プッシュアンドホールド制御設定調整用のディジタルポテンショメータの使用方法
要約
温度、バックライト輝度、および電源電圧を調整するユーザインタフェースが必要な多くのデバイスは、設定に対する意図しない調整にさらされています。ディジタルポテンショメータをこれらのデバイスで使用すると、設計者は簡単なハードウェアベースの方式を実装して、こうした意図しない調整を回避することができます。
概要
マイクロプロセッサを使って、制御入力をデバウンスし、設定に対する意図しない調整を防止するのに必要な調整前の遅延スイッチを追加するルーチンを記述することができます。ただし、マイクロプロセッサを使って使いやすい制御調整を実装するには、コード設計および検証の長いプロセスが必要になる場合があります。これに対して、このアプリケーションノートに示される設計はディジタルポテンショメータを使って、制御調整を本当に望む場合に限り制御調整を行うようにする簡易なハードウェアベースの方式を実装します。
プッシュアンドホールド制御設定調整の実装
図1は、このアプリケーションノートで実装される設計の回路図を示しています。この設計によって、ユーザは使いやすいインタフェースを通じて制御設定値をインクリメント/デクリメントすることができます。この設計では、遅延延長、マニュアルリセットデバイス(U1、MAX6343)を使ってわずらわしいスイッチの入力を回避し、32タップ、不揮発性ディジタルポテンショメータ(U2、MAX5471)を使って制御設定VADJをインクリメント/デクリメントすることができます。VADJを電源またはバックライトコンバータのフィードバックループで使用するか、またはA/Dコンバータで直接読み取ることができます。
ユーザインタフェース用に、スイッチS2を最初に使って、インクリメントまたはデクリメントコマンドを選択することができます。S1を押し、そのまま保持すると、プロセスが開始します。
MAX6343のMR入力には、有効なMR信号が検出されるまでに公称6.7秒のセットアップ時間が必要です。したがって、ユーザがS1を押し、そのまま保持した6.7秒後に、RESETはローになります。
MAX5471のINC端子のハイからローへの遷移によって、ディジタルポテンショメータは可変抵抗の出力を直前の値の1/32だけインクリメントまたはデクリメントします(MAX5471は不揮発性メモリを内蔵しているため、直前の設定値が電源オフ状態後でもメモリ内に残ります)。
ユーザが調整を行うのにS1を「タップ」する必要性をなくすために、リセットまたはインクリメント/デクリメントコマンドの6.7秒後にMAX6343のタイマをリセットするトランジスタQ1が追加されました。このため、ユーザは、希望する設定(VADJレベル)が実現するまで、S1を保持します。この設計では、6.7秒ごとに1回設定値をインクリメント/デクリメントします。MAX6343のMR入力は50kΩのプルアップ抵抗を備えているため、Q1はMMBT3904のような汎用NPNを使用することができ、R1の200kΩによってRESETがハイになるとトランジスタが飽和します。
図1は、MAX5471 (RADJ)の可変抵抗と直列の抵抗R3およびR4を使用する標準フィードバック回路を示しています。実際の実装によって選択値が決まりますが、R3 = R4 = 200kΩの場合は、次式を使ってVADJを求めることができます。
VADJ = ((RADJ + R4)/(R3 + R4 + RADJ)) x 3.3V
RADJ = 0Ω (最低設定値)の場合は、VADJ = 1.65V
RADJ = 50Ω (最大設定値)の場合は、VADJ = 1.83V
その結果、(1.83 - 1.65)/32 (ステップ) = 5.7mV/ステップ
まとめ
このアプリケーションノートで説明する回路を実装することで、簡易なハードウェアベース方式の採用で、設定値を制御するわずらわしいユーザ調整の問題を回避することができます。これで、ユーザがインクリメント/デクリメント制御を選択し、S1を押してそのまま保持する必要があり、これによってゆっくりとした使いやすい制御調整が実現します。