DN-303: フォトフラッシュ・コンデンサ・チャージャによる高速高効率充電と低バッテリ電流の実現
はじめに
LT®3420は(デジタル・カメラやフィルム・カメラのストロボ・フラッシュに使用されるような)大きな値のコンデンサの高電圧充電用に設計されています。これらのフォトフラッシュ(ストロボ)コンデンサの値の範囲は100マイクロファラッドから1ミリファラッドを超え、目的の出力電圧は300Vを超えます。従来のストロボ・コンデンサの充電方法は効率が良くないか、ソフトウェアのオーバヘッドを必要とします。LT3420は小型で使いやすく効率の良いチャージャを実現します。ソフトウェアが不要で、スペースを節約し、バッテリ寿命を延ばし、設計に費やす時間とコストを減らします。
LT3420チャージャ回路は標準で75%を超す効率を達成します。LT3420は自動コンデンサ充電リフレッシュのような重要な機能や制御用/表示用ピンを備えているので柔軟性に富み、簡単に使えます。多様性を備えているので、(下に説明されている)マイクロプロセッサによって完全に制御されるアプリケーションだけでなく、簡単なスタンドアローンのフォトフラッシュ・チャージャを必要とするアプリケーションにも使用することができます。高電圧出力に電圧分割器は不要です。
220μFのフォトフラッシュ・コンデンサを5Vの入力から320Vまで3.5秒で充電できる標準的なLT3420回路を図1aに示します。バッテリ電圧の関数としての充電時間を図1bに示します。図1aのC4の右側の回路は、フォトフラッシュ・コンデンサが充電されると光パルスを発生する標準的な方法を示しています。SCRが作動すると、キセノン管のガラス管に沿ったフライング・リードの電位は数キロボルトに達します。このため、キセノン管内部のガスがイオン化され、管内部に低インピーダンスの経路が形成されます。フォトフラッシュ・コンデンサに蓄えられたエネルギーは急速にキセノン管を流れ、フラッシュ撮影に必要な強い光を発生します。
特長
LT3420には1.4Aのパワースイッチが内蔵されており、特許出願中の制御方式が採用されています。トランスの1次側電流と2次側電流の両方を検出してスイッチング電流を精密に制御するので、バッテリの寿命が延びます。図1aの回路で出力が300Vに達したときの関連波形を図2に示します。1次側ピーク電流は1.4A(標準)に制限されていますが、パワースイッチがターンオンするときの1次側電流は480mA(標準)です。連続導通モード(CCM)でデバイスを動作させると、充電時間が最短になります。出力電圧はトランスの1次側のフライバック波形(図2のVSW)によって検出されます。目的の出力電圧は2個の抵抗R1とR2によって制御されます。このフライバック検出方式により高電圧出力からグランドに接続する抵抗分割器回路が不要になるので、多くの競合するフラッシュ・モジュールで見られるこの部分の電力損失が生じません。
目的の電圧に達すると、デバイスはリフレッシュ・モードに入り、デバイスの消費電流は90μA(標準)に減少します。LT3420はユーザーがプログラム可能なリフレッシュ・タイマを内蔵しています。C3の値により、その時間が経過するとデバイスがリフレッシュ・モードから出て、出力を目標の電圧に再充電する時間の長さが定まります。この過程を繰り返して、出力を望みの電圧に保ちます。シャットダウンから充電、さらにリフレッシュまで、LT3420の異なった動作モードを図3に示します。
マイクロコントローラへのインタフェース
LT3420はデジタル・カメラのマイクロコントローラに簡単にインタフェースすることができます。CHARGEピンとDONEピンはそれぞれデバイスの制御ピンとモード表示ピンです。これらのピンを使って、いつでも選択的にLT3420をディスエーブルしたり、イネーブルしたりすることができます。図4は、充電サイクルの中途でCHARGEピンが"L"に引き下げられ、LT3420が選択的にディスエーブルされたところを示しています。これは、デジタル・カメラの敏感な操作をおこなうときに必要になることがあります。CHARGEピンを"H"状態に戻すと、充電は中断したところから継続されます。
まとめ
LT3420はフォトフラッシュ・コンデンサの充電用の高効率で高度に集積化されたスタンドアローン型ソリューションを提供します。自動リフレッシュ、厳密な電流制御、内蔵パワースイッチなど、重要な多くの機能がデバイスに内蔵されているので、外付け部品点数が少なくてすみます。LT3420は小型で低いプロフィールのMSOP-10ピン・パッケージで供給されるので、従来の方法に較べてソリューション全体の実装面積が大幅に小さくなります。