要約
ここでは、Rohde & Schwarz SFQ TVテストトランスミッタの帯域外ノイズ制限を抑制するATSC 8-VSBレシーバのブロッカ性能を測定するためのセットアップを示しています。このセットアップには、44MHzにおけるSAWフィルタによる近接フィルタリング、所望の固定RF周波数へのミキシング、およびキャビティバンドパスフィルタによる遠外ノイズのフィルタリングが含まれます。また、ATSC A/74規格のブロッカ要件について述べています。SFQ帯域外ノイズは、2つのフィルタ段の前後に示されています。
はじめに
Rohde & Schwarz SFQ TVテストトランスミッタを使用して、A/74 ATSC 8-VSB信号に対するレシーバのブロッカ性能を測定する場合には、SFQ信号のノイズ制限があるために特別な検討が必要です。SFQの不要信号による帯域外ノイズは、所望チャネルのノイズフロアを大幅に上昇させます。この測定システムの制限を回避するため、不要信号をフィルタリングしてこのノイズを除去しています。最初に、SAWバンドパスフィルタによって近接ノイズを除去し、次に、キャビティバンドパスフィルタによって遠外ノイズを除去します。
ブロッカ測定システム
図1に8-VSBブロッカ測定システムを示します。不要信号は、所望の信号と結合された後、50Ω~75Ωの最小損失パッド(MLP)を通過してチューナに入力されます。結合の前に、不要信号は2回フィルタリングされます。SFQ信号は、容易に入手可能なATSC 44MHz SAWフィルタによってフィルタリングされ、近接(N±1およびN±2)ノイズが除去されます。次に、信号は、低ノイズで高直線性を備えたGeneral Instruments C6M-II変調器によって固定RF周波数にミキシングされます。その後、信号は、3キャビティバンドパスフィルタによってフィルタリングされ、遠外(N±2~N±15)ノイズが除去されます。この測定システムでは、不要周波数が固定される一方で、所望の周波数が移動され、A/74規格によって求められるさまざまな隣接オフセットを測定します。
図1. 8-VSBの所望のチャネルに対する8-VSBの干渉を測定するためのATSCブロッカ測定システム
図2は、8-VSBの所望のチャネルに対する8-VSBの干渉に関してA/74規格で要求されるブロッカ性能すなわち希望波対非希望波比(D/U)を示しています。この図は、所望の信号が微弱(-68dBm)な場合の例を示したものですが、一般的にこれは極端な例です。レシーバは、所望の信号より少なくとも33dB大きなN±1の不要信号に耐える必要があると同時に、3x10-6ビットエラー率(BER)の画質妨害の検知限界(TOV)要件を満足する必要があります。同様に、希望波より少なくとも57dB大きなN±6での非希望波に耐える必要があります。
図2. 8-VSBに対する8-VSBの干渉についてのATSCブロッカマスク
図3は、8-VSB信号のSFQスペクトル出力を示しています。下位側の隣接チャネルのノイズ増加は、このSFQ信号がN+1非希望信号として使用されたときに、測定値を制限することになります。ノイズ増加を含むチャネル電力は、希望信号に対してわずか-46dBcです。ただし、-58.5dBcの最小値が要求されます(-33dBcのD/Uから15.5dBのSNRと10dBのノイズフロアマージンを減算した値)。このSFQ信号をN-1やN±2の非希望信号に使用したときにも、ある程度の制限が観察されます。
図3. SFQ TVテストトランスミッタからの8-VSB近接スペクトル
図4は、SAWフィルタが、ワーストケースである(上位側の)最初に隣接するチャネルのSFQノイズを-60.5dBcに低減していることを示しています。これは十分な値です。C6M-II変調器のハイサイドLO挿入のために、スペクトルが反転していることに留意してください。このスペクトルは非希望信号なため、スペクトルの反転は問題にはなりません。
図4. SAWフィルタによるSFQ 8-VSBの近接スペクトルのノイズ低減
SAWフィルタリングの後の広範囲にわたるSFQ出力を図5に示します。同様に、SFQからの遠外ノイズが遠外の隣接チャネルのD/U測定値を制限しています。N-6におけるノイズはわずかに-66dBcですが、-82.5dBが要求されます(-57dBcのD/Uから15.5dBのSNRと10dBのノイズフロアマージンを減算した値)。下位側のすべての隣接チャネルはノイズ低減が必要であり、また上位側の一部の隣接チャネルもノイズ低減が必要です。
図5で、N±1とN±2の周波数に対するスペクトルは無視する必要があることに留意してください。これらは、アッテネータを0dBに設定したときにスペクトラムアナライザをわずかにオーバドライブすることによって生じる成分です。アッテネータの0dB設定は、遠外オフセットにおけるスペクトラムアナライザのノイズフロアを低減するために必要となります。
図5. SFQからの8-VSB遠外スペクトル
図6は、キャビティフィルタが遠外SFQノイズを少なくとも-84dBcにおけるスペクトラムアナライザのノイズフロアに低減していることを示しています。これは十分な値です。ここでも、図6で、N±1とN±2の周波数に対するスペクトルは無視する必要があります。これらもまた、アッテネータを0dBに設定したためにスペクトラムアナライザをわずかにオーバドライブすることによって生じる成分です。
図6. キャビティフィルタによるSFQ 8-VSBの遠外スペクトルのノイズ低減
結論
近接ノイズと遠外ノイズの両方をフィルタリングすることによってRohde & Schwarz SFQのノイズ制限を抑制する8-VSBブロッカ測定のセットアップを示しました。
付録—フィルタリスト
- Communications & Energy Corp.社製4001BPU (3) バンドパスフィルタ(UHFチャネル42D用)
- Epcos社製B39440-X6965-N201 44MHz SAWフィルタ(帯域幅6MHz)。図7は、このフィルタを50Ωにマッチングさせるために使用する回路図を示します。
図7. 50Ωコネクタにマッチングさせた44MHz SAWフィルタの回路図