DN-552: 最大 50V の入力電圧で 4A 出力に対応する反転レギュレータ

はじめに

正電圧から負電圧への DC/DC 変換(反転出力)は、LCD デバイス、OLED ディスプレイ、オーディオ・アンプ、産業用機器、測定ツール、試験システム、LEDドライバ、バッテリ・チャージャなどでよく使用されています。これらすべてのケースにおいて、反転コンバータは、小型で、高電力をサポートし、広い入力電圧範囲に対応している必要があります。そのすべての要件に対応するのが、LTC®7149 です。内蔵の 4A スイッチと 3.4V ~ 60V の幅広い入力電圧範囲は、自動車アプリケーションを含む、極めて要求が厳しいアプリケーションの要件を満たしています。 

回路の説明と機能

図 1 は、LTC7149 をベースに構成した正電圧から負電圧へのコンバータを示します。このソリューションでは、12V の入力電圧(自動車用レールなど)から–10V/2A を出力します。パワー・トレイン部品は、公称 12V 入力のために選定されていますが、適切なディレーティングをすることで、このアプリケーションの入力電圧は最低 4V、最高 50V に調整できます。 

図 1. LTC7149、正電圧から負電圧へのコンバータ(VIN:4V ~ 50V、VOUT:–10V/2A)
図 1. LTC7149、正電圧から負電圧へのコンバータ(VIN:4V ~ 50V、VOUT:–10V/2A)

自動車アプリケーションでは、LTC7149 で高い入力電圧を処理できるため、高価な電圧サプレッサが不要になります。最小入力電圧が極めて低いため、コールドクランク時にも、デリケートなシステムの動作を継続できます。LTC7149 の周囲のコンポーネントにかかる電圧および電流ストレスを計算するための指針は、LTC7149 のデータシートに詳しく解説されています。たとえば、入力電圧が 12V 未満であるときの出力電流のディレーティングを図 2 に示します。 

図 2. 図 1 の出力電流ディレーティングと入力電圧
図 2. 図 1 の出力電流ディレーティングと入力電圧

図 1 の回路には、外部ループ補償が使われています。ITH を INTVCC に接続すると、内部補償を使用できます(図 3 を参照)。MODE/SYNC を GND に接続することで、Burst Mode® 動作がアクティブになります。必要な場合、このピンに、GND を基準とする同期パルスを印加できます。このソリューションの効率は94% に達します。

電圧制御された可変の負電圧出力回路

LCD モニター、OLED モニター、試験装置システムなど、非常に多くのアプリケーションにおいて、負のバイアス電圧をその場で変更できる必要があります。LTC7149 には、その作業を簡単に行うための機能が搭載されています。

図 3 は、負の出力が正の信号電圧によって制御されている、負の電圧源を示しています。GND を基準とする正の制御電圧が VOUTSNS ピンに印加されます。図 3 において、これは 0V ~ 5V の VCTRL です。出力される負電圧、VOUT– は、次式で決定されます。

VOUT– = –50μA • RSET + VCTRL

図 3. VOUT– 可変(–5V ~ –10V)の正電圧から負電圧へのコンバータ
図 3. VOUT– 可変(–5V ~ –10V)の正電圧から負電圧へのコンバータ

ローパス・フィルタ RF/CF によって、ノイズが防止されます。VOUTSNSピンは、いかなる場合においてもフロート状態にしてはなりません。このピンには、常に、いくらかの電圧電位がかかっている必要があります。システムの試験中など、この要件を満たすことができない場合、抵抗 RP を配置する必要があります。

図 4 は、VCTRL の関数としての VOUT– を示します。図5のVCTRL 電圧が 2.5V の振幅を持つ正弦波になることから、このアプローチが幅広いアプリケーションに適用できることが分かります。

図 4. VCTRL の線形関数として 可変の負出力 VOUT–
図 4. VCTRL の線形関数として可変の負出力 VOUT–
図 5.VCTRL の正弦波に従う可変の負出力 VOUT–
図 5.VCTRL の正弦波に従う可変の負出力 VOUT–

まとめ

LTC7149 は、負電源出力用の高効率な 50V/4A 同期整流式モノリシック・レギュレータです。幅広いレンジの入力電圧および出力電圧と、内蔵のスイッチング・トランジスタの組み合わせでコンバータ設計が単純化されます。本デザインノートで解説するソリューションおよび回路は、自動車、産業用アプリケーション、ディスプレイ、モニター・システムで本レギュレータを実装するのに役立ちます。

著者

Victor Khasiev

Victor Khasiev

Victor Khasievは、アナログ・デバイセズのシニア・アプリケーション・エンジニアです。パワー・エレクトロニクスの分野を担当しており、AC/DC変換とDC/DC変換の両方に関する豊富な経験を持ちます。また、車載用途や産業用途をターゲットとするアナログ・デバイセズのIC製品の使い方に関して、複数の記事を執筆しています。それらの記事では、昇圧、降圧、SEPIC、反転、負電圧、フライバック、フォワードに対応するコンバータや、双方向バックアップ電源などを取り上げています。効果的な力率改善の手法と高度なゲート・ドライバに関して2件の特許を保有しています。日々の業務では、製品に関する質問への回答を通じた顧客のサポート、電源回路の設計/検証、プリント回路基板のレイアウト、システムの最終テストの実行とトラブルシューティングなどに取り組んでいます。