DN-344:フライバック・コントローラによる複数出力アプリケーションのクロス・レギュレーションの改善

はじめに

フライバック・コンバータは複数の出力電圧で低出力電力から中出力電力を必要とする電源にしばしば使用されます。フライバックを使うと複数出力でも追加コストがほとんどかからず、複雑さもほとんど変わりません。追加される出力ごとに別のトランス巻線、整流器、および出力フィルタ用コンデンサが必要なだけです。Power over Ethernet (PoE)のアプリケーションはいくつかの低電力ないし中電力の出力を必要とすることがあり、複数出力のフライバック・コンバータが使える可能性が高くなります。

複数出力のフライバック・コンバータは簡単で安価ですが、しばしばクロス・レギュレーションが良くなく問題となります。一般にひとつの出力はフィードバックを介して厳密に安定化されますが、残りの出力は精度が劣るトランス機能によって制御されます。ショットキー・ダイオードの電圧降下、トランスの漏れインダクタンス、およびトランスの巻線抵抗によりレギュレーションが低下します。

また、整流器がオフしているとき出力がカップリングされない状態に留まるため、クロス・レギュレーションがさらに低下します。

LTC®3806は最新のフライバック・コントローラで、複数出力のフライバック・コンバータのロード・レギュレーションとクロス・レギュレーションを改善します。以前はポスト・レギュレータ、複数のスイッチング電源、または他の方法を使って出力電圧の許容誤差を厳しく制御していた複数出力システムに、今では低コストのフライバック・コンバータを使用することができます。LTC3806には強制連続導通動作が使われており、各電力変換サイクルの大きな部分で整流器をオン状態に保ち、出力を(トランス動作を介して)カップリングされた状態に保つことによりクロス・レギュレーションを改善します。LTC3806は同期式整流も使って整流器の電圧降下を減らし、コンバータの効率とロード・レギュレーションを改善します。

改善されたロード・レギュレーションとクロス・レギュレーション

LTC3806の特長をフルに活用した複数出力のフライバック・コンバータを図1に示します。このデザインの性能を、Q2をSL13ショットキー整流器で置き換え、Q3とQ4をB540Cショットキー整流器で置き換えて構成された非同期式のものと比較しました。

図1.複数出力の同期整流式フライバック・コンバータ

図1.複数出力の同期整流式フライバック・コンバータ

他のすべての出力が最大出力電流を供給している状態でひとつの出力を無負荷から最大出力電流まで変化させてロード・レギュレーションを測定しました。ロード・レギュレーションが同期式デザインでどれだけ改善されるかを表1に示します。非同期式デザインの出力1と出力4のロード・レギュレーションは最大出力電流の20%~100%の範囲でしか与えられていません。これは最大出力電流の20%以下ではロード・レギュレーションが急速に悪化するためです。

表1.ロード・レギュレーション(% VOUT

OUTPUT 1 OUTPUT 2 OUTPUT 3 OUTPUT 4
Synchronous 7.86% 6.31% 1.39% 9.47%
Nonsynchronous 8.88% (20%-100% of IMAX) 6.42% 2.43% 10.32% (20%-100% of IMAX)

クロス・レギュレーションはロード・レギュレーションの測定と同じ条件で測定されました。同期式デザインのすぐれたクロス・レギュレーション性能を表2に示します。

表2.クロス・レギュレーション(% VOUT)(カッコ内は非同期の測定結果)
OUTPUT 1 OUTPUT 2 OUTPUT 3 OUTPUT 4
Swept* 0.87%
(2.02%) 
0.22%
(0.42%)
0.29%
(0.43%)
0.31%
(0.94%)
Swept 0.16%
(0.23%)
0.17%
(0.30%)
–5.49%
(–8.52%)
–4.88%
(–8.20%)
Swept –4.43%
(–8.61%)
–0.63%
(–0.36%)
–0.12%
(0.13%)
0.16%
(0.39%)
Swept*
*非同期式の場合はIMAXの20%~100%

ひとつの出力をスイープさせ、他のすべての出力を無負荷にしてロード・レギュレーションとクロス・レギュレーションを測定すると、同期式整流器を使用する論拠がさらに強くなります。同期式整流方式により十分なロード・レギュレーションとクロス・レギュレーションが得られますが、ショットキー・ダイオードによる整流方式では得られません。非同期デザインで十分なレギュレーションを得るには、すべての出力に最大IOUTの数パーセントの常設負荷が必要です。

効率

このデザインのピーク効率は最大出力電力の60%で87.6%です(図2)。このように高い効率は(特に低い出力電圧で)同期式整流によって実現される導通損失の大幅な減少によって可能です。最大負荷(21.4Wの全出力電力)では消費電力はわずか3.38Wです。非同期デザインの場合、ピーク効率は81.9%で、消費電力は5.31Wです。軽負荷でのレギュレーションが必要な場合、効率は常設負荷により78.9%に低下します。

図2.効率と出力電力

図2.効率と出力電力

複合フィードバックによる設計の柔軟性の向上

図1では、出力3だけがフィードバックによって制御され、残りの出力はトランスを介して設定されます。これら他の出力のロード・レギュレーションとクロス・レギュレーションを(出力3のロード・レギュレーションとクロス・レギュレーションの低下を代償としますが)さらに改善するには、オプションの抵抗R 1 、R 2 、およびR 5 を追加して複合フィードバックを利用することができます。

まとめ

LTC3806はPower over Ethernetデバイスなどの低電力ないし中電力のアプリケーション向けに魅力のある費用効果の高い複数出力のフライバック・コンバータを実現します。改善されたロード・レギュレーションとクロス・レギュレーションにより追加のスイッチング電源やポスト・レギュレータが不要になります。同期整流により効率が改善され、消費電力が減少します。

著者

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Tom Hack