MAX9259のGMSLラインフォルト検出

要約

このアプリケーションノートは、シリアライザ/デシリアライザ(SerDes)のアプリケーションでシリアルリンクのラインフォルト(例えばラインショート)を検出する簡単な方法を記載します。ここに記載されるアプローチは、シリアライザに内蔵されたモニタリング回路、外部nチャネルMOSFET (またはアナログスイッチ)、および抵抗ネットワークを使用します。MAX9259のギガビットマルチメディアシリアルリンク(GMSL)について紹介しています。

MAX9259は、電源(または自動車のバッテリ)へのラインショート、グランドへのショート、またはオープンラインなどのシリアルリンク障害を検出するための、ラインフォルトモニタ回路を内蔵しています。MAX9259のデータシートにあるように、図1はオリジナル回路と必要な外付け抵抗を示します。

図1. オリジナルラインフォルト検出回路

図1. オリジナルラインフォルト検出回路

2つの追加部品によって、ラインフォルトモニタの適用範囲を拡大することができ、ツイストペアケーブル(図2)の短絡回路もまた検出することができます。

図2. ラインフォルト検出回路が短絡回路を検出

図2. ラインフォルト検出回路が短絡回路を検出

新しい、改良された回路(図2)は4.99kΩ抵抗を2つに分けます。1つの抵抗は2.0kΩ (R4)、そしてもう1つは3.01kΩ (R5)です。nチャネルMOSFET (Q1)はスイッチとして追加されます。Q1のドレインは、R4とR5の間のノードに接続されます。Q1のソースはグランドに接続されます。

信号LINE_DIAG (Q1のゲートに接続)がローに移行すると、Q1はオフになります。この新しい回路の機能は図1に示されるオリジナル回路とまさに同じですが、ツイストペアケーブルの短絡回路検出が付け加えられています。

LINE_DIAGがハイに移行すると、Q1はオンになり、R4とR5の間のノードはグランドに接続されます。

ツイストペアケーブルの2本のワイヤ間に短絡がなければ、Q1はR4とR5の間のノードをグランドに接続します。その結果として生じる回路の図3は、図2の簡易版です。

この状態の下で、LMN1のレベルだけがQ1による影響を受けます。LMN0の電圧はまだ正常レベルです。しかし、供給電圧が1.7Vと1.9Vの間にあって、LMN1の電圧はグランド短絡状態を検出するのに十分低くなります。その結果、MAX9259アクティブローLFLT出力はローに移行します。0x08レジスタのビットD[1:0]はLFPOS = 10 (標準)となり、ビットD[3:2]はLFNEG = 01 (グランド短絡)となります。

図3. 短絡なし

図3. 短絡なし

図4. 短絡検出時

図4. 短絡検出時

ツイストペアケーブルの2本のワイヤが一緒に短絡すると、図2の回路は図4に示されるものと同等になります。Q1は同じノードをグランドに接続しますが、ツイストペアケーブルが短絡しているので、LMN0の電圧レベルに影響を及ぼします。

1.7V~1.9Vの供給電圧で、LMN0とLMN1の電圧がMAX9259データシートに記載されるグランド短絡スレッショルドの最大値0.3V以下になります。その結果、MAX9259のアクティブローLFLT出力はローに移行します。0x08レジスタのビットD[1:0]はLFPOS = 01 (グランド短絡)となり、ビットD[3:2]はLFNEG = 01 (グランド短絡)となります。

MOSFETのリーク電流(ゲート電圧が0V時のドレイン電流、IDSS)はこのアプリケーションノートに示される回路の適切な動作のための重要な要因です。適正動作のためには、これは、アプリケーションで要求される温度範囲においてVDS = 1Vで3µAを超えてはいけません。MOSFETのオン抵抗も重要で、VGS = 1.7Vで20Ωを超えてはいけません。

同様に抵抗器ペアのマッチングも重要です。図2に示される回路で、R1はR2と等しく、R3はR4 + R5と等しく、そして、R6はR7と等しくなければなりません。

LMN0とLMN1の内部レジスタとラインフォルトスレッショルド値の詳細はMAX9259のデータシートを参照してください。

ほとんどのデバイスが、ここにある回路とは異なる条件下で規定されたリークを持つため、(必要であれば)車載用に認定され、十分に低いリークを備えるMOSFETを見つけるのは困難です。ON Semiconductor®のBSS138LT1、Fairchild™のFDG327NZ/FDZ372NZなどのMOSFETが考えられます。これらの製品のデータシートは室温のみのリーク電流を規定していますが、これらのメーカーのテストデータは、-40℃、室温、および+150℃のリーク電流は3µAを超えないことを示しています。

MOSFETの代替となるのは図5に示すように、アナログスイッチです。CD4066を基にしたシングルゲートデバイスは、xxx1G66 (NXP®のNX3L1G66など)という型番として広く入手可能です。これらのデバイスは、ここで示されたような完全自動車用温度範囲の回路用に広く特性化されたリーク電流を備えています。

図5. アナログスイッチを使ったラインフォルト検出回路

図5. アナログスイッチを使ったラインフォルト検出回路