シリアライザとデシリアライザのペア(MAX9247とMAX9218)の性能テスト

要約

シリアル化されたデータの高速接続はビデオディスプレイ、ディジタルカメラの検出、およびネットワーク、サーバや3G基地局におけるバックプレーンのデータ伝送に広く使用されています。マキシムは、シリアルリンクのトランスミッタとレシーバの製品を開発しました。このアプリケーションノートでは、ケーブルタイプ、ケーブル長、およびデータレートのさまざまな条件の下での、標準的なシリアライザとデシリアライザ(SerDes)のペア(MAX9247とMAX9218)の性能を示しています。ここで得られた情報は、シリアル化されたデータの高速接続を必要とするアプリケーションにとって良い指針となります。

はじめに

マキシムの高速シリアライザおよびデシリアライザ(SerDes)製品は、ビデオ、イメージ、およびデータの伝送のために、自動車、ネットワーク、サーバ、および3G基地局で使用されています。MAX9247シリアライザおよびMAX9218デシリアライザは、クロックが組み込まれたシングルLVDSリンクの代表的なペアです。このペアが到達することができるシリアルリンクの最大データレートは、800Mbpsです。

このアプリケーションノートでは、さまざまなケーブルタイプ、ケーブル長、およびデータレートを用いた場合の、このデータトランシーバリンクの性能を示しています。また、マキシム独自のプリエンファシス機能やラインイコライザによって得られる性能の改善についても示しています。また、自動車アプリケーションの苛酷な環境に適合させるため、-40°C~+105°Cの温度範囲でこのSerDesペアをテストします。

テストのセットアップ

テストのセットアップは、Agilent ParBERT 81250テスタ、TDS784C 1GHzディジタルスコープ、TEK P6247差動プローブ、およびMAX9247/MAX9218のEVキットの基板で構成されています。Agilent 81250は、パラレルビットのエラーレートテスタ(BERT)です。各部品は、以下の図1に示すように接続されています。

図1. MAX9247およびMAX9218の性能テストのセットアップ
図1. MAX9247およびMAX9218の性能テストのセットアップ

MAX9247は、27ビットのパラレルデータ入力を備えていますが、このうちの18ビットがRGBビデオデータ入力用、9ビットが制御データ入力用です。シリアル化されたLVDSリンクのデータレートはパラレルデータレートの20倍で、2つのオーバヘッドビットが含まれます。Agilent 81250の最初の9つの出力チャネルは、最初の9つのRGB入力(RGB_IN0~RGB_IN8)に接続されます。また最初の9つのチャネルの反転出力は、残る9つのRGB入力(RGB_IN9~RGB_IN17)に接続されます。BERTはRGBデータに対してのみ実装されます。ParBERTの各出力チャネル上のデータシーケンスは個別に生成された疑似乱数ビットストリームであり、非循環長さは21492です。RGBデータシーケンスのビット長は1370です。1370ビットの後に、制御期間として20ビットの間隔が追加されます。すべての制御ビット(CNTL_IN0~CNTL_8)は必ずゼロに設定されます。図2にデータ構造を示します。テスト中、1390ビットのパラレルデータパターンが繰り返されます。信号DE_INによって、RGBデータ期間と制御期間が交互に入れ替わります。

図2. テストデータのシーケンス構造
図2. テストデータのシーケンス構造

テスト条件と測定結果

以下の表に示すように、3つのツイストペアケーブルをテストしました。

表1. テストしたケーブルタイプ

Manufacturer Part Number Length(M) Comments
NISSEI SIODIC F-2WME, AWG26 10, 20, 30 Shielded
SIODIC F-2WME, AWG28 10, 20, 30
General Cable CAT5E, AWG24 10, 20, 30 Unshielded
JAE MX38 20 Shielded

ケーブル長とデータレートに対するSerDesペアの性能をテストするため、各ケーブル長についてのビットエラーレート(BER)を観測し、10分間ビットエラーが発生しないときの、最大のパラレルデータレートを記録します。データレートの増分は1Mbpsとします。この方法を使用することで性能を評価することができます。というのは、LVDS SerDesトランシーバについては次の2つの考え方があるからです。すなわち、1番目に、「10分以内にエラーが発生しなければ、おそらく数時間でもエラーは発生しない」、2番目に「非常に低いレートであっても10分以内にエラービットが観測された場合、データレートをわずかに増やすと(0.5Mbps未満)、デシリアライザのDE_OUT信号のロックが喪失される」。この結果、上記の手法はテスト時間と測定の信頼性の間の妥当なトレードオフということになります。したがって、「一定のデータレートで10分以内にビットエラーが発生しないとき、リンクのBERは10-10または10-11未満である」という仮説が成立します。式1を使用すれば、この仮説の信頼水準(CL)を統計学的に計算することができます。

ここで、Nは観測期間(たとえば10分間)にシリアルリンクを通じて転送されたビットの数、pは仮定したBERです。表2は、さまざまなデータレートでのCLを示しています。

表2. 10分間の観測における信頼水準対データレート

Parallel Data Rate(Mbps) Number, N, of Bits
Transmitted by the
Serial Link in Ten Minutes
Confidence Level of p
BER < 10-10 BER < 10-11
10 12 x 1010 > 99.999% 69.88%
20 24 x 1010 > 99.999% 90.92%
30 36 x 1010 > 99.999% 97.27%
40 48 x 1010 > 99.999% 99.18%

テスト結果

表3は、プリエンファシス機能とLVDSイコライザをオンまたはオフにしたときの、さまざまなケーブルタイプ、ケーブル長、およびデータレートについて得られた性能結果を示しています。プリエンファシス機能はMAX9247に内蔵されており、EV基板のジャンパJP15を「ハイ」に設定することによって、有効にすることができます。独自開発のLVDSイコライザは、図1に示すように、MAX9247のLVDS出力に取り付けられています。イコライザの実装の詳細については、マキシムのApplication Supportにお問い合わせください。表3のデータはすべて室温で得られたものです。拡張温度範囲に対して30mのNISSEI AWG26ケーブルを用いた場合のテスト結果を表4に示します。

表3. さまざまな条件下でテストしたSerDesトランシーバの信頼できるデータレート

Cable Type Pre-Emphasis LVDS Link Equalizer Maximum Reliable Serial Data Rate (SDR)
Cable Length
10m 20m 30m
PCLK (MHz) SDR (Mbps) PCLK (MHz) SDR (Mbps) PCLK (MHz) SDR (Mbps)
NISSEI AWG26 Off Off 34 612 25 450 15 270
On Off 40 720 27 486 17 306
Off On 38 684 34 612 30 540
On On 43 774 39 702 35 630
NISSEI AWG28 Off Off 33 594 16 288 8 144
On Off 36 648 23 414 10 180
Off On 35 630 33 594 23 414
On On 41 738 37 666 28 504
General Cable CAT5e Off Off 38 684 26 468 16 288
On Off 42 756 28 504 18 324
Off On 38 684 35 630 32 576
On On 44 792 42 756 36 648
JAE MX38 Off Off 16 288
On Off 24 432
Off On 35 630
On On 40 720

表4. 拡張温度範囲(*)で動作するSerDesトランシーバの信頼できるデータレート
Cable Type Maximum Reliable Serial Data Rate (SDR)
Temperature
-40°C 25°C 105°C
PCLK (MHz) SDR (Mbps) PCLK (MHz) SDR (Mbps) PCLK (MHz) SDR (Mbps)
NISSEI AGW26, 30m 36 648 35 630 31 558

*このテストでは、プリエンファシスとLVDSイコライザがどちらもオンであることに留意してください。

以下のアイダイアグラムは、デシリアライザのLVDS入力ポートで記録されたものです。これらのグラフは、歪んだビットシンボルの下でのデシリアライザのデータリカバリ機能を示します。またアイダイアグラム上では、LVDSリンクイコライザによる大幅な改善が見られます。

図3. NISSEI AWG26、20m (702Mbps。プリエンファシスとイコライザをオン)
図3. NISSEI AWG26、20m (702Mbps。プリエンファシスとイコライザをオン)

図4. NISSEI AWG26、30m (630Mbps。プリエンファシスとイコライザをオン)
図4. NISSEI AWG26、30m (630Mbps。プリエンファシスとイコライザをオン)

図5. NISSEI AWG26、30m (306Mbps。プリエンファシスをオン)
図5. NISSEI AWG26、30m (306Mbps。プリエンファシスをオン)

図6. NISSEI AWG26、30m (306Mbps、プリエンファシスとイコライザをオン)
図6. NISSEI AWG26、30m (306Mbps、プリエンファシスとイコライザをオン)

まとめ

表3および表4に示す結果から、以下の所見が得られます。

  • CAT5Eの非シールドケーブルの性能は他の2つのタイプのケーブルより優れていますが、各アプリケーションでEMIの問題が発生する可能性があります。
  • プリエンファシスおよびLVDSイコライゼーションはリンク性能の向上に役立ちます。短いケーブルの場合、プリエンファシスによってブーストが増大しますが、長いケーブルの場合は、LVDSイコライゼーションの方が効率の良い改善を実現することができます。30mケーブルの場合、イコライザによってデータレートは2倍になります。
  • 拡張温度範囲での性能の変動は比較的小さな値を示しています。
  • ケーブルワイヤのゲージによって性能が限定されるおそれがあります。AWG28より大きなワイヤゲージをお勧めします。

参考資料

  1. マキシム高速インターコネクトデザインガイド
  2. MAX9247データシート
  3. MAX9218データシート

参考資料

  1. Maxim High-Speed Interconnect Design Guide
  2. MAX9247 data sheet
  3. MAX9218 data sheet