車載向けカメラ・リンク技術の課題とソリューション

車載向けカメラ・リンク技術の課題とソリューション

著者の連絡先情報

Joe Triggs

Joe Triggs

Derek Burke

Derek Burke

様々な車載アプリケーションが登場する中、カメラ・システムやカメラ・リンク技術の導入が進み、運転者を支援し、運転満足度の向上が図られています。搭載カメラがたった1台の従来のリアビュー・カメラ(RVC)システムは、今日、最低でも4台のカメラを搭載し、自動車の周囲を360º見渡すことのできるサラウンドビュー・システム(SVS)に取って代わりつつあります。ドライブ・レコーダやブラインド・スポットのモニタリング、ナイト・ビジョン、道路標識認識、レーン・ディパーチャ・モニタ、アダプティブ・クルーズ・コントロール、エマージェンシ・ブレーキング、低速衝突回避システムといったすべての機能が、運転者の負荷軽減に役立っています。運転満足度を向上させる目的でも、カメラの搭載が進み、運転者のバイタル・サイン・モニタリング、乗員検知、ジェスチャ認識といった、ヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)の様々なアプリケーションに導入されています。カメラ・システムの開発により、自動車メーカーは、これまでサイド・ミラーなどが果たしていた機能をカメラが担うことで、自動車の輪郭を再構成することも可能となりました。

図1 最新の自動車におけるカメラの普及

図1 最新の自動車におけるカメラの普及

図に示したようなカメラを様々に配置したアプリケーションの多くは、今日なお多くの車に搭載されている標準解像度(SD)のRVCシステムを共通の起源としています。SDカメラ・システムは、10年以上前から車載アプリケーションに慣習的に導入されており、法的条件や顧客の要望に応じて高級車をはじめ様々な車種に搭載されています。SDビデオ・ソリューションは、車載OEMに多大な恩恵をもたらしました。すなわち、テレビ放送業界で長年実績を収めた成熟技術であることから低リスクであること。また狭い帯域幅しか必要としないため、エミッションの抑制が維持された安価なケーブルやコネクタを使用できること。そして不安定になりがちなビデオ入力処理に、実績があるビデオ・エンコーダおよびデコーダが豊富に揃っていることなどです。

今日、民生機器において超高解像度(UHD)ディスプレイが普及したことで、あらゆるタイプの車に、大型で高解像度のディスプレイを搭載したいという要求が高まっています。小型のディスプレイにはSDビデオ・ソリューションで十分かもしれませんが、大型ディスプレイでは、SDビデオの欠点(SDビデオの帯域幅制限により高周波成分がなくなることで精細さが損なわれたり、変調信号において輝度信号と色信号を互いに分離する際にクロスカラー妨害が発生する等)が消費者に簡単に認識されてしまいます。ディスプレイの大型化が求められる中で、車載OEMはそのカメラ構成の残りの部分をアップグレードして解像度を高めるという課題に迫られています。この課題に対処するために必要となる1つの主要な構成要素が、画像データをカメラから受信ユニット(ECUやディスプレイなど)に転送するために選択されるカメラ・リンク技術です。

アプリケーションに対応する新しいカメラ・リンク技術を選択する際に最初に考慮すべき特性は、必要な帯域幅です。カメラ・システムは帯域幅条件によって様々なものがあります。SDビデオの解像度を使用した従来のRVCシステムで必要となるのは、狭い帯域幅(6MHzなど)です。一般に低速で使用されるSVMシステムでは、1コマの時間を長くするため低い更新レート(30Hzなど)を使用します。これにより、必要な帯域幅を制限できます。車の動作速度の全範囲で動作するサイド・ミラーの代替システムでは、より速い更新レート(60Hz以上など)を使用して、遅延を最小限に抑えています。このシステムでは、帯域幅を増加させる必要があります。自動運転用のフロント・カメラは、超高解像度(18Mピクセル以上など)が要求されるため、非常に広い帯域幅が必要です。多くのカメラ・リンク技術が存在し、広範囲にわたる帯域幅を提供しています。どのカメラ・リンク技術を選択するかが、カメラ・システムはもとより自動車全体の様々な側面に影響を及ぼし、またカメラ・システム自体によってカメラ・リンク技術が影響を受けることになります。

画質

カメラ・リンク技術によって実現できる画質は、アーキテクチャ設計において重要な要素です。十分な帯域幅を確保できないカメラ・リンク技術を通してビデオ・データを送ると、画像の完全性が失われたり、完全に画像が損なわれたりする可能性があります。カメラ・リンク技術に起因する画質の劣化は、画像鮮鋭度やダイナミック・レンジなどの要素を測定することで評価できます。

ケーブルの特性

現代の自動車のケーブル・アセンブリ(ワイヤ・ハーネス)は、全体として非常に複雑で、重く、取り付けが面倒なコンポーネントの1つです。標準の車でさえも配線は優に1kmを超えるため、ハーネスは考慮すべき重大事項となってきます。最優先事項として、より広い帯域幅が求められるアプリケーション(自動運転車用の超高解像度のフロント・カメラなど)では、重量のある高品質のケーブルが必要です。内燃機関自動車、電気自動車の区別なく走行可能距離を延ばす努力がなされ、自動車の軽量化と効率化に焦点が当てられている今日、ケーブルの重量は厳しく精査すべき項目として浮上しています。車内に複雑な配線を通す必要のあるアプリケーションでは、ケーブルが対応可能な曲げ半径が重要となる場合があります。ちょうつがいで連結されたボディ部分にカメラを設置するアプリケーション(SVMシステムのドアやRVCおよびSVMシステムのトランク・リッドなど)では、開閉サイクルに耐久性のあるケーブルが不可欠です。ケーブルが過酷な環境にさらされるおそれのあるアプリケーションでは、耐水性が求められることがあります。

選択するカメラ・リンク技術やケーブルの種類に関わらず、ケーブルはセンチメートル単位でコストが増し、ハーネスのコスト全体を照合すると、ハーネスが車で最も高価な3つの要素のうちの1つとなる場合があります。

従来のSDビデオ・ソリューションでは狭い帯域幅しか必要としないため、極めてコスト効率が高く、軽量のケーブルを使用することができます。SDビデオ・ソリューションでは、多くの場合、CANなどの低速コントロール・リンクで一般に使用されているケーブルに類似したシールドなしツイスト・ペア(UTP)ケーブルが使用されています。

コネクタ

もう1つ重要な要素として、ワイヤ・ハーネスとモジュールを連結するための電気コネクタがあります。このコネクタは、ハーネスをコントロール・モジュールやセンサー、モータなどに接続するだけでなく、ハーネス内の他の部分同士を同一のケーブルで接続するのにも使用されています(インライン・コネクタ)。インライン・コネクタは、ハーネスの組立て、取付け、保守を簡素化するために自動車業界で広く使用されています。例えば、カメラのすぐ近くにインライン・コネクタを使用すれば、カメラが損傷した場合に、自動車のワイヤ・ハーネスのそれ以外の部分にはほとんど影響を与えずにカメラを交換できます。

上述のケーブルの選択と同様、コネクタの選択もカメラ・システム全体のコストを決定する重要な要素となる場合があります。高解像度のシステムでは一般に、より広い帯域を通すコネクタを必要とするため、コストが上昇します。

コネクタに関する他の考慮事項として、PCBおよびECU表面のコネクタのフットプリント、コネクタを密封する必要性の有無、カラー・コーディング/キーイングする必要性の有無があります。

従来のSDビデオ・ソリューションでは、カメラとECUの両方、またはヘッド・ユニット(HU)にコスト効率の高いコネクタ・ソリューションを使用できます。例えば、SDビデオを用いたRVCシステムのビデオ信号は、多くの場合、マルチピン・コネクタ上の他の信号(コントロール・ネットワーク、必要な電源信号など)と共にECUまたはHUに配線されています。一方、デジタル・リンクでは一般に専用コネクタが必要であるため、ECU上でPCBおよび実装方法に制約がかかります。

車両アーキテクチャ

関連する車両アーキテクチャは、適切なカメラ・リンク技術を選択するうえで様々な影響を及ぼす可能性があります。標準的な自動車のケーブル長は、一般に数メートルにも及ぶことがあり、消費者が大型のスポーツ用多目的車を求める傾向と相まって、ケーブル長は更に長くなってきています。トレーラが上手くバックできるように支援するトレーラ・リバース・アシスタンスなどの付加機能を搭載した車両アーキテクチャでは、新たにケーブル長の課題が発生する可能性があります。商用車では、カメラ・システムによってケーブルが最大長で張り巡らされるというアーキテクチャ上の課題も存在します。ほとんどのカメラ・リンク技術はこれらすべての車両アーキテクチャや装備に対応できますが、カメラ・リンク技術の中には長いケーブル長に対応するために、リピータやレトランスミッタといったモジュールを付加する必要があるものもあります。

EMC

ケーブルは車両においてアンテナとなって有害な影響を及ぼすおそれがあるため、ケーブル・ソリューションの電磁エミッションおよびイミュニティ耐性もまた、カメラ・リンク技術の選択過程において重要な要素になります。車内に搭載される電気電子機器が普及したことより、このような機器との共存・両立が可能なシステムへの依存度が増しています。2つのシステムが動作しているとき、一方のシステム(RVCシステムなど)と、もう一方のシステム(電気自動車のトラクション・モータや電動椅子機構など)が互いに影響を及ぼすことは許されません。このため、リンク技術のソリューションでは、選択に先立って、それらのエミッションとイミュニティの性能を考慮に入れる必要があります。

内部または外部からの障害波が車内のシステムに干渉しないことを確認するため、自動車メーカーは特定のEMC規格に対して全システムをテストしています。このようなテストは、まずシステム・レベル(リアビュー・カメラまたはサラウンドビュー・システムなど)で行われます。このテストにはコストと時間がかかり、難易度も高いものになりますが、各モジュールは自動車に搭載される前に、高いレベルの耐性を確実に持つことができます。システム・レベルのテストに合格すると、自動車メーカーは高出力の放射信号を照射時のシステムの動作をテストすることによって、車内でのシステムの動作と性能を検証する必要があります(放射イミュニティ)。メーカーは、干渉信号が存在しないことを確認するため、車内のすべてのアンテナが受信する(FM、GPS、セルラ、Wi-Fiなどの)帯域も測定しています。自動車レベルでEMC問題を解決するには、コストと時間がかかる可能性があります。

他の条件

既に概説した条件に加え、おびただしい数の要求事項がコントロール・チャンネルの可用性、画素の精度、ASIL定格といったカメラ・リンク技術の選択に影響を及ぼします。

ここまでのまとめ

カメラ・システムの設計時には、多くの要因がカメラ・リンク技術の選択に影響を及ぼします。逆に、選択したカメラ・リンク技術によって、この技術が搭載された車のいくつかの側面が影響を受けます。SDビデオ技術で構成された従来のRVCシステムを用いた場合、車載OEMは車内のビデオ転送において、極めて信頼性が高く、コスト効率の高い方法を実現できました。しかしながら最近の消費者動向から、SDビデオ・システムは大型のディスプレイでは次第に受け入れられなくなってきています。更に、法的整備や消費者の要望と相まって、新車1台に搭載されるカメラ台数は増加の一途をたどっています。

このような情勢が、今日、あらゆる車載カメラ・システムに対応するいくつものカメラ・リンク技術が出現してきた背景となっています。カメラ・リンク技術は、従来のSD RVCシステムで実績あるSDビデオ技術(CVBSなど)が今なお使用されていますが、高解像度のアナログ・リンク技術から高解像度のデジタル・リンク技術へと範囲が広がっています。 

図2 C2Bアーキテクチャ概略図

図2 C2Bアーキテクチャ概略図

SDビデオ技術では、狭帯域幅のアプリケーションしか実現できませんが、コスト効率の高いケーブルとコネクタを使用できます。デジタル・リンク技術では、広帯域幅のアプリケーションを実現でき、画素の精度などで有利である反面、一般に高価なケーブルとコネクタが必要になります。高解像度のアナログ・リンク技術を用いると、上述の2つのソリューションの折衷案をとることができ、コスト効率の高いケーブルとコネクタによって高解像度ビデオを伝送することができます。

C2Bは、このような高解像度のアナログ・リンク技術の1つで、コスト効率の高いケーブルとコネクタを使用しながら、EMC準拠の高解像度ビデオをサポートするという魅力的な複合ソリューションを車載OEMや一次サプライヤに提供します。

C2B:車載向けのカメラ・リンク技術

C2Bは、アナログ・デバイセズが市場に導入した高解像度アナログ・ビデオ伝送技術です。

C2Bは最初から車載向けのカメラ・リンク技術として立案され、最大2Mピクセル(1920 × 1080)の解像度でトランスミッタからレシーバーまでのHDビデオ転送をサポートします。C2Bは、以前からSDビデオ・システムに使用されているUTPケーブルとUTPコネクタが持つ最大帯域幅を使用できるように設計されています。革新的なイコライザ・アーキテクチャを採用しているため、ケーブル長が最長30mまで再伝送の必要はありません。すべての車載条件を確実に満たせるように、C2BにはEMCに対して様々な最適化(信号構成、アンチエイリアス・フィルタ、スペクトル・シェーピング・フィルタの最適化)が行われています。その上、車載向けサプライヤとして高い評価を得ているアナログ・デバイセズの強みも備えています。

C2Bは、カメラ・モジュールからの最大4本のGPIO信号と割込み信号で構成されるI2C信号を、最大400kHzで伝送処理できるコントロール・チャンネルを搭載しています。これによって、局所的な構成(カメラ・モジュール内のマイクロコントローラ・ユニット(MCU)およびECU/HU内のMCU)だけでなく、遠隔の構成(カメラ・モジュールを構成するECU/HU内のMCU)でシステムを容易に構成することができます。4本のGPIO信号は、C2Bのリンク全体で静的信号を転送するために使用されます。2本の割込み信号は、C2BトランスミッタがC2Bレシーバーにステータス情報を伝送できるように提供されます。C2Bは、コントロール・チャンネル・データに対してCRCチェックを行い、万一問題が発生した場合、自動的に再伝送を開始することができます。

C2Bには、ケーブル診断(ケーブルでバッテリへの短絡やグラウンドへの短絡発生時の情報収集)やデータが正しく伝送されているかを確認するためのフレーム数の収集、生成、デコーディング、伝送などの高付加価値機能が、車載関連の顧客向けに追加されています。

C2Bは、車載アプリケーション向けに規定・立案された技術で、複数のブロックを使用して、低価格のUTPケーブルと低価格のシールドなしコネクタに対しEMCコンプライアンスを確保できるようにしています。これらのブロックには、インピーダンス・ミスマッチに対応するエコー・キャンセレーション、広帯域同相ノイズ除去(UTPケーブル使用時に重要)、エミッションを低減する出力信号のスペクトル・シェーピングなどの機能が搭載されています。C2Bは、デバイス・レベルのEMC国際規格およびシステム・レベルのEMC国際規格(CISPR25クラス5[エミッション]、ISO11452-2/ISO11452-4/ISO11452-9、ISO7637-3[イミュニティ]、ISO10605[ESD])に準拠しています。

図3 デジタル・リンクのビデオ・フレームとC2Bリンクのビデオ・フレームを取り込んだ場合の比較

図3 デジタル・リンクのビデオ・フレームとC2Bリンクのビデオ・フレームを取り込んだ場合の比較

図4 デジタル・リンクのビデオ・フレームとC2Bリンクのビデオ・フレームを取り込んだ場合の比較

図4 デジタル・リンクのビデオ・フレームとC2Bリンクのビデオ・フレームを取り込んだ場合の比較

これらの特長を有するC2Bは、以下の2つに分類される自動車メーカーのいずれにも、魅力的なソリューションとなります。すなわち、引き続きSDカメラ・ソリューションを使用し、低リスクのアップグレード・パスを求めているメーカーに対しても、また既にデジタル・リンク技術をベースとするカメラ・ソリューションに切替え済みで、高解像度のアナログ・リンク技術からのコスト削減方法を探し求めているメーカーに対しても最適なソリューションと言えます。

C2Bが他の技術と比べて、システム・コストの面で格段の優位性を持つアプリケーションとして、リアビュー・カメラ、サラウンドビュー・カメラ・システム、eミラー、乗員モニタリング・システムなどがあります。単独で実証されたC2Bが持つ画質劣化のない特性によって、システム・レベルのコストを大幅に削減しつつ、デジタル・リンク技術と同等の高解像度を実現できます。

まとめ

C2Bは、リンク技術の魅力的なソリューションを自動車メーカーに提供します。この技術を使用すると、既存のSDカメラ・ソリューションからHDカメラ・ソリューションへのアップグレードが容易になるだけでなく、デジタル・リンク技術を使用するシステムのシステム・コストを削減するための移行が容易になります。車載アプリケーションに使用可能なC2B技術および製品の詳細については、analog.com/jp/c2bから入手するか、最寄りのアナログ・デバイセズ販売代理店にお問い合わせください。C2Bトランスミッタ(ADV7992)およびC2Bレシーバー(ADV7382/ADV7383)の評価用ボードは、アナログ・デバイセズから入手可能で、技術的検討やシステムのプロトタイピングを迅速に進めることができます。システムのプロトタイピング中に、レシーバーを開発する場合は、C2Bトランスミッタの評価用ボードをC2Bのソースとして使用できます。また、カメラを開発する場合は、C2Bレシーバーの評価用ボードをC2Bシンクとして使用できます。