アンプの出力駆動能力を増強する回路手法はいくつかあります。1つめの方法は、外付けのバイポーラ・トランジスタをプッシュプル回路として使用して駆動力を補強することです。2つめの方法は、2つの差動アンプを複合アンプ構成(アプリケーション・ノート21参照)で使用して、各アンプの特長を活用することです。
3つめの方法では、2個以上の同じアンプの並列化を伴います。
以下に示すLT6020による回路がその一例です。LT6020は、デュアル、3V~±15V、400kHz GBW、100µA静止電流、±30µVオフセットのアンプで、スルー・レートが5V/µs(±15V電源使用時)という優れた値を持ち、低消費電力高精度アプリケーションに適しています。2つのアンプを並列化することで、出力駆動能力は2倍になります。一般的に、駆動能力はN倍になります(Nは並列化するアンプ数)。この回路は、出力インピーダンスを2分の1にするものとみなすこともできます。LT6020はデータシートの電気的特性では10kΩの負荷を用いて仕様規定されており、3V電源使用時の短絡回路電流は最小3.5mA、±15V電源時は最小5.5mAです。2つのアンプを並列化した場合、負荷は半分に、短絡回路電流は2倍になります。また、2つのアンプを並列化することで、複数のアンプで負荷を分担することになるため、1つのアンプの消費電力は減少します。出力に配置した100Ωの抵抗により、並列化したアンプが互いに競合することを防止しています。
この回路にはその他の利点もあります。例えば、アンプの電圧ノイズが減少し、S/N比が向上します。出力オフセット誤差が減少するという利点もあります。オフセット誤差には相関がないため、アンプの数が増えるとオフセット誤差の分布は中心値に近付きます。その結果、全てのデバイスを考慮した場合の正味の値は代表的な平均値に近付きます。
並列アンプを使用してアンプの出力駆動能力を増強する場合に、考慮すべきトレードオフがあります。例えば、コストや部品数、および入力電流ノイズの増加などです。ただし、多くの場合、利点の方が想定されるマイナス面を上回るため、設計者は、アンプを並列化することによってアプリケーションに最適なアンプが選択できます。回路の出力駆動能力に関し支援が必要な場合は、最寄りの販売拠点・販売代理店にお問い合わせください。