Op amp: オペアンプ

Op ampとは

意味

オペアンプは、信号の増幅と、インピーダンス変換のために使われる素子のことです。2本の差動入力とひとつのシングルエンド出力があり、ふたつの入力信号の電圧差を理想的には無限大に増幅して出力します。現実のオペアンプの特性としては、ゲインは無限大にはならないものの、DCで100dB以上という非常に大きな増幅率を持ち、これをオープンループ・ゲインと呼びます。このままでは使いにくいので、負帰還をかけて必要な増幅率(ゲイン)に設定して使用します。オペアンプは、帰還(フィードバック)をかけて使用することが前提のアンプ素子なのです。入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスが低いこともオペアンプの特徴です。入力インピーダンスが高いことで入力信号に対する感度が高くなり、入力に対する負荷としても最小限に抑えられます。出力インピーダンスが低いことで、電流による内部損失が発生しにくくなり、正確な出力電流を流せるようになります。

オペアンプの役割

オペアンプは周辺回路を適切に設計することで、さまざまな役割を持たせることができます。

信号増幅

オペアンプの最も重要な役割は、小さな信号を増幅して適切な信号レベルにすることです。電子回路においては、さまざまなセンサで物理現象を捉えて電気信号に変換し、プロセッサで処理を行います。しかし、センサなどの信号は微弱なことが多く、そのままでは信号を適切に処理することは困難です。オペアンプを使えば、ネガティブ・フィードバック(負帰還)回路を組むことで任意の増幅率を持たせて、信号を必要な強度まで増幅できるので、多くのアナログ回路で使われています。
またセンサ信号源のインピーダンスが高く、高インピーダンスの受信、低インピーダンス発信が必要なこともあります。このインピーダンス変換にもオペアンプは有益です。

周波数フィルタ

オペアンプは、必要な信号帯域を通過させて増幅し、それ以外の帯域を減衰させる周波数フィルタにも使われます。フィルタ回路は抵抗やコンデンサなど、受動素子の組み合わせでも作れますが、オペアンプを用いることで、フィルタ時に必要な信号を増幅するアクティブフィルタとしての機能を持たせることが可能です。

ADコンバータにおいてエイリアシング(信号の折り返し)の影響を抑えるためフィルタ(AAF)にも用いられています。

ドライバ・アンプ

データ・コンバータ(ADC,DAC)の入出力を駆動する場合、オペアンプ回路を使うと高性能を維持することができます。ダイナミックに変化するAD コンバータの入力の駆動や、DAコンバータ出力の増幅のために、オペアンプの低インピーダンス駆動が大変役に立ちます。また基準電圧(リファレンス)など、駆動能力が低い電圧源を低インピーダンス・高電流で駆動出力するバッファリングという用途にも最適です。

オペアンプの小史

オペアンプの歴史は、1920年代後半ベル研のハロルド・ブラックによる負帰還アンプの考案にまでさかのぼります。当初はオペアンプという名称はなく、フィードバックシステムを用いたアンプという形で研究が行われていました。また、当時は電子管が主流であり、現在では当たり前となっている差動入力方式ではなく、シングルエンド・モード動作のアンプでした。

オペアンプという名称が一般的になったのは、1947年にコロンビア大学のジョン・ラガツィーニ教授が発表した論文がきっかけです。その後も開発は盛んに行われ、1950年代から1960年代にかけて、電子管(真空管)オペアンプは技術的洗練の頂点を迎えます。

しかし、その頃には半導体(トランジスタ)技術の開発が始まっており、オペアンプにおいてもサイズと消費電力、電源電圧の小ささから個別半導体が採用されるようになります。さらに、間もなく集積回路の発展も始まり、1963年にフェアチャイルド社ボブ・ワイドラーによって最初のモノリシックICオペアンプ(μA702)が誕生したのを皮切りに、現在の形のオペアンプが作られていくこととなりました。

オペアンプの構造

オペアンプ回路の構成は大きく入力ゲイン段、出力バッファ段に分かれています。オペアンプを理解する上で、入力段・出力段の動作は特に重要です。それぞれの回路構成を解説します。

入力ゲイン段

入力ゲイン段は、差動入力の電圧差を電流差として増幅する機能(そのためトランス・コンダクダンス段と呼ばれ、しばしばgm段とも呼ばれる)を持ち、バイポーラ・トランジスタの場合、以下の図のようにロングテイルド・ペアによって構成されるのが一般的です。

 

 

バイポーラ・トランジスタを組み合わせるだけの簡単な構造でありながら、集積回路として同一チップ上に構成するとオフセット電圧や入力オフセット電流が小さく、温度によるオフセットのドリフトも低く抑えられるなど、多くの利点を持っています。

ただしバイポーラ入力段は、バイアス電流が大きいといった短所もあるため、バイアス補償回路付きのものや、FET(CMOSを含む)入力段を使うことも行われます。

出力バッファ段

出力段は、オペアンプが後段に接続される負荷の影響を受けないようにする、バッファとしての機能を持ちます。基本的には、コンプリメンタリ構造の出力回路(NPN+PNPあるいはNch+Pch)となっています。

 

ただし、バイポーラ・トランジスタ回路では動作にVBEが必要なため、出力信号の振幅は電源電圧より小さくなってしまいます。そこで出力トランジスタをコレクタ・フォロアにしたり、CMOSトラジスタを用いるなどして、ほぼレールtoレール出力とするオペアンプも存在します。

 

オペアンプ動作の基礎

オペアンプは単体で使われるわけではなく、フィードバック回路に接続されることを前提に作られていますが、基本的な回路構成は次の3種類です。いかにそれらを紹介します。

非反転増幅回路

非反転増幅回路は、入力信号と出力信号が同一極性で、1倍以上の任意のゲインを持たせることができるフィードバック回路です。理想的な非反転増幅回路のゲインGは以下の式で表せます。

G =(RF+RG)/RG

なお、RGを取り去ってオープンの状態にすると、この非反転増幅器のゲインは1となります。この状態のことをユニティ・ゲイン・アンプ(ボルテージ・フォロワ)と呼び、信号源のバッファ・アンプとしてよく用いられます。

参照:Non-Inverting Op Amp

反転増幅回路

 

反転増幅回路は、非反転増幅回路と非常によく似た増幅回路です。入力電圧がRGの一端に印加され、オペアンプの+入力端子がグラウンドに接続されているという違いがあり、これにより出力が入力の極性が反転するという特徴を持ちます。

増幅率GはRFとRGの抵抗値の比によって自由に設定でき、理想的には以下の計算式で示されます。

G=-RF/RG

反転増幅回路はオペアンプの回路構成のなかでもっとも有用なものの一つです。ただ、入力電圧に対するインピーダンスがRGに依存するため、入力インピーダンスは比較的小さくなってしまうという特性を持っています。

参照:Inverting Op Amp

差動増幅回路

 

差動増幅回路は、2つの入力信号の差分を増幅するために使われる回路です。RF/RF'=RG/RG'となることで正常に動く回路で、増幅率はRG、RF(RG‘、RF’)を変化させることで自由に設定できます。

G=RG/RF

差動増幅回路の特徴は、V1やV2に共通して重畳している電圧(同相電圧)を取り除けることです。ただし、フィードバックネットワークの抵抗値が精度よくマッチングしている必要があるため、設計時に注意が必要です

なおこの回路は、別の形式の差動アンプ(Differential Amp)と区別するため、差電圧アンプ(Difference Amp)と呼ばれることがあります。

参照:Differential Amplifier

同義語

オペアンプ、operational amplifier、オペレーショナル・アンプリファイア、演算増幅器
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