要約
このアプリケーションノートでは、MAX9000と数個の受動部品を使用した、単一電源の三角波発振器の実装について説明します。アプリケーション回路はオペアンプ、コンパレータ、および電圧リファレンスを能動的な構成要素として使用します。MAX9000を選択した理由は、これら3つの部品を内蔵しているからです。
はじめに
三角波形の直線性によって、三角波ジェネレータは多くの「掃引」回路や試験装置で役立ちます。たとえば、スイッチモード電源や誘導モータ制御回路は多くの場合、パルス幅変調器(PWM)回路の一部として三角波発振器を使用します。このアーティクルは単一のMAX9000 ICと数個の受動部品を使用した、小型の三角波発振器を紹介します。MAX9000デバイスファミリは、高速オペアンプ、高速コンパレータ、および精密バンドギャップリファレンスを内蔵した製品です。
回路の説明
図1は基本的な三角波ジェネレータ回路を示しています¹。この回路は次の2つの基本的な構成要素から成り立っています。三角波出力を生成する積分器と三角波の振幅を要望どおりに設定する外部ヒステリシス(シュミットトリガ)付きのコンパレータです。
オペアンプは三角出力を生成する積分器として構成されています。この手法は、定電圧の積分は直線ランプになるという単純な事実に基づいています。積分器の出力はシュミットトリガによって反転入力にフィードバックされます。シュミットトリガの入力スレッショルド電圧は、三角波出力の所望のピーク電圧に対応して状態を変化させるよう設計されています。
図1の回路には欠点があります。三角波のピークはコンパレータの反転入力に印加されるリファレンス電圧についてのみ対称とすることが可能です。たとえば0.5V~4.5Vで三角波を生成するには、(0.5V + 4.5V)/2 = 2.5Vのリファレンス電圧が必要です。標準バンドギャップリファレンスの出力電圧は1.23Vであるため、三角波の電圧範囲がバンドギャップリファレンスとは独立して設定可能であることが望まれます。この柔軟性を得るためには、図2の回路に示すように、抵抗器R3をヒステリシスネットワークに加えることです。この回路ではMAX9000を使用しています。抵抗器R3によって、リファレンス電圧とは独立して三角波のピークを設定可能です。
設計について
ステップ1. 「感応しやすい」コンパレータを構築する(シュミットトリガ設計)
a) R2の選択
コンパレータのCIN+端における入力バイアス電流は80nA未満です。入力バイアス電流によって生じる誤差を最小限に抑えるには、R2を流れる電流は少なくとも8µAにする必要があります。R2を流れる電流は(VREF - VOUT)/R2です。R2について解くのに2つの可能な出力状態を考えると、次の2つの式が得られます。
R2 = VREF/IR2
および
R2 = [(VDD - VREF)/IR2]
得られた抵抗値のうち小さい方を使用します。たとえば、VDD = 5V、VREF = 1.23V、およびIR2 = 8µAの場合、R2の2つの値は471.25kΩと153.75kΩになります。このため、R2には154kΩの標準値を選びます。
b) R1とR3の選択
三角波の上昇ランプ中、コンパレータの出力はローにトリップされます(VSS)。同様に、下降ランプでは、コンパレータの出力がロジックハイ(VDD)でなければなりません。つまり、コンパレータは、必要な三角波の山と谷のポイントに対応して状態が変化する必要があります。コンパレータの非反転入力端に節点解析を適用し、これらの2つのスレッショルドについて解くことで、以下の連立方程式が得られます。
この例では、三角波の電圧範囲は0.5V~4.5Vです。したがって、VIH = 4.5V、VIL = 0.5V、VDD = 5V、およびVREF = 1.23Vを代入するとR1 = 124kΩおよびR3 = 66.5kΩが得られます。
ステップ2. 一掃する(積分器の設計)
コンパレータの2つの可能な出力状態を考えると、抵抗器R4を流れる電流の大きさは、次式で得られます。
IR4 = (VDD - VREF)/R4
および
IR4 = VREF/R4
オペアンプの最大入力バイアス電流は2nAです。このため、誤差を最小限に抑えるには、R4を流れる電流を常に0.2µAより大きくする必要があります。この制限は、以下を意味することになります。
R4 < 6.12MΩ
三角波形の周波数は、次式で得られます。
この例では、f = 25kHz、VOUT, P-P = 4V (0.5V~4.5Vの三角波の場合)、およびVREF = 1.23Vを選択します。これによって、時定数はR4 x C = 9.27µsとなります。C = 220pFおよびR4 = 42.2kΩを選択します。
ステップ3. 慎重を期す
オペアンプのスルーが制限されていなければ、得られる出力は設計周波数に一致します。フィードバックコンデンサは定電流にて充電(または放電)するため、出力信号の最大変化率は、次式で表されます。
プロセスのばらつきを考えると、オペアンプの標準スルーレートは、出力信号の最大変化率より40%大きくする必要があります。このケースでは、少なくとも0.56V/µsになります。MAX9000のデータシートを参照すると、25kHzの波形に適したオペアンプのスルーレートは0.85V/µsです。
結果
図3は、図2の回路の出力波形をプロットしたものです。