2線式バス用立上り時間アクセラレータ回路
要約
I²CまたはSMBus™等の2線式バスを含むアプリケーションでは立上り時間、消費電力とノイズ耐性の間でトレードオフを必要とします。それはローからハイに遷移する立上り時間が、オープンドレインのバス上ではプルアップ抵抗とバスの静電容量によって決定される為、周辺装置、引き廻しパターン、およびコネクタを追加する時にきれいで速いエッジを維持することが困難です。これら立上がり時間の問題に対処するため、このアプリケーションノートでは立上がり時間の高速化、ノイズ耐性の改善、消費電力の最小化に簡単な方法を提供する事が出来る立上り時間アクセラレータ回路を示します。
回路説明
いくつかの2線式バスのアプリケーションにおいて正しく設定されたプルアップ抵抗は許容される消費電力で優れたノイズ耐性と十分速い立上り時間を提供する事が出来ます。しかし、大きいバス静電容量を持つ大きなシステムや厳しい電源条件を要求するポータブルシステムではオープンドレイン信号に対してはより短い立上り時間を達成するためにアクティブ回路を必要とするかもしれません。
図1はノイズ耐性を高めて消費電力を最小化すると同時に立上り時間を速めるためにMAX3373を使った立上り時間アクセラレータ回路を示しています。ここではMAX3373の低電圧のレベル変換器は、変換器の機能というよりも立上り時間を加速するために使われています。このICはI/Oピン上で電圧上昇を検出した時にアクセラレータ回路は内部の強力プルアップ(pFET)を短時間オンさせてバスの寄生静電容量をチャージします。アクセラレータ回路はそのすぐ後、ハイのロジックレベルを維持するために内部の10kΩのプルアップ抵抗(それと任意の外部プルアップ)だけにしてオフにされます。
性能評価
立上り時間アクセラレータとしてのMAX3373の有効性は図2の回路でテストします。この回路では、ディスクリートのオープンドレインのFETが2つの別々のラインを同時にドライブしています。チャネル1はMAX3373で加速されており、チャネル2は単純なプルアップ抵抗と寄生容量で終端されています (Cは両ラインとも同じ値) 。 MAX3373が使用するプルアップ抵抗は内部の入力と出力(I/O VCCとI/O VLピン)の10kΩのプルアップ抵抗による5kΩだけです。結果は110pFの良い条件の場合(図3)と、I²Cバスに許された最大400pFの場合(図4)が示されています。(図の中で時間軸の違いに注意して下さい。)
MAX3373の回路による優位性を判定するために2線式バスを共通のクロック速度100KHzと400KHzで検討します。100kHzの周期は10µsでハイ状態の期間は単に5µsです。次のように110pFの静電容量と5kΩのプルアップ(図3)における立上り時間は1.25µsで1周期のわずか12%なので性能は立上り時間の加速なしで許容できます。
しかし、400pFの寄生容量の場合は、立上り時間は4µsで、それは周期の40%であり、多くの100kHzのシステムの中では許容不可能です。400pFのシステムの中で立上がり時間を加速するためにMAX3373を使うことは500ns以内で90%の立ち上がりをもたらし、10µsの周期でのわずか5%です(図4)。
400kHzのバス(2.5µsの期間に1.25µsのハイ状態を与える)の場合、5kΩと110pFの上記条件は単に1.25µsとなるが、周期の50%になり許容不可能な立上り時間となる。 400pFまで静電容量を上げると立上がり時間が5µsとなり、周期の2倍となるためはっきりと許容不可能となる。しかし、110pFの容量負荷にMAX3373回路を使うことによって250ns以内に90%の立上がり時間を与え、それは2.5µsの周期のわずか10%の時間となり400pFではたった500nsもしくは周期の20%です。
要約
立上がり時間アクセラレータとしてMAX3373の使用は2線式バスにおいて立上がり時間とクロックの問題を解決する幾つかの方法の一つです。ある場合にはプルアップ抵抗を下げるだけで単純に立上がり時間を速める事が出来ますが、MAX3373はノイズ耐性と消費電力を改善しながら立上がり時間を速める事が出来る単純な方法を提案します。
同様の記事が「Planet Analog」誌(「EE Times」誌の増刊号)の2006年5月24日に掲載されています。