今日の電子的アプリケーションは、多くの場合、5Vまたは3.3Vの電源だけでなく複数の電源を必要とします。10V、20V、あるいはそれ以上の電圧を必要とする場合も珍しくありません。これに加えて、電圧レベルが同じでも、領域としては別々に生成しなければならない、つまり、同じ電圧を二度生成しなければならない場合もあります。その一例が、アナログ負荷とデジタル負荷に電力を供給する2つの同じ電圧の実装です。このように電源を分離すれば、相互の干渉を防ぐと共に、様々な負荷に様々なタイミングで電力を供給することが可能になります。
多くの異なる電圧領域を持つシステムのブロック図を図1に示します。これらの電圧は、個別のスイッチング・レギュレータとリニア・レギュレータによって生成されます。個々の電圧コンバータの選択は、求められる変換効率、生成する電圧、およびそれぞれの負荷が消費する電流に大きく依存しますが、中でも消費電流の影響は特に顕著です。結果として、個々の電圧コンバータの設計は大きく異なります。
更に、生成される個々の電圧に生じる遅延は、コンバータごとに異なります。これは様々な電圧領域が無秩序にランプアップするという結果を招き、それによって機能的な問題が発生したりシステムが損傷したりするおそれがあります。
したがって一般的には、各電圧が適切なタイミングでその目標値に達するようにするための、信頼できるパワーアップ・シーケンスが必要になります。多くの場合は、シャットダウン時にも別なパワーダウン・シーケンスに従う必要があります。
複数の電源電圧を使用するシステムでは、異なる電圧をモニタする能力が重要です。電源領域が2つだけのシステムでは些細に見えるものが、多くの電圧を使用するシステムでは複雑なものになります。このような理由から、多くのシーケンサ・デバイスには監視機能や電圧モニタリング機能が組み込まれています。
ADM1186-1アナログ・シーケンサICを図2に示します。このシーケンサは、4つの電圧領域の制御とモニタリングが可能です。電圧のパワーアップとパワーダウンは、それぞれの電圧コンバータのイネーブル・ピン(オン/オフ・ピン)を制御することによって行います。電圧コンバータのターンオン時間は、小さいコンデンサを使用した時間遅延によって調整できます。それぞれの出力電圧は、対応するモニタ・ピンを介してモニタします。すべての電圧が確立されると、シーケンサ回路がパワーグッド信号を生成します。
ADM1186-1などのアナログ・シーケンサ・ソリューションは使用が容易で、複数の電圧を使用するシステムに必要なすべての機能を備えています。これらのデバイスは、設計がそれほど複雑でなく、システム内で必要とされるデジタル・モニタリング機能が少ないという点で、デジタル・シーケンサと異なります。例えば、PMBusや同様のプロトコルなしで使用することができます。
図1に示すシステム例では、8つの電圧領域が使われています。電圧領域が4つを超えるシステムでは、シーケンシングとモニタリングをどのように行えばよいのでしょうか。その場合は、複数のADM1186-1回路を順番に組み合わせることができます。また、ADM1186-1シーケンサは、いくつでも接続が可能です。
個々のシーケンサを組み合わせるこのタイプのシーケンシングには様々な例があり、市販もされています。しかしADM1186-1は、図3に示すようなリンク形態で使用すれば、パワーアップ時およびパワーダウン時の完全なシーケンシングにも対応できるという点で、他のデバイスとは一線を画しています。他の同等のソリューションでも様々なシーケンサICをリンクすることはできますが、このようなデイジーチェーン接続形態で制御できるのは個々の電圧のランプアップだけで、ダウンシーケンシング(つまり電圧のパワーダウン)を制御することはできません。
多くの最新システムにおいて、モニタリングしながら信頼できるパワーアップとパワーダウンを行えることは重要な点であり、ADM1186-1のようなソリューションを使用すれば、開発の労力をほとんど払うことなく、柔軟にこれを実現することができます。
シーケンシングについての詳細は、以下を参照してください。
ネット配信:“Understanding Power System Management.”
デザイン・ノート384:“Accurate Power Supply Sequencing Prevents System Damage.”