電流および温度モニタ機能を備えた20V、2.5A同期整流式モノリシック降圧レギュレータ

電流および温度モニタ機能を備えた20V、2.5A同期整流式モノリシック降圧レギュレータ

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Keith Bassett

デジタルICの集積度向上と、プリント回路基板のレイアウトおよび組み立て技術の進歩によって、システム性能と電力密度の向上が絶えまなく進んでいます。これらのシステムの多くは、12Vレールまたはバッテリ・スタックから電力を供給しており、ポイントオブロード・レギュレータを使用して電力チェーンの効率を最大限に高める一方で、形状を小さく抑えています。LTC3626同期整流式モノリシック降圧レギュレータは、柔軟で効率の高いDC/DC変換機能を備えつつ、占有面積が非常に狭いので、こうした動作環境に最適です。

LTC3626は、3.6V~ 20Vの入力電圧範囲で2.5Aの出力電流供給能力があり、小型(3mm×4mm)の20ピンQFNパッケージに収められています。その特許取得済みのオン時間制御アーキテクチャによってきわめて優れたトランジェント応答が得られ、高いスイッチング周波数での降圧比を高くすることができるので、基板の実装面積が最小限で済みます。

LTC3626は、使いやすい強力な機能をいくつか内蔵していますが、通常はこの機能を実現するのに他のICと相当な設計時間が必要になります。特に、わずか数個の受動部品を付加するだけで、出力電流、入力電流、ダイの温度を正確に測定できるようにLTC3626を設定できます。また、それらのパラメータについて制限を設定することも非常に簡単にできます。

これらの組み込み機能によって、システムの性能についてより正確に把握することができ、ほとんど設計上の苦労なく制御のレベルを高めることが可能です。

さらに、設計の労力を最小限に抑えるためにオプションの内部ループ補償回路があります。また、LTC3626は、ユーザが選択可能なBurstMode 動作または強制連続モード、抵抗でプログラム可能な500kHz ~ 3MHz の範囲のスイッチング周波数、パワーグッド状態出力、出力トラッキング機能、および外部クロック同期機能も内蔵しています。

電流のモニタおよび制限

システム全体の性能を測定する1つの方法は、電源の出力側の電流をモニタすることです。電源電流のモニタは、負荷となるICが期待どおりに動作しているかどうかを設計者に伝える機能もあるので、設計時やデバッグ時、さらに通常動作時に役立ちます。

LTC3626 は、そのIMONOUT ピンから平均出力電流のごく一部を流すことによって電源電流を簡単にモニタします。具体的には、IMONOUTピンから流れる電流は平均出力電流を16,000で割った値と等しくなります。

-40°C~ 85°Cの周囲温度範囲での出力電流測定の標準的な性能を図1に示します。実際の平均出力電流とLTC3626によって測定された平均出力電流の間の誤差を図2に示します。

図1.出力電流モニタと出力電流

図1.出力電流モニタと出力電流

図2.出力電流モニタ誤差と出力電流

図2.出力電流モニタ誤差と出力電流

IMONOUT から流れる電流は、直接測定することもできますし、IMONOUTピンとグランドの間に抵抗を配置して電圧に変換することもできます。IMONOUTピンの出力を適切な電圧に変換することにより、マイクロコントローラや単独のA/Dコンバータを用いてデジタル化することが簡単にできます。出力電流モニタを作動させて動作するよう構成されたLTC3626の例を図3に示します。このケースでは、LTC2460(16ビットA/Dコンバータ)を用いて測定結果をデジタル化しています。

図3.デジタル式の出力電流モニタ機能を備えた、12V入力で1.8V出力の2.5Aレギュレータ

図3.デジタル式の出力電流モニタ機能を備えた、12V入力で1.8V出力の2.5Aレギュレータ.

LTC3626は、プログラミングが容易な平均出力電流制限機能も備えています。具体的には、LTC3626 は、約1.2Vのリファレンスを持つ電流制限アンプを内蔵しています。平均出力電流をプログラムするには、制限回路が作動する電流によって生じる電圧が1.2VになるようにIMONOUTとグランドの間の抵抗値を決めるだけで済みます。

平均出力電流の場合と同様に、LTC3626は、平均入力電流の推定値をIMONINピンで出力します。言い換えると、IMONINピンの電流は、平均入力電流の推定値を16,000で割った値です。平均出力電流の場合と同様、LTC3626は、平均入力電流の制限値をプログラムするための簡単な仕組みを備えています。この機能は、入力電源から流れる平均電流を制限する必要があるアプリケーションで便利です。平均入力電流を475mAに制限する一方で5Vの入力電圧から2.5Vの出力電圧を発生するよう構成されたLTC3626の例を図4に示します。

図4.入力電流モニタと475mAの入力電流制限機能を備えた5V入力、2.5V出力(同期周波数1MHz時)のレギュレータ

図4.入力電流モニタと475mAの入力電流制限機能を備えた5V入力、2.5V出力(同期周波数1MHz時)のレギュレータ

温度のモニタおよび制限

LTC3626は、ダイ温度の推定値をTMONピンに発生します。この機能を使用して、組み立て時に行ったQFNパッケージの放熱パッドとグランドの間の接続品質を調べることができます。QFNパッケージの放熱パッドの目的は、基板への低インピーダンスの電気的接続ならびに良好な熱接触を確保することです。この重要な接続の目視検査は難しく、長期間デバイスを動作させるにはダイ温度が高すぎる場合でも、安定化出力電圧を観察しただけでは放熱パッドの接続が十分かどうかを識別できないことがあります。しかしながら、TMONピンを測定することにより、放熱パッドの接続状態、したがってデバイス内部の動作環境を知ることができます。

一例として、2つのデバイスから取ったデータを図5に示します。一方は放熱パッドとPCBとの接続が良好なデバイスで、もう一方は放熱パッドの接続が不十分なデバイスです。両デバイスとも設定された電圧を出力していますが、内部温度の測定結果から2つのデバイスの内部の動作環境が大きく異なることは明らかです。たとえば周囲動作が70°Cのシステムに組み込んだ場合、放熱パッドの接続が不十分なデバイスは、許容最大接合部温度である125°Cを明らかに超えるので、長期信頼性が低下することになります。

図5.LTC3626による温度測定によって、放熱パッドの接続の品質の確認は簡単に行えます。

図5.LTC3626による温度測定によって、放熱パッドの接続の品質の確認は簡単に行えます。

まとめ

今日のシステム設計者が直面する高性能と高電力密度への絶え間ない要求により、小型で柔軟性があり、効率的なポイントオブロード・コンバータで電力チェーン全体の効率を最大限に高める必要性が出てきています。LTC3626は、広い入力電圧範囲、出力電流供給能力、柔軟な機能セット、非常に小さいフォーム・ファクタを兼ね備えているので、多くのポイントオブロード・レギュレータ・アプリケーションにおいて理想的な選択肢となります。