多相制御昇圧コンバータの使い方

2025年12月01日

Figure 1

   

要約

システム内の回路を動作させるために、システムに入力される電圧よりも高い電源電圧を生成しなければならないケースがあります。その場合、最も有用な方法として昇圧コンバータを使用することが多いでしょう。昇圧コンバータについては、従来の標準的なトポロジを採用したもの以外にも多様な選択肢が提供されるようになりました。なかでも、位相の異なる複数の出力を使用する多相制御(マルチフェーズ、インターリーブ方式)の昇圧コンバータは優れたソリューションになり得ます。このタイプの昇圧コンバータでは、必要な負荷電流が多い場合により高い効率が得られます。また、同コンバータを採用すれば、入力コンデンサと出力コンデンサに求められる条件を緩和できます。

はじめに

スイッチング方式の昇圧コンバータを使用すれば、低い電圧を基に高い電圧を生成することができます。図1は、その標準的なトポロジを示したものです。このトポロジにおいて、出力側はインダクタからパルス状の電流を受け取ります。ただ、コンバータの出力として必要なのは固定電圧です。そのため、このトポロジにおいては出力コンデンサC2が重要な役割を担うことになります。つまり、この出力コンデンサによってパルス状の電流を平均化し、固定電圧の出力が得られるようにするということです。これを実現するには、出力コンデンサの値をかなり大きく設定する必要があるでしょう。また、その等価直列抵抗(ESR:Equivalent Series Resistance)、寄生抵抗、等価直列インダクタンス(ESL :Equivalent Series Inductance)、寄生インダクタンスを可能な限り小さく抑えなければなりません。

多相制御によって得られる効果

出力コンデンサに対する厳しい要件を緩和する方法は存在しないのでしょうか。そのための手段としてお勧めしたいのが多相制御の昇圧コンバータです。例えば2相制御の場合、1つの出力コンデンサに接続された2つの昇圧コンバータを並列に動作させます(図2)。それら2つのチャンネルは、180° の位相差がある状態で動作します。図中の出力コンデンサC2は、1つのサイクルでエネルギーを2回受け取ることになります。つまり、インダクタL1から1回、インダクタL2から1回です。図1の回路と同等の電圧リップルを実現したい場合、図2の回路ではC2のサイズ(容量値)を約半分に抑えることができます。

図1. 昇圧コンバータの概念図
図1. 昇圧コンバータの概念図

多相制御の昇圧コンバータによって得られる効果は、出力コンデンサに関するものだけではありません。入力コンデンサについてもメリットが得られます。入力側では、インダクタによって電流の増減が制限されます。その電流波形はパルス状ではありません。図2に示すように逆相で機能する2つのコイルを使用すると、入力電流の変動も制限されます。結果として、入力コンデンサC1のサイズも小さくすることが可能になります。

図2. 2相制御昇圧コンバータの概念図。変換効率を高めるために2つのパスに電力を分散しています。
図2. 2相制御昇圧コンバータの概念図。変換効率を高めるために2つのパスに電力を分散しています。

更に、多相制御の昇圧コンバータでは変換効率が改善されます。出力電力を複数のパスに分割することから、コンポーネント当たりのピーク電流が低減されるからです。効率を高められることも、多相制御がもたらすメリットの1つです。

2相制御昇圧コンバータの実装例

図3に示したのは、2相制御昇圧コンバータの実装例です。この回路では、2相制御の昇圧動作に対応する同期整流方式のDC/DCコンバータIC「LT8349」を使用しています。このICは、バッテリの電圧を昇圧/安定化させる用途を想定して設計されています。バッテリを使用する場合、短時間のうちに多くの電流を引き出すと、その電圧が一時的に低下してしまいます。2相制御の昇圧コンバータは、その状態を回避するための最適な選択肢です。位相シフト動作によって、バッテリからは連続性が高い形で電流が引き出されるからです。 

LT8349を使用した回路にはもう1つ大きな特徴があります。それは、負荷電流が少ないときでも非常に高い効率を達成できるというものです。負荷電流が少ないときの効率を特に高めたい場合には、2相のうち1相をオフにする動作モードを選択できます。負荷電流が少ない場合にはバッテリにかかるストレスが軽減されるので、1相動作でも問題はありません。この動作モードでは、数Aの負荷電流が必要になると第2相の動作が自動的にオンになります。この状態においては、2相動作のすべてのメリットを享受できます。なお、負荷が小さいときの動作は位相シェディング(phase shedding)と呼ばれています。

図3. 2相制御昇圧コンバータの実装例。バッテリの電圧を昇圧するアプリケーションを想定しています。
図3. 2相制御昇圧コンバータの実装例。バッテリの電圧を昇圧するアプリケーションを想定しています。

図3の回路は、2.5Vの入力電圧を6Vの出力電圧に変換します。負荷電流が3Aの場合の効率は92%です。また、負荷電流がわずか2mAの場合でも90%の効率を達成できます。 

まとめ

本稿では、2相制御で動作する昇圧コンバータの例を示しました。LT8349を使用する構成を採用すれば、効率の面でメリットが得られます。負荷電流が多い場合にも少ない場合にも高い効率を達成することが可能です。このような動作に特化したICを採用すれば、2相制御の昇圧コンバータを非常に容易に実現できます。 

著者について

Frederik Dostal
Frederik Dostalは、アナログ・デバイセズ(ドイツ ミュンヘン)のパワー・マネージメント担当エキスパートです。20年以上にわたって蓄積した設計/アプリケーションに関する知識を活かし、パワー・マネージメント分野のエキスパートとして活躍しています。ドイツのエアランゲン大学でマイクロエレクトロニクスについて学んだ後、2001年にNational Semiconductorに入社。お客様のプロジェクトを支援するフィールド・アプリケーショ...
myAnalogに追加

myAnalog のリソース セクション、既存のプロジェクト、または新しいプロジェクトに記事を追加します。

新規プロジェクトを作成

この記事に関して

製品

製品カテゴリ

資料


よく聞かれる質問
最新メディア 21
Title
Subtitle
さらに詳しく
myAnalogに追加

myAnalog のリソース セクション、既存のプロジェクト、または新しいプロジェクトに記事を追加します。

新規プロジェクトを作成