CCFLの特性

要約

冷陰極蛍光ランプ(CCFL)は、白色の光源として液晶ディスプレイ(LCD)のバックライトに使用されます。CCFLには優れた特性が多数備わっていますが、その有用性を最大化するためには、いくつかの固有の特性についても検討する必要があります。このアプリケーションノートでは、これら固有のCCFL特性についていくつか説明します。

はじめに

冷陰極蛍光ランプ(CCFL)は、不活性ガスで満たされた密閉ガラス管です。管の両端に高電圧が加えられると、ガスが電離し、紫外線(UV)が生成されます。この紫外線によって内側にコーティングされた蛍光体が励起され、可視光が生成されます。CCFLには、以下に示すように、多くの優れた特性があります。

  • 優れた白色光源
  • 低コスト
  • 高効率性(電力の入力-->光の出力)
  • 長寿命(25,000時間以上)
  • 安定した、予測可能な動作
  • 輝度の容易な変更
  • 軽量
CCFLには、いくつかの固有の特性があり、最大限の効率、寿命、および有用性を得るためにはこれらの特性を明らかにする必要があります。このアプリケーションノートでは、これらCCFL特性のいくつかについて説明します。ここに示したデータは、特定のCCFLについて収集されたものであり、特定のデータは、アプリケーションで使用するCCFLモデルに応じて変化することに留意してください。ただし、ここで説明する一般的な傾向はすべてのCCFLに当てはまります。

温度依存性

CCFLの動作特性は、図12、および3に示すように、温度によって大きく左右されます。低い温度では、ランプの輝度が著しく低下し(図1を参照)、またランプを最初に始動(つまり点灯)するために必要な電圧が大幅に上昇します(図2を参照)。さらに、図3に示すように、ランプには自己発熱の特性があるため、ランプを始動した後、ランプの輝度に直接影響します。

図1. ランプの輝度の温度依存性
図1. ランプの輝度の温度依存性

図2. 始動電圧の温度依存性
図2. 始動電圧の温度依存性

図3. ランプの自己発熱による輝度特性
図3. ランプの自己発熱による輝度特性

ランプ電流

CCFLの効率は、ランプを駆動する電流波形に大きく影響されます。正弦波形が最大の効率をもたらします。逆に、大きな波高因子を持つ非正弦波形は、効率的なCCFLドライバではありません。図4は、ほぼ同じRMS電流を持つ2つの電流波形を示しています。波高因子の大きな波形は正弦波形と同じRMS電流ですが、正弦波形の150%ピークレベルを超える電流がさらに光を生成することはなく、これらはすべて熱になります。つまり、波高因子の大きな波形で動作するシステムでは、入力される電力に対して出力される光の効率が大きく減少するということです。

図4. ランプの電流波形の比較
図4. ランプの電流波形の比較

DCオフセットは、CCFLを使用するときに検討すべきもう1つの波形です。ランプ内で水銀が片寄る可能性を減少させるために、ランプ波形のDCオフセットは最小にする必要があります。

CCFLは通常、3mARMS~8mARMS範囲の特定の定格電流で動作するように設計されています。図5は、ランプの電流が減少するとランプの輝度が低下し、電流が増加すると輝度が上昇することを示しています。電流が大きくなると、この関係は線形でなくなることがわかります。動作電流が公称定格に近い場合のランプの輝度は、ランプ電流に対してほぼ1:1の比率で変化します。ただし、電流がこれより大きくなると、この比率は1:3未満に低下します。このため、定格電流の近くでランプを動作させることが重要になります。比率が大幅に超えた状態でランプを動作させるとランプの寿命が短縮されるからです。また、LCD TVやLCD PCモニタなどの複数ランプのアプリケーションでは、LCDパネルの全体にわたって均一な光拡散を確保するために、ランプをほぼ同じ電流(つまり輝度)レベルに保つことが重要です。この複数ランプのアプリケーションでは、個々のランプの電流レベルと波形を正確に監視して厳密に制御する必要があります。正確に監視して制御しないと、さまざまな輝度でランプが点灯されることになります。

図5. ランプの輝度の電流依存性
図5. ランプの輝度の電流依存性

ランプ電圧

最適な性能を得るために必要なCCFLの動作電圧と始動電圧は、ランプの長さと直径に応じて異なります。図6はランプの長さに伴って動作電圧が増加する様子を示しています。ランプの直径が小さくなると、必要な動作電圧が大きくなります。

図6. ランプ電圧の長さ依存性
図6. ランプ電圧の長さ依存性

CCFLの特異な特性として、CCFLが「負抵抗」を示すということがあります。これは、電流の増加に伴って、ランプの電圧が低下するということです(図7を参照)。負抵抗は個々のランプ間で変動する可能性があるため、ある特定の電圧レベルでいろいろなランプ電流が存在することになります。このため、複数ランプのアプリケーションで、最大限に均一なランプ性能を得るには、各ランプに個別にトランスを設けて電流を制御することが必要になります。

図7. ランプ電圧対電流の関係
図7. ランプ電圧対電流の関係

ランプの始動

光を生成するには、最初にCCFL内のガスを電離させる必要があります。公称定格動作電圧の約1.2倍~1.5倍の電圧を、数百マイクロ秒の間、ランプの両端に加えると電離が発生します。電離が発生する前に、ランプ両端のインピーダンスは数メガオームの範囲になり、一般的なアプリケーションでは、ほぼ完全な容量性負荷になります。電離が開始されると電流がランプを流れ始めて、インピーダンスは数百キロオームの範囲に急激に低下し、ほぼ完全な抵抗性負荷になります。ランプのストレスを最小限にするには、始動波形がスパイクのない、対称的で線形の正弦波勾配であることが必要です。前述のように、CCFLを始動するのに必要な電圧は、温度とともに変動します(図2を参照)。ランプが始動される正確なタイミングは、ほとんど再現性がなく、まったく同じ温度、かつ同じバイアス条件であっても±50%変動する可能性があります。