サーマルダイオード温度センサをMAX6642に変更

要約

MAX6642は、高性能で低コストのリモート/ローカル温度センサです。MAX1617MAX6657などの旧型の温度センサをMAX6642に置き換えるときには、以下のガイドラインを参考にしてください。

レイアウトの変更

MAX1617やMAX6654をはじめとする、ほとんどのサーマルダイオード温度センサは、ダイオードへの接続箇所が2つあります。すなわちDXPとDXNです。DXPは、サーマルダイオードのアノードに接続され、ダイオードバイアス電流を供給します。DXNは、バイアス電流をシンクし、カソードに約0.7Vのバイアスをかけます。

基本の接続方式を図1に示します。ターゲットICとしては、チップ温度を検出するためにダイオード接続のトランジスタを備えたCPU、FPGA、またはASICがあります。

図1. MAX1617またはMAX6657をサーマルダイオードに接続する

図1. MAX1617またはMAX6657をサーマルダイオードに接続する

MAX6642には、サーマルダイオードのアノードへのDXP接続のみが備わっています。DXNはありません。代わりにカソードが直接グランドに接続されています。これによって、基板レイアウトは、図2に示すようなレイアウトに変更されます。GNDは、電源グランドとカソード接続の両方の機能を果たすため、サーマルダイオードのカソードは、図2に示すようにMAX6642のグランドにのみ接続する必要があることに留意してください。サーマルダイオードとMAX6642の間には、他のグランドトレースによる接続がないようにしてください。トレースを流れるグランド電流によって生じる小さな電圧降下は、温度の読取り値の精度に影響するおそれがあるからです。

図2. MAX6642を外付けのサーマルダイオードに接続

図2. MAX6642を外付けのサーマルダイオードに接続

レジスタの変更

MAX6642は、MAX1617やMAX6654など、他の多くのリモート温度センサよりも簡単なレジスタセットを備えています。これは製品データシートを調べることによって確認することができます。ただし、ほとんどのディジタル温度センサの代表となるのがMAX1617であるため、一般的な違いを示す良い例として、以下ではMAX6642とMAX1617の違いについての概要を説明します。


ローカルとリモートの温度レジスタ


これらのレジスタは、MAX6642とMAX1617の同じアドレスに存在します。0°C~+127°Cの温度では、MAX6642の温度データフォーマットは他のセンサのデータフォーマットと同じです。ただし、負の温度を測定してデータを2の補数フォーマットに保存するMAX1617とは異なり、MAX6642はMSBを使用して最大+150°Cまでの温度を測定しますが、負の温度は測定しません。


設定レジスタ


MAX1617の設定レジスタには、MaskビットとStop/Runビットだけが含まれています。MAX6642は、これらのビットの他に2つのビットを備えています。すなわちExternal Only (内部(ローカル)温度センサをディセーブルする)とFault Queue (2つの連続した温度障害が検出されるとALERT#出力をアサートする)です。


THIGHとTLOW


MAX1617では、測定温度がTHIGH限度を超えるとき、またはTLOW限度を下回るときにALERTがアサートされます。MAX6642には上限しかありません。


変換レート


MAX1617は、温度変換レートをいくつかある値のうちの1つに設定することが可能な「変換レート」レジスタを備えています。このレジスタは、MAX6642では無効で、固定変換レートが1つ存在するだけです。


拡張温度レジスタ


MAX1617の温度分解能は1°Cです。MAX6642の分解能は0.25°Cです。MAX6642の拡張温度レジスタでは、リモートとローカルの測定温度のLSBを利用することができます。

結論

上記のガイドラインで説明したように、MAX6642はレイアウトとソフトウェアの簡単な変更をいくつか行うことで業界標準の温度センサに取って代わることができます。MAX6642の使用方法の詳細については、データシートを参照してください。