DN-1038: 小型 QFN パッケージに収容された電力密度の高い 42V 降圧レギュレータ
はじめに
大電流が要求され、面積に制限のある産業用および自動車用アプリケーション向けの DC/DC コンバータを設計する際、電力損失は大きな問題です。高性能なディスクリート部品によって高効率なレギュレータを作ることは可能ですが、費用とソリューション面積の面で非現実的です。高効率降圧レギュレータのLT8612/LT8613 は、必要なコンポーネントをすべて 1 つの IC に収めることで、DC/DC コンバータのサイズを大きく削減できるとともに、高い降圧比にも対応できます。LT8612/LT8613は並列接続して使用することで、出力電流性能を高め、負荷と熱を分散できます。
LT8612/LT8613 のその他の魅力的な機能としては、バッテリ寿命を最大化する超低静止電流、ソリューション・サイズを最小化しノイズに敏感な周波数帯を避ける高いスイッチング周波数があります。
3mm×6mm パッケージに収容された高効率な 42V、6A レギュレータ
LT8612/LT8613 は 42V、6A 降圧モノリシック・レギュレータです。内蔵の高効率パワー・スイッチの消費電力が低いため、3mm×6mmのQFNパッケージに、これらのスイッチのほか、昇圧ダイオード、内部補償、および必要なすべての回路を過度に温度上昇することなく収容できます。標準的な 5V/30W LT8612コンバータを図 1 に示します。その効率と電力損失を図 2 に示します。24V の入力電圧でも、LT8612は 50°C未満の温度上昇で 30W の出力を生成できます。 負荷スペクトラムの他端では、LT8612/LT8613 は低リップル Burst Mode® 動作を利用して、超低負荷状態における効率を向上させます。
LT8612/LT8613 の最小オン時間はわずか 40nsのため、スイッチング周波数が高い場合でも、高いVIN/VOUT 比が可能です。高いスイッチング周波数(最高 2.2MHz)では、パワー・インダクタと出力コンデンサのサイズと値を最小化できます。さらに、インダクタのサイズは、出力負荷要件に基づいて的確に決定できます。デザイン・オーバーヘッドのために大きなインダクタを使用する必要はありません。これは、高速ピーク電流モード・アーキテクチャと堅牢なスイッチ・デザインによるものです。
出力電流量を大きくする多相デザイン
自動車用および産業用アプリケーションにおいて、6Aを超える負荷は珍しくありません。これらの比較的大電流の条件では、多相デザインにより、LT8612/LT8613レギュレータの出力電流を増加させることができます。LT8613 には、レール・トゥ・レール電流検出アンプがモニター・ピンおよび制御ピンとともに内蔵されており、正確な入力または出力平均電流レギュレーションが可能です。この電流ループは、ISP/ISN ピン間の電圧が ICTRL ピンによって設定された電圧を超えないように内部スイッチ電流制限を調節します。別の IMON ピンを使用して、ISP/ISNピンを通して測定される平均電流をモニタリングします。この電流制御機能により、制御回路を追加しなくても、複数の LT8613 間で正確な電流分担が可能になります。
最大 16A の出力を得るため 3 つの LT8613 を並列接続した例を図 3 に示します。トップの LT8613 はマスター・レギュレータで、出力電圧は 4V に設定されています。他の 2 つの LT8613 はスレーブ・レギュレータで、それらの出力電圧は 4V よりも少し高く設定されています。
電流を 3 つの LT8613レギュレータ間で分担するには、マスター LT8613 の IMON ピンを 2 つのスレーブ LT8613 の ICTRL ピンに接続します。これら 3 つの LT8613レギュレータは、LTC6909 発振器で生成された 3 相 700kHz クロック信号(120°位相シフト)によって同期されます。この 3 相 LT8613 デザインの熱画像を図 4 に示します。LT8613 の温度状態が互いに似通っていることから、3 相で均等に電流が分担されていることが分かります。このデザインの効率を図 5 に示します。
相間の電流分担に重み付けする(不均一な電流分担を行う)には、ISP ピンと ISN ピンの間の検出抵抗の値を調整すればよいだけです。
まとめ
LT8612 および LT8613 は、要件の厳しい自動車および産業用要件を満たす、完全に統合された電力密度の高いモノリシック降圧レギュレータです。簡単な方法で並列化することで、高効率、大電流アプリケーションに対応し、ソリューションの面積を小型化できます。