ファン制御の進歩:ファン速度レギュレーションについての考慮

ファン制御の進歩:ファン速度レギュレーションについての考慮

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要約

ファン速度を温度関数として制御するのは、システムノイズを減らしたりファン寿命を延ばすのに有用な技術です。ファン速度を制御するのに使用可能な集積回路(IC)が扱われています。

ブラシレスDCファンモータの制御方法はいろいろあります。最も簡単な方法は、単一のトランジスタを使用するオン/オフスイッチ方式です。ファン速度の様々な制御を実現するため、マキシムは、2線式または3線式ファンの電源駆動用にリニア出力を使う、あるいは、4線式ファンの制御入力の駆動用にPWM出力を使ういくつかの製品を提供しています。

ファン速度のレギュレーション

ファン速度が正確に制御される必要がある場合は、閉ループRPM制御内蔵のファンコントローラの使用があります。MAX6650/MAX6651は、ファン速度の制御を可能にした最初のファンコントローラICでした。MAX6650/MAX6651は、3線式ファンのタコメータ出力からフィードバックを受け付ける閉ループファン制御ICです。これによりファン速度の設定が簡明になり、ユーザーはスタートアップや低速時の信頼性について心配しなくてもよくなります。MAX6650/MAX6651はいずれも複数のファンを駆動できますが(タコメータフィードバックはこれらのファンの1つだけからです)、MAX6651は最大4つのファンのタコメータ信号を監視することができます。

図1. MAX6650は、フィードバックループにタコメータ出力ファンがあるため、真のファン速度レギュレータです。
図1. MAX6650は、フィードバックループにタコメータ出力ファンがあるため、真のファン速度レギュレータです。

図1に、MAX6650の標準アプリケーションを示します。MAX6650は、ファン速度レジスタに設定されたコードに基づき、ファンのタコメータ期間をスケーリングされたレジスタ値に強制的に一致させることによりファン速度を安定化します。標準的なファンは1回転で2つのタコメータパルスを生成するため、必要なファン速度レジスタ値は次式で計算されます。

式1.

式2.

ここで、
KTACH = ファン速度レジスタに設定された値
tTACH = タコメータ信号の期間
KSCALE = プリスケーラ値(MAX6650/MAX6651のコンフィギュレーションレジスタに設定されており、値は1~16、デフォルトは4です。)
fCLK = MAX6650/MAX6651のクロック周波数(254kHz, typ)

MAX6650/MAX6651のその他の利点

MAX6650/MAX6651は、ファン速度の安定化の他にも多くの機能を備えています。制御ループが安定化を行わない、ファン速度が設定されたウォッチドッグリミットを超えていると検出するウォッチドッグ機能やその他汎用ディジタル機能があります。これらの点はこのアーティクルの範囲を超えているため、その他すべての機能の詳細についてはMAX6650/MAX6651のデータシートをご参照ください。

MAX6650/MAX6651により、設計者は閉ループアンプ設計に伴う複雑な問題から解放され、パストランジスタの選択と取り付けだけを行えばよいことになります。所定のパストランジスタがいったん選ばれると、次式が満たされれば、追加のヒートシンクは必要ありません。

式3.
ここで、
TJMAX = トランジスタメーカーのデータシートに記載されている最大許容ジャンクション温度
TA = 最大予想周囲温度
PD = 消費電力(上の式3と同じ)
θJ-A = ジャンクションと周囲間の熱抵抗(トランジスタメーカーのデータシートより)

この式が成り立たない場合は、次式を満たすヒートシンクを選ぶ必要があります。

式4.
ここで、
RθSA = ヒートシンクの熱抵抗(ヒートシンクメーカーのデータシートより)
RθJC = パストランジスタのジャンクションとケース間の熱抵抗(パストランジスタメーカーのデータシートより)

ファンの両端で完全短絡が起こる可能性についてはまだ論じていません。もし完全短絡が起きた場合は、ファン電源から得られるフル電流がパストランジスタに流れます。この状態が発生する可能性がある場合は、その電流と電圧値を使って全ての消費電力とヒートシンクの計算をする必要があります。別の方法としては、図2に示す回路のような電流制限回路をパストランジスタに含めることができます。電流制限抵抗の値は次式で計算してください。

式5.
ここで、ILIMITは所望の電流制限値です。この電流制限回路は温度に敏感であることに注意してください。この式の0.6という項は実際には電流制限トランジスタのベース-エミッタ電圧であるため、-2.2mV/℃により変化します。これは、温度上昇につれて電流制限を減少させるので有用かもしれません。

図2. この回路は、パストランジスタに電流制限が必要な時にその機能を提供します。
図2. この回路は、パストランジスタに電流制限が必要な時にその機能を提供します。

MAX6620で最大4つの3線式ファンを制御

2個以上のファンのRPM制御が必要な場合、MAX6620が多大な柔軟性を提供します。最大4つのファンを個別に制御するだけでなく、出力電圧のランプレートを設定します。これにより、ファン速度の変化はゆっくりと生じ、機器の近くにいる人に事実上聞こえません。図3では、4つの3線式ファンを制御するMAX6620の標準実装を示しています。

図3. ここに示すMAX6620は、外付けパストランジスタを使った4チャネルリニアファン速度コントローラで、ファンに可変電力を供給します。MAX6620は、所望のタコメータ周波数を達成するようにファンからのタコメータ信号を監視し、電源電圧を調整します。
図3. ここに示すMAX6620は、外付けパストランジスタを使った4チャネルリニアファン速度コントローラで、ファンに可変電力を供給します。MAX6620は、所望のタコメータ周波数を達成するようにファンからのタコメータ信号を監視し、電源電圧を調整します。

MAX6639で4線式ファンを制御

4線式ファンは、「速度制御」入力を提供することでファン速度制御の課題を簡素化します。この入力は通常、デューティサイクルがファン速度を決めるPWM入力信号を受け付けるようになっています。ファンによっては、速度制御入力は電圧信号を代わりに受け付けるものもあります。

MAX6639は、2つのファンのタコメータ出力を監視し、PWM出力のデューティサイクルを調整して、ファンを正確な速度に強制します。MAX6620同様に、MAX6639には、ファンの故障検出、可変PWMランプレート設定などいくつかの機能を備えており、ファン速度の変化による音を減らします。さらに、MAX6639には、2チャネルの温度検出、温度関数としてのファンRPMの自動制御を可能にする温度-RPM制御アルゴリズムの設定があります。図4では、1対のファンを制御するMAX6639の標準実装を示しています。

図4. 2つの4線式ファンを制御するMAX6639。MAX6639は、2つの温度を測定し、その測定温度に基づきファンRPMを制御可能です。
図4. 2つの4線式ファンを制御するMAX6639。MAX6639は、2つの温度を測定し、その測定温度に基づきファンRPMを制御可能です。