20VIN、8Aの高効率小型パッケージ降圧µModuleデバイス

はじめに

LTM4657は、小型かつ高効率で同一ピン配置の降圧μModule®デバイス・ファミリの一製品です。このデバイスは、8Aの出力電流範囲内で高い効率を備えているため、LTM4626LTM4638より低いスイッチング周波数で動作するように設計されています。また、LTM4638の高い効率とLTM4626の低いプロファイルを組み合わせることで、両者のギャップを埋めています。

図1 LTM4657、LTM4626、LTM4638は、ピン配置が同一で、それぞれ異なる出力電流定格を実現しています。LTM4657とLTM4626は、低背タイプのインダクタを用いて全体の高さを抑えています。

図1 LTM4657、LTM4626、LTM4638は、ピン配置が同一で、それぞれ異なる出力電流定格を実現しています。LTM4657とLTM4626は、低背タイプのインダクタを用いて全体の高さを抑えています。

LTM4657は、3.1V~20Vの入力電圧で最大8Aの連続出力電流を供給します。このデバイスは、LTM4626およびLTM4638と同じコンポーネント・オン・パッケージ(CoP)設計を採用しています。この設計は、6.25mm × 6.25mmという小型フットプリントを維持しながらデバイスの温度を低く保つのに有効です。LTM4626、LTM4638、LTM4657はピン互換性があり、フットプリントが同じであるため、既存のレイアウト設計が利用でき、ニーズに合うμModuleデバイスを簡単に選択できるというメリットがあります。

またLTM4626、LTM4638、LTM4657は、降圧ソリューションの電力密度において、市場をリードしています。これらのμModuleデバイスは、その魅力的なサイズと高い効率によって、広範なアプリケーションに対して柔軟で即使用できるソリューションを提供できます。内蔵インダクタ、FET、上側帰還抵抗、周波数抵抗、オプションの内部補償などによって、外付け部品を最小限に抑えた降圧ソリューションが可能です。μModule技術は、49ピンBGAパッケージを使用してピン数を最大限に増やしたことにより、必要最低限の設計で多くのオプション機能を利用できます。

図2 推奨スイッチング周波数を使用し、VIN = 12 V、VOUT = 5 Vとした場合のLTM4626、LTM4638、LTM4657の効率比較

図2 推奨スイッチング周波数を使用し、VIN = 12 V、VOUT = 5 Vとした場合のLTM4626、LTM4638、LTM4657の効率比較

LTM4657には、PGOOD、RUN、TRACK/SSの各ピンによる一般的な機能がありますが、CLKIN、CLKOUT、PHMODEの各ピンによる機能によって、並列動作やEMI対策を向上できます。更に、出力電圧の精度を高めるため、差動リモート・センス・アンプを内蔵し、内部の温度保護機能を追加するため、温度検出ピンも内蔵しています。

図3 DC2989Aデモンストレーション・ボード上に入出力コンデンサを実装した小型LTM4657ソリューション。数個のセラミック・コンデンサと1個の抵抗がボード裏面に配置されています。

図3 DC2989Aデモンストレーション・ボード上に入出力コンデンサを実装した小型LTM4657ソリューション。数個のセラミック・コンデンサと1個の抵抗がボード裏面に配置されています。

アプリケーション

LTM4657は、LTM4626およびLTM4638に使用しているインダクタよりも値の大きいインダクタを使用しています。これにより、LTM4657はより低い周波数で動作でき、スイッチング損失を低減できます。LTM4657は、負荷電流が小さいアプリケーションや入力電圧が高いアプリケーションなど、スイッチング損失が大きく、導通損失が小さい場合に最適なソリューションです。

DC2989Aデモンストレーション・ボード上にLTM4626とLTM4657を同様に配置し、スイッチング周波数を同一にしたときの比較を図4に示します。12VIN、5VOUTに設定したとき、LTM4657はスイッチング損失が非常に少ないという特長があります。またLTM4657はインダクタ値が高いため、出力電圧のリップルが低く抑えられます。一方、LTM4626は、LTM4657より大きな負荷電流を供給できます。

図4 DC2989Aデモンストレーション・ボード上にLTM4626とLTM4657を同様に配置し、スイッチング周波数を1.25MHzとしたときの効率比較

図4 DC2989Aデモンストレーション・ボード上にLTM4626とLTM4657を同様に配置し、スイッチング周波数を1.25MHzとしたときの効率比較

まとめ

LTM46xxファミリ製品は、同じフットプリントで同じピン配置を使用して、広範囲の負荷電流を供給できます。LTM4657が加わったことで、より低い負荷電流の設計においても性能を最適化できます。LTM4626およびLTM4638と共に、この小型フットプリントのファミリは、柔軟性と性能の面で絶えず進化しています。LTM4657は、低負荷から中程度の負荷のアプリケーション(最大8A)において、低スイッチング損失かつ高効率のソリューションを求めるニーズに対して最高の効率を提供します。LTM4657は小型パッケージで豊富な機能を提供できるため、限られたスペースで妥協のない効率的な設計が可能です。