低ノイズで効率的なスイッチング・レギュレータ

低ノイズで効率的なスイッチング・レギュレータ

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Frederik Dostal

Frederik Dostal

スイッチング・レギュレータは多くの点でリニア・レギュレータより優れていますが、特筆すべき点は、大電力の変換時に高い効率を実現できることです。 大電力の変換効率に関してはスイッチング・レギュレータが有利ですが、弱点もいくつかあります。様々なアプリケーションにおける大きな課題の1つがスイッチング・レギュレータに固有の干渉で、伝導エミッション(通常は入力側と出力側)と放射電磁干渉(EMI)の両方を生じさせることがあります。EMIは、信号にとって重要な電気回路部品に影響を及ぼし、性能を低下させる可能性があります。また、スイッチング・レギュレータから生じるこの干渉によって、所定の仕様の要求(例えばCISPR 22クラスBに定める30MHz~450MHzの放射エミッション制限値)を満たせなくなるおそれもあります。

スイッチモード電源のスイッチ・ノードにおける理想的な波形を図1に示します。実際のスイッチング周波数は、非絶縁型電源の場合で一般に500kHz~3MHzの範囲ですが、それとは別にスイッチング遷移によって概ね10MHz~1GHzの周波数も発生します。その値は、遷移時間(通常は1ns~100ns)に対応します。

図1. 周波数と、それに対応してスイッチモード電源から生じる干渉

図1. 周波数と、それに対応してスイッチモード電源から生じる干渉

高速スイッチングによって生じる干渉は、遷移時間を延長すれば減らすことができます。スイッチング・レギュレータ内でのスイッチング遷移の速度を下げると、干渉が低周波数側に移動するだけでなく、その大きさも減少します。これはV = L × di/dtの式に基づいています。したがって、スイッチング・レギュレータに流れ込む一定の電流が非常に高速で切り替わると(増加と減少)、寄生インダクタンスが固定されている場合は、より大きな電圧オフセットが生じます。これにより干渉も増大します。

このような説明を聞くと、スイッチング遷移の速度を遅くした方が良いと考えるかもしれません。干渉の発生に関しては確かにそのとおりです。しかし残念ながら、スイッチング遷移が遅いとスイッチング損失が増大します。遷移時のスイッチには一定の抵抗があります。また、遷移時にスイッチが完全にオンになることはなく、完全にオフになることもありません。このときスイッチの抵抗は大きくなります。これによって電力損失が生じ、スイッチング・レギュレータの変換効率は低下します。

従来、設計者は、高効率を取って高ノイズに甘んじるか、低変換効率に甘んじて低干渉を取るかの二者択一を迫られてきました。EMIはフィルタやシールディングを追加することで軽減できますが、これは製造工程の大幅な複雑化やサイズの増大、そしてコストの上昇を招きます。

高効率で低EMI、なおかつコンパクトなスイッチング・レギュレータ設計を可能にするために、アナログ・デバイセズPowerby LinearグループのエンジニアはSilent Switcher®技術を開発しました。Silent Switcherでは、図2に示すように、高di/dtの電流ループを2つの対称なループに分割して、双方の磁界が互いに打ち消し合うようにしています。このノイズ抑制設計は、通常、EMIを20dB~40dB減少させます。

図2. スイッチング電流の対称性による磁界の相殺

図2. スイッチング電流の対称性による磁界の相殺

入力電圧と出力電圧

パターンとスイッチの対称なレイアウトを図2に示します。この構成は、スイッチング電流を2つの対称パスに分割します。一方のパスには他方のパスと同じ強さの磁界が発生しますが、方向は反対になります。したがって、これらの干渉磁界はほとんど相殺されます。

Silent Switcher技術と新しいSilent Switcher 2技術は、高周波数動作時のVINとVOUTの比率を向上させる一方で、低ノイズは維持します。これにより、全体的なソリューション・サイズは非常に小さくなります。これらのアーキテクチャは、スイッチング・レギュレータをコンパクト、低ノイズ、高効率にすることを可能にします。