DN-554: デジタル式のパワーシステム・マネージメント機能を備えた6A モノリシック同期整流式 DC/DC 降圧コンバータ
通常、デジタル式のパワーシステム・マネージメント(PSM)コントローラの対象になるのは大電流のポイントオブロード(POL)アプリケーションですが、PSM機能は、負荷電流が 6A 以下の小電流アプリケーションにも役立つ場合があります。LTC®3815 は、デジタル的に電源を監視、制御する機能を備えた、6Aのモノリシック同期整流式降圧コンバータです。
LTC3815 は、位相同期可能なオン時間、固定周波数、電流モード・アーキテクチャを使用しており、負荷ステップのトランジェント応答がきわめて速く、出力容量がきわめて小さくなっています。また、高いスイッチング周波数での小さい出力電圧のレギュレーションに必要なきわめて短いオン時間でも動作でき、ソリューション・サイズを小さくできます。出力電圧は、1 本の外付け抵抗を使用するかリファレンス(REF)入力ピンに外部電圧リファレンスを接続することで、0.4V から入力電圧の 72%までの範囲で設定できます。2.25V ~ 5.5V の範囲の電源電圧で動作できるため、2.5V、3.3V、または 5V の入力レールやリチウムイオン電池での動作に適します。
1MHz で動作する 6A コンバータ
入力電圧範囲が 2.25V ~ 5.5V、出力が 1.8V、6Aの代表的な使用例を図 1 に示します。
また、図 1 の回路の効率特性曲線を図 2 に示します。LTC3815 は、1MHz の周波数でも比較的高い効率を実現できるため、小さなインダクタを使用して総実装面積やボード・サイズを最小限に抑えることができ、特にボードの面積や部品の高さが制限されるアプリケーションに適します。
図 3 は、全負荷時の LTC3815 の温度分布を示します。通気のない状態で全負荷時でも IC が低温に保たれ、高温部分でも温度上昇が 37.4°C に抑えられていることが分かります。
パワーシステム・マネージメント機能
LTC3815 には、フォルト状態時の出力マージニング読み出しのデジタル制御(0.1% の分解能で±25%)、および入力 / 出力電流、入力 / 出力電圧、温度の時間平均値(~4ms)とピーク値の監視など、さまざまな PSM 機能が含まれています。LTC3815は NVM(不揮発性メモリ)を内蔵していませんが、PMBus を使用して出力電圧を設定できます。PSM機能には、リニアテクノロジーが無償で提供している図 4 のような使いやすい PC ベースの GUI を採用した LTpowerPlay®ソフトウェアを使用してアクセスできます。
たとえば出力電圧のマージンを大きくする場合も操作は簡単で、[OPERATION] を [MarginHigh] に切り換えて [W (PC to RAM)] アイコンをクリックするだけで、これらのレジスタの値が LTC3815 に書き込まれます。書き込みが成功すると、遠隔測定値のグラフ(図 5)のように出力電圧が 1.05V に急上昇します。
まとめ
LTC3815 は、デジタル式のパワーシステム・マネージメント機能を備えた 6A モノリシック同期整流式降圧レギュレータです。LTC3815 は、シンプルで、コンパクトで、効率が高い設計だけでなく、通常ならはるかに大電力な POL コンバータに使用されるデジタル式の設定、監視機能も要求されるアプリケーション向けの、汎用性の高いソリューションを提供します。