DN-157: タンタルや電解出力コンデンサが不要な超高速リニア・レギュレータ

はじめに

動作周波数が200MHz以上のマイクロ・プロセッサには、大電流、厳密な許容差、高速過渡応答の電源が必要です。負荷過渡が高速の場合、安定化を維持するために大容量の出力コンデンサが必要で、コストが増大します。表面実装型タンタル・コンデンサは価格が高く、高信頼性性能を得るには電圧のディレーティングが必要です。電解コンデンサは物理的寸法が大きく、経年変化によりESRが増加します。したがって、過渡応答と安定化性能が低下します。

利益追求のために、出力コンデンサ容量を減らし、真の安定化のための必要条件を無視しているメーカもあります。多くの電源はWindows®95が複数回ブートすれば信頼できると見なされています。マザーボードのほとんどは90日間しか保証されていません。LTCは多くのシステム・クラッシュ(ソフトのせいにされている)は、電源安定化の不良によるものと考えています。この問題に対処するために、リニアテクノロジーはLT®1575/1577を紹介します。 

新型LTCレギュレータ・コントローラ

LT1575/1577コントローラICファミリは、ディスクリートNチャネルMOSFETをドライブして低ドロップアウトを生成するUltraFast過渡応答レギュレータです。これらのICはすべてのDC許容差に対して1%の標準性能を達成しています。卓越した過渡負荷性能により、大容量出力コンデンサが不要です。LT1577を使用したP55C Pentium®プロッセッサ電源は、マイクロプロセッサ・コアに必要な24個の1µF高周波デカップリング用セラミック・コンデンサだけで動作します。

可変電圧バージョンと固定電圧バージョンが用意されており、どのマイクロプロセッサ電圧にも対応できます。MOSFETのRDS(ON)を選択すれば、ドロップアウト電圧性能をユーザが設定できます。これらのコントローラは、電流制限、ON/OFF制御および過電圧保護、あるいはサーマル・シャットダウン機能も備えています。シングルLT1575は8ピンSOまたはPDIP、デュアルLT1577は16ピン細型SOパッケージで供給されます。

図1に、P54C/P55C Pentiumプロセッサのオートセレクト回路用の固定3.3Vおよび可変電圧レギュレータ付きLT1577アプリケーションを示します。P54C Pentiumプロセッサ・コアとI/O回路は3.5V、P55C PentiumプロセッサのI/Oは3.3V、コアは2.8Vで動作します。

図1.LT1577 P54C/P55C Pentiumプロセッサ用オートセレクト回路

図1.LT1577 P54C/P55C Pentiumプロセッサ用オートセレクト回路

VCC2DETの信号によって回路動作が決まります。P54C回路では、VCC2DETを開放し、コアとI/O電源プレーンを一緒に接続します。Q1がターンオンし、Q3(IRFZ34)レギュレータは出力を3.5Vに制御します。Q2(IRFZ14)レギュレータは出力を3.3Vに制御しようとしますが、帰還ピン(ピン4)は3.5Vを検知して、Q2をターンオフします。Q3はすべてのコアおよびI/O電源を供給します。

P55Cの回路では、VCC2DETが接地され、コアおよびI/O電源プレーンが分離されます。Q2はI/O電圧を3.3Vに制御し、Q3はコア電圧を2.8Vに制御します。I/O回路に必要な電流は少ないのでQ2には低コストのMOSFETを使用でき、出力容量を低減できます。

電流制限センス抵抗は“余分な”PCBのトレースで作られています。Q2とQ3はドレインが共通に接続されているため同じヒート・シンクに実装可能です。COMPピンの部品は、使用するMOSFETと出力コンデンサに応じて各レギュレータの周波数補償を調整します。

図2にP55C構成で、負荷電流が4.8A変化した場合のコア・レギュレータの過渡応答を示します。この補償によってオーバシュート/アンダシュートが50mVに制限されます。VREプロセッサに対する±100mVの許容誤差は容易に達成できます。オートセレクト・コンセプトは、各種のプロセッサが必要とする多様な電圧に対応して容易に拡張できます。詳細は当社に問い合わせください。

図2. 0.2Aから5Aの出力負荷変動に対する過渡応答

図2. 0.2Aから5Aの出力負荷変動に対する過渡応答

図3にLT1575をLTC®1435同期型降圧レギュレータのポスト・レギュレータとして使用して、総合効率72%で12Vから3.3Vを生成する3.3V/14Aのロジック電源を示します。LT1575はパス・トランジスタとしてIRLZ44を使用し、550mV以下のドロップアウト電圧を達成しています。このスイッチング・レギュレータの出力は4Vに設定されています。

図3. 12Vから3.3V/9A(最大14A)のハイブリッド・レギュレータ

図3. 12Vから3.3V/9A(最大14A)のハイブリッド・レギュレータ

図4に立上り/立下り時間が50nsで負荷電流ステップが10Aの場合の過渡応答を示します。必要な出力コンデンサは1µFの表面実装型のセラミック・コンデンサが40個だけです。この回路では、リニア・レギュレータを使用しない場合に必要な多数の低ESRのタンタル・コンデンサが不要になります。 

図4. 図3の回路で負荷電流が10A変化したときの過渡応答

図4. 図3の回路で負荷電流が10A変化したときの過渡応答

まとめ

LT1575/LT1577は低ドロップアウト、高精度の性能、超高速過渡応答そして出力コンデンサの大幅なコスト削減の利点を併せ持っています。LT1575/1577コントローラICは、マザーボードのデザイナの要求する次世代性能レベルにステップします。

著者

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Tony Bonte