MAX4454ベースのI/Q発生器によるRF直交モジュレータのテスト

MAX4454ベースのI/Q発生器によるRF直交モジュレータのテスト

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要約

このアプリケーションノートでは、直交モジュレータのテストに使用できる単純で安価な正弦/余弦発生器について説明します。設計と性能について説明し、読者の特定ニーズに合わせて発生器をカスタマイズする方法について示します。

追加情報:

はじめに

直交モジュレータを評価するときには、ベースバンド入力にて直交する2つの正弦波を利用してモジュレータの精度を確認すると便利です。キャリア抑制、側波帯抑制、利得制御範囲、および帯域にわたる利得の平坦性などのパラメータはすべて、直交トーンを利用して、RFの出力スペクトルを調べることで定量化できます。また、実験用の複素変調発生器がなくても、トランスミッタ全体を効率的にデバッグすることもできます。いったんシステムをデバッグして動作を確認すれば、より高級な機器とテストを用いてシステムを詳細に評価できます。

同相および直交(I/Q)の入力を用いてシステムをテストするには、位相オフセットが正確に90°の2つのトーンすなわち「正弦/余弦」の配列が必要です。2つの実験用発生器を(外部リファレンスなどによって)接続することでもある程度は動作しますが、作業はいらだたしくて、ときには不可能な場合もあります。

図1には、正弦/余弦のペアを生成する実際的な手法を示しています。この方法では抵抗/コンデンサ(RC)のブリッジを使用し、単一の正弦波でこのブリッジを駆動します。得られる2つの信号(正弦と余弦)は、バッファリングするために、別々のユニティゲインのオペアンプ(単一のMAX4454)に供給されており、50Ωのポートを通じてこの信号を利用できます。1つの安価な関数発生器によって原信号の正弦波を生成でき、一般に入手可能な部品を用いてソリューション全体を一から構築できます。MAX4454には、次のような優れた特性があります。すなわち、200MHzのGBW (利得帯域幅)、低ノイズ、極めて低いIMD (相互変調歪み)、安定したユニティゲインです。

図1.
図1.

実装:ブリッジ部品の選択

RCローパス部分では、-3dBのカットオフで-45°の位相遅れが生じ、RCのハイパスでは、+45°だけ位相が進みます。したがってまったく同一のRとCを選択した場合、ブリッジは正確に90°の位相偏移出力を供給し、それぞれが入力正弦波より3dBだけ少なくなります。当然、回路は周波数に大きく依存しているので、ブリッジ部品をできるだけ綿密にマッチングさせる必要があります。そうでないと、出力トーンはマッチングされません。無線をテストするための適切なコーナー周波数が生成されるよう、正しい値を選択する必要があります。ブリッジを設計するには、次式を使用します。

Fcorner = 1/2πRC
まず、使用する無線に最適なベースバンド入力周波数を決定することから始めます(一般に送信I/Q帯域幅の中央)。次に、ボード寄生によってブリッジの平衡が簡単に崩れないよう、100pF以上のコンデンサを選択します。これらの変数を決定したら、後は抵抗値を選択するだけです。MAX4454は、優れた駆動能力(すなわち100MHzで数VP-P (50Ω))を備えたビデオ用のオペアンプであるので、唯一の(推奨される)制限は、R値を100Ω以上に保持してアンプの歪みを最小限にすることだけです。表1は、無線を正常にテストするために実際に構築して使用したブリッジの例を2つ示しています。

表1. ブリッジ部品

Corner Frequency
R1 (Ω)
C1 (pf)
408.09kHz
3.9K
100
4.38MHz
443
82

実際の回路を実装するときに最も重要なことは、ブリッジを平衡させるということです。各抵抗を測定し、また各コンデンサを「既知の値」のロットから選択することが必要なだけでなく、すべての信号トレース(またはワイヤ)をできるだけ同じ長さに近づける必要があります。この条件を無視すると、回路全体の整合性が危うくなります。下の写真(図2)は408kHzのコーナー周波数用に作成したユニットを示しています。等間隔のSMAコネクタおよびブリッジとオペアンプに対するその相対位置に注目してください。

図2.
図2.

性能の確認

表1の1行目に示されている回路の値は、本来408.09kHzで正弦/余弦出力を生じるよう選択したものです。図3に示すセットアップを使用して、プロトタイプを作成およびテストしました。

図3.
図3.

I/Q発生器の位相と振幅のバランスはアップコンバーションによってテストしましたが、これには内部直交モジュレータが-65dBcの側波帯(イメージ)除去を備えた実験用の発生器を用いました。これはほとんどのシステムにとって最適なものであると考えられます。したがって、出力で不平衡が観察された場合、これはI/Q発生器の被テスト回路によるものです。

生じたRF信号をスペクトラムアナライザで監視しながら、キャリアと側波帯の抑制が最適になるまで入力周波数を調整しました。ブリッジの正確なFcornerはこうして決定します。408.65kHzで最大側波帯抑制は-46dBcでした。また、これも注目すべきことですが、IとQの出力ではブロッキングコンデンサを使用しているので、テスト回路がモジュレータにDCオフセットをもたらすことはなく、したがってキャリア抑制を劣化させることはありません。