にマッチングするように75Ωの直列抵抗が挿入されます。ほとんどの場合、出力はコンデンサを通じてAC結合されます。出力が適度にローインピーダンスで終端されると、CMOSアナログスイッチは最適動作します。スイッチの両端のキャパシタンスは、入力抵抗によってグランドにシャントされます。CVBSは75Ωで終端する必要があるため、75Ωより少し大きい値で回路を終端することを推奨します。300Ωの抵抗を非反転オペアンプ用のGNDとして使用する場合は、95Ωの抵抗によって入力インピーダンスは75Ωとほぼ完全にマッチングします。アナログスイッチのRON値が35Ωの場合は、約1.0dBのわずかな損失があります。オペアンプの利得を少し調整して、この損失に対応することができます。スイッチのRONがこれより大きいまたは小さい場合は、利得をそれに応じて調整することができます。ビデオオペアンプのインピーダンスがほぼゼロのため、その出力が他の回路を同時に駆動することもできます。抵抗を取り除くか、または抵抗を超ハイインピーダンスにするのは、ビデオを未終端状態にし、放射するおそれがあるため、推奨されません。95Ωの抵抗を使用しても悪影響はなく、使用すると回路は適切に終端されます。図2のスイッチは、ビデオバッファ付きの2:1ビデオスイッチ用の完全回路です。このスイッチは、±V電源のバイポーラ動作用に設計されています。
高性能アナログビデオ
CVBSは一部の使用に適していますが、DVDやその他のデバイスで利用可能なより広い帯域幅の記録によって、より広い帯域幅接続に対するニーズが生まれました。
Hi-8カムコーダやDVDで主に見られるSビデオでは、ルミナンス(輝度)およびクロミナンス(色度)信号の2つの信号を送出すると、より広い帯域幅の画像が生成されます。これらの信号はそれぞれ、特殊DINコネクタで伝送されます。ルミナンスはコンポジット信号のより広い帯域幅バージョンですが、色情報がありません。クロミナンスは、エンコードされたR-YおよびB-Y信号です。Y信号は今ではより広い帯域幅であり、この信号はこれらの2つの信号を分離するために特殊フィルタを通過する必要がないため、はるかに優れたビデオ信号を送出することができます。標準ビデオ方式を使って、輝度および色度の両信号を送出することができます。輝度信号では帯域幅を約10MHzに引き上げる必要があります。図2の回路のタイプを2つのチャネル(スイッチとバッファの2セット)でSビデオに使用することができます。
コンポーネントビデオは、最新の民生用ビデオインタフェースです。VGA信号と異なり、コンポーネントビデオは、RGBの代わりにY信号と2つの色差信号から構成されます。コンポーネントビデオはRGBに比べはるかに効率的に蓄積可能で、DVDフォーマットから得られるネイティブ信号です。Y信号はフル帯域幅における信号で、同期情報を備えています。アナログ信号Y Pr Pbをソースからモニタに伝送する必要があります。以下のアプリケーションは、新しいMAX4887スイッチによる2つの入力と1つのバッファ出力セットを備えるモニタを示しています。
アプリケーション2―バッファ出力を備える広帯域幅コンポーネントビデオ
コンポーネントビデオは、Y、Pr、およびPbの3つのアナログ信号から構成されます。Y信号は、フル帯域幅における信号です。このアプリケーションでは、新しいMAX4887トリプルビデオスイッチは、その優れた帯域幅と低い挿入損失で選ばれています。先のアプリケーションと同様に、5Vの単一電源が使用され、出力はバッファ付きですが、回路はスイッチとビデオオペアンプに容量結合されています。MAX4887は十分すぎる帯域幅を備え、250Ωの有効負荷で損失がほぼゼロです。低周波同期信号を渡すには、100µfのコンデンサを使用する必要があります。また、0.01µfのセラミックコンデンサが並列配置されると、高周波応答が向上します。図3の回路は、1つのチャネルを示しています。MAX4887は3つの高周波スイッチを備え、設計を完成させるには入力/出力回路をその他の2つのスイッチを使ってあと2回複製する必要があります。また、バッファ未装備のMAX4887を使用することもできます。
MAX4887は、わずか約5Ωの直列RONを備えています。入力の1kΩ抵抗によって、入力はフローティングせず、わずかなリターン損失の整合性が取られます。スイッチおよびマッチング抵抗の総損失は、0.6dBです。このわずかな損失は通常、重要でないと見なされます。前の図と同様に、スイッチが1つのみ図4に示されています。コンポーネントまたはRGBビデオの場合は、3つの同一回路が使用され、これらすべての回路はMAX4887に内蔵されています。
図4の回路は、VGA RGBビデオに適しています。ビデオ信号が大幅に負のピーク値を備える場合は、入力ESD保護の伝導を排除しない限り、MAX4887は適切な選択ではありません。信号が-0.3Vよりも負の場合は、これが発生します。負電源を利用可能な場合は、+3.3V~-1.5Vのスイッチを動作させることができます。スイッチは電流をほとんど使用しないため、その負レイル(通常、GND)を-1.5Vにバイアスすることができます。その場合、スイッチは、選択端子を除いて正常に機能します。+3.3Vのエミッタと-1.5Vに接続されたコレクタ抵抗を備えるpnp反転トランスミッタによって、電圧レベル問題が解決します。
結論
ビデオの普及性によって、多数の様々なビデオソースに対処可能にするニーズが発生しました。ビデオ信号の特性のため、デュアル電源または容量負荷のいずれかを使用する必要があります。マシシムは、いずれの方式にも容易かつ経済的に適合する多数のアナログスイッチとビデオオペアンプを提供しています。
注:
1厳密に言うと、RGBのスケールファクタが必要です(たとえば、白 = (.30 x R) + (.59 x G + (.11 x B))。
2ほとんどの場合、CVBS信号が取り入れられ、次に出力としてバッファされます(TVまたはVCRのビデオ入力端子/ビデオ出力端子など)。
その他の情報:
アプリケーションノート734:Video Basics
アプリケーションノート1184:Understanding Analog Video Signals