ディジタルポテンショメータによる電圧-抵抗変換

要約

一対の同一ディジタルポテンショメータは電圧-抵抗コンバータを形成します。

産業用制御や可変バイアス回路で時々必要になる電圧-抵抗変換器は、実現するのに苦労する場合があります。図1の単純なアプローチでは、2個のディジタルポテンショメータを使用することで、この変換器を作っています。

図1. この回路は、同一のディジタルポテンショメータを2つ使うことによって電圧-抵抗変換を実現します。

図1. この回路は、同一のディジタルポテンショメータを2つ使うことによって電圧-抵抗変換を実現します。

ディジタルポテンショメータ(U1)とコンパレータ(U3)がディジタル式トラックアンドホールド回路を構成しており、U1が内部の電圧ディバイダを調節してVWIPERがVINに追従するようにします。したがってワイパ抵抗がVINに比例することになります。ディジタルポテンショメータ(U1およびU2)のディジタル入力は互いに接続されているため、U2のワイパ位置はU1と同じであり、対応する端子間の抵抗は等しくなります。こうして、出力抵抗値がVINに比例することになり、電圧-抵抗変換の要件が満たされます。

 

ディジタル式トラックアンドホールド動作は以下のようになります。VINに追従するため、クロックパルスが到着するたびにディジタルポテンショメータU1のワイパ(センタータップ)が上下に移動します。コンパレータU3がアナログ入力(VIN)をワイパ電圧(VWIPER)と比較します。もしVIN > VWIPERならコンパレータはロジックハイを出力し、その結果ワイパ位置が上昇して、VWIPERの値が増大します。VWIPERは、VINより大きくなるまで増大し続けます。そしてコンパレータがトグルし、ワイパ位置を下げ始めます。各クロックサイクルにおいて、ワイパは必要に応じて上または下に移動してVINに追従します。分圧器用の基準入力(VHとVL)で入力電圧範囲を設定します。VINの範囲が0V~5VDCであれば、VL = GND、VH = 5VDCに設定します。

U1とU2は同一でありディジタル入力が接続されているため、ワイパ位置が一致しています。LOCK入力にロジックローを入力すると、出力抵抗値がVINと一緒に変化します。また、ロジックハイを入力すると、抵抗値がいつまでもホールドされます。

LOCKを恒久的にグランドに接続することも考えられますが、その場合たとえVINが一定であっても、出力抵抗値は2つの連続した状態の間をトグルし続けることになります。たとえば、ポテンショメータが10kΩで、ワイパが5kΩにセットされている場合、出力抵抗値はクロックサイクルごとに5kΩと5.3125kΩの間をトグルすることになります。必要なら、出力ワイパにコンデンサを接続することで、そうした作用を除去することができます。100Hz~10kHzのクロック周波数が適当です。

出力抵抗値はVINに合わせて瞬時に変化するためではなく、何クロックサイクルかかけて最終的な値に到達します。クロックサイクルの数(最大32)は、最初のワイパ位置と入力電圧に依存します。

より高い分解能が必要な場合は、図1に示した5ビットのモデルの代わりに、6または8ビットのディジタルポテンショメータを使用してください。ただし、MAX5160はパワーアップリセット機能を備えており、ワイパ位置が中央にセットされるという点に注意してください。それによって、2つのディジタルポテンショメータが同じ抵抗値に同期できるわけです。起動時の出力抵抗値が分かっているディジタルポテンショメータを選んでください。

Electronic Design誌の2004年6月7日号に、この設計アイデアが掲載されました。