AN-740:RS-232 アプリケーションでのiCoupler®アイソレーション
はじめに
RS-232 バス規格は、最も広く採用されているシリアル通信バス・デザインの1 つです。コンピュータ装置とモデムとの間の通信用に1962 年にEIA(Electronics Industry Association)により制定されたのが始まりです。RS-232 規格は、システム間シリアル通信リンクとして今でも広く採用されています。
RS-232 規格は、シリアル・データのポイント・ツー・ポイント・デザインで、各方向の通信を行う専用信号ラインを持っています。これらの2 本の専用単方向ラインにより全二重通信が可能です。
最大ケーブル長は規定されていませんが、実用的な最大ケーブル長は約16m です。RS-232 はシンプルで柔軟性があり、かつ長年使われていることが、システム間接続で広く採用されている理由になっています。
RS-232 規格は一般にシステム間接続で使われるため、バスと各接続システムとの間のアイソレーションが重要です。デジタル・アイソレーションは、RS-232 ケーブル・バスと接続システムとの間の過電圧トランジェントからの必要不可欠なアイソレーションと保護を行います。また、デジタル・アイソレーションはRS-232 バス上のグラウンド・ループも解消します。RS-232 バスに接続されるシステムからバスをデジタル的にアイソレーションすると、信号歪みと誤りが低減でき、更にシステム電圧、バス電圧、グラウンドの不一致からシステムと部品が保護できます。
このアプリケーション・ノートの目的は、RS-232 バス物理層の概要を簡単に説明し、アイソレーションがシステムにとって重要である理由をユーザが理解できるようにすることです。このアプリケーション・ノートでは、アナログ・デバイセズのiCoupler®製品を使ってRS-232 バスのアイソレーションを実現する方法について詳しく説明します。
RS-232 の概要
RS-232 はEIA-232 と呼ぶのがより適切ですが、古い呼び方であるRS-232 が広く用いられています。RS-232 では、信号はグラウンドを基準にし、シングルエンド(不平衡)のポイント・ツー・ポイント・シグナリングを採用しています。
RS-232 では、最大データ・レート20kbps を規定しています。RS-232 の低電圧バージョンであるTIA/EIA-562 規格では、64kbps までの動作を規定しています。
RS-232 仕様は、最大ケーブル長を規定していません。ただし、RS-232 では2500pF の最大ライン容量と3kΩ~7kΩ の負荷インピーダンスを規定しています。これらの仕様から、標準的な最大有効ケーブル長は約16m となります。
この規格は、ドライバ出力レベルをロジック1に対しては−5V~−15Vに、ロジック0に対しては+5V~+15V に、規定しています。レシーバの入力レベルとしては、ロジック1 に対して−3V~−15Vを、ロジック0 に対しては+3V~+15V を、読み込むように規定しています。−3V~+3V の電圧レベルは規定していません。この広い電圧振幅と中心未定義の電圧領域により、高レベルのノイズ耐性が確保されて最大ケーブル長で有効な信号レベルが受信できるようになっています。
RS-232 規格は制定以来数回改訂されています。文字により種々のリビジョンが識別されています。RS-232C はPC 業界で広く採用されているリビジョンです。4 番目のリビジョンRS-232D では、3 本のテスト・ラインが追加され、2500pF の最大ライン容量が規定されました。5 番目のリビジョンでは、正式名称がEIA-232に変更され、一部の信号ラインの名称変更と、保護用グラウンド導体の定義が行われました。
このアプリケーション・ノートの執筆時点では、最新リビジョンは1997 年に制定されたTIA/EIA-232-F です。TIA/EIA-232-F では、以前のバージョンに準拠した機器との互換性の問題を引き起こす技術的変更は行われていません。
RS-232 仕様では物理層のみを規定しています。信号プロトコルは、ユーザにより、またはプロトコルを定義しRS-232 を物理層用に規定する規格により定義されます。
RS-232 仕様では、20 本の信号ラインを使う25 ピンD コネクタのピン配置を規定しています。ただし、EIA-574 で規定される8本の信号構成による9 ピン・コネクタの方が広く使用されています。
RS-232 システムでのデータ送信には、各方向の1 ラインのみ使用可能です。他のすべてのラインは、信号通信プロトコル用に割り当てられています。これらの信号ラインを使うと、RS-232プロトコルの設定で複数のオプションを使うことができます。システムは、広く採用されている9 ピン・コネクタの8 信号を使って非同期動作を行うように設計することができます。最もシンプルな場合、RS-232 はTx(データ)、Rx(データ)、GND の3 本のラインで構成することができます。
RS-232 規格で規定されている25 ピン・コネクタでは、9 ピン・コネクタで使用していない11 信号を規定しています。これらの追加信号には、同期データ・プロトコルの使用を可能にする各データ方向に対するクロック・ラインが含まれています。
このアプリケーション・ノートで特に注目すべきことは、25 ピン接続に保護用グラウンド・ラインが含まれていることです。このラインは、装置の安全なグラウンドとして設計されており、一般にシリアル・アダプタの電源グラウンドまたはシャーシ・グラウンドに接続されます。このグラウンドは信号グラウンドに接続することはできません。更に、特にケーブル・ラインが長いアプリケーションでは、このグラウンドを2 つのシステム間で接続することも推奨されません。これらのグラウンドを相互接続した場合、または両システムに接続した場合、グラウンド・ループが形成されることがあります。
RS-232 ピンの接続
RS-232 規格は、シリアル・ポートに接続される装置を2 種類に分類しています。これらは、DCE(データ通信装置)とDTE(データ端末装置)です。これらの区別はコンピュータとモデムに関する以前からの規格に由来するもので、これらの規格ではデータ端末装置をコンピュータまたはコンピュータ端末として、データ通信装置をモデムとして、規定しています。実際のアプリケーション用語では、DCE とDTE の区別によって、各システムに入力として接続されるラインと出力として接続されるラインが区別されます。
RS-232 仕様では信号プロトコルを規定していませんが、一般的には8 本の信号ラインと1 つのグラウンドを使う非同期シグナリングが採用されています(図1)。
前述のように、システムは6 本すべてではなくそれより少ない数のハンドシェーク信号ラインで構成することができます。ハードウェアはTx、Rx、グラウンドをペリフェラルに接続するだけで動作しますが、幾つかのドライバ・ソフトウェアでは、ハンドシェーク・ラインの1 本が正しいレベルになるのを待ち続けます。信号状態に応じて、これが動作することも、動作しないこともあります。
信頼性確保のために、未使用ハンドシェーク信号はループ・バックさせて、RTS(request to send:送信要求)信号に接続しておく必要があります。ラインでハンドシェーク・ループを構成する場合は、プロセッサまたはコントローラからのRTS 出力により、直ちにCTS(clear to send:送信許可)入力がアクティブになります。この構成では、送信システムがそれ固有のハンドシェークを制御します。あるいは、DTR(data terminal ready:データ端子レディ)のようなこれらの幾つかの信号を有効な信号レベルへ接続して、システムが常にデータ受信可能であることを表示することができます。RS-232 プロトコルを使う接続の詳細については、アプリケーション・ノートAN-375 を参照してください。
システム・アイソレーションの概要
2 つのシステムを接続するケーブル・バス上の不要な電流と電圧は、深刻な問題を発生させることがあります。大きな電圧と電流は、バスに接続されている部品を壊すことがあります。これらの不要な電圧と電流は、主にグラウンド・ループと電気的ライン・サージの2 つの原因から発生します。
バスまたはシステムで複数のグラウンド・パスを使うと、グラウンド・ループが形成されます。バスに接続されていて数m 以上離れている2 つのシステム・グラウンドは同じ電位であると見なすことはできません。これらのグラウンドが同じ電位となることはほとんどなく、これらのポイントの間に電流が流れて、この意図しない電流により部品が損傷を受けます。
電気的サージは多くの原因から発生します。これらのサージは、ケーブル・ラインに誘導された電流により発生します。長いケーブル・ラインと工業環境にあるシステムは特にこの現象の影響を受け易くなっています。電気モータのような大きな電流をスイッチングする装置の動作により、グラウンド電位が急速に変化します。これらの変化により、グラウンド電位が等しくなるように隣接ラインに電流が流れます。その他の誘導サージ源としては、静電放電(ESD)や雷などがあります。誘導されたこれらのサージにより、数百ボルト、更には数千ボルトの電位がラインに発生して、過渡電流や電圧サージとなります。
したがって、ケーブル端のノードではローカル・グラウンドに対して高い電圧レベルに重畳されたスイッチング信号を受信することがあります。制御されていないこれらの電圧と電流が信号を破壊し、デバイスとシステムにとって致命的になり、バスに接続されている部品に損傷を与えて、システム故障が発生します。RS-232 システムは最大16m のケーブルで動作し、2 つのシステムを接続するため、これらの影響を受け易くなっています。
この破壊的なエネルギーから保護するため、バス上のデバイスとバスに接続されているシステムはすべて1 つのグラウンドのみを基準とする必要があります。バスに接続されている各システムからRS-232 システム・デバイスをアイソレーションすると、グラウンド・ループの形成を防止して、電気的サージによる回路の損傷を防ぐことができます。
アイソレーションにより、RS-232 ケーブル・バスに接続されているシステムと各RS-232 回路は別々のアイソレーションされたグラウンドを持つため、グラウンド・ループの形成が防止されます。各RS-232 回路が1 つのグラウンドのみを基準とすることにより、グラウンド・ループがなくなります。
また、アイソレーションすると、ケーブル・ライン上に発生する任意のサージによりRS-232 回路のリファレンス電圧レベルが上下に変化することができます。回路リファレンス電圧が固定のグラウンドに拘束されるのではなく、サージと一緒に上下することにより、デバイスの損傷が防止されます。
システム・アイソレーションを行うときは、RS-232 信号ラインと電源の両方をアイソレーションする必要があります。電源のアイソレーションは、絶縁型DC/DC 電源を使うことにより行うことができます。信号のアイソレーションは、一般にオプトカプラまたはアナログ・デバイセズの革新的なiCoupler を使って行うことができます。更に、アナログ・デバイセズは、マイクロトランスを用いて絶縁バリアを越えた信号および電力の伝達を行うなどの、完全統合型アイソレーション・ソリューションを提供できます。
アイソレーションの実施
アイソレーションの実施はそれほど複雑ではなく、iCoupler製品と非絶縁型RS-232 製品を組み合わせて行います。更に、システム・サイズは、アナログ・デバイセズの絶縁型RS-232 製品を用いると、大幅に縮小できます。
アイソレーション回路の実現には幾つかの重要なファクタを考慮する必要があります。
RS-232 信号パスのアイソレーションを行うには、RS-232 トランシーバーとローカル・システムの間のデジタル信号パスにアイソレータを組み込みます。システム側のRS-232 トランシーバーはデジタル・ロジック・レベル0V~5Vまたは0V~3Vの信号を使い、一般にUART(universal asynchronous receiver/transmitter)またはプロセッサに接続されます。iCouplerアイソレータは、互いに電気的にアイソレーションされた入力回路と出力回路を内蔵しています。この場所にiCoupler を配置すると、バスに接続されている各システムからRS-232 ケーブル・バス信号が電気的にアイソレーションされます。
ローカル・システムからのRS-232 回路のアイソレーションを完成させるためには、絶縁型DC/DC 電源コンバータが必要です。絶縁型電源を使ってローカルRS-232 トランシーバーとアイソレータのRS-232 側に電源を供給します。絶縁型電源には一般にローカル・システムから電源が供給されます。
デジタル・アイソレータと絶縁型DC/DC 電源との組み合わせにより、サージによる損傷から効果的に保護され、グラウンド・ループがなくなります。図2 に、iCoupler 集積を使用した代表的なRS-232 信号構成でのシステム・アイソレーション設計を示します。iCoupler 信号アイソレータはシステムのUART とRS-232 トランシーバーの間に配置されます。RS-232 トランシーバーとiCoupler のトランシーバー側には絶縁型DC 電源から電源が供給されます。
他のいくつかの構成は、ADM3251E やADM3252E などのアナログ・デバイセズの絶縁型RS-232 製品を用いて実現できます。これらの製品は、絶縁型DC/DC コンバータと統合して、2 次側回路に給電します。図3 に、絶縁型RS-232 製品を用いたRS-232 アイソレーションを示します。
アイソレーション・デバイスの選択
システム性能条件は、アイソレーション・デバイスの選択に最も大きな影響を与えます。その他の考慮事項としては、スペースの制約やコストなどがあります。
図3 に示す回路図では、RS-232 バスで使用される信号が最小化されます。絶縁型RS-232 トランシーバーは、システムのUARTとRS-232 バス・ラインを接続するために配置されています。
データ・レート条件
システム・データ・レート条件は、恐らくデバイスの選択で最も重要なパラメータとなります。
RS-232 仕様ではデータ・レートを最大20kbps に規定していますが、多くの新しいRS-232 トランシーバーはこれよりはるかに高いデータ・レートで動作できます。これらの高データ・レートRS-232 トランシーバーには、RS-232 の新しいTIA/EIA-562 低電圧バージョンと互換性を持つ低電圧RS-232 トランシーバーが含まれます。RS-232 の概要のセクションで述べたように、この仕様では64kbps までの動作が規定されています。低電圧RS-232 トランシーバーによっては、更に高いデータ速度で動作できるものもあります。非絶縁型および絶縁型RS-232 製品はいずれも、最大460kbps のデータ・レートで動作できます。これらの高いデータ・レートによりRS-232 仕様の使用範囲が広がり、システム設計に非常に多くのオプションが提供されます。
システム内で高いデータ・レートを使用することで、高性能製品に対するアイソレーション・デバイスの選択範囲が狭くなります。すべてのiCoupler 製品は最大1Mbps のデータ・レートで動作します。iCoupler 製品のポートフォリオには、100Mbps と150Mbps の最大データ・レートで動作するデバイスも含まれています。
デバイス・コストは一般にデータ・レート性能に比例して高くなります。このため、必要以上の性能を持つデバイスを選択しないように注意する必要がありますが、低性能デバイスを選択すると、将来システム性能をアップグレードする際に、アップグレードするシステム・データ速度と互換性のないすべてのデバイスを交換する必要が生ずるため、コストが増えて複雑になる可能性があります。
スペース条件
スペースの制約は、設計における選択範囲を制限する2 つ目の領域です。最大寸法条件は、事実上すべてのアプリケーションで問題になりますが、実装によってはスペースが厳しく制限される場合もあります。
このスペースが問題となるシステムに対するソリューションとしては、8 信号RS-232 回路のアイソレーションを対象とするADuM141E iCoupler とADuM140E iCoupler を各1 個使用する組み合わせ(図2 参照)などがあります。ADuM140E およびADuM141E は16 ピンSOIC パッケージを採用した4 チャンネル・アイソレーション・デバイスで、デバイスは4 個のオプトカプラとその関連回路を置き換えることができます。システム・スペースは、ADM3251E またはADM3252E を適用すると、更に縮小できます。ADM3252E を1 つ用いて、バス内の単純化された信号のアイソレーションを実施できます(図3 参照)。
コストの条件
コストの制約と問題は、すべてのシステム設計作業で発生します。コストに関する考慮事項は、システムに対する設計上の選択肢に影響を与えることがあります。データ・レート条件のセクションで述べたように、アイソレータ・デバイスのコストは、データ・レート性能に比例して高くなります。必要なシステム性能のみを持つデバイスを選択することでコスト削減が可能になります。
その他のコスト問題としては、使用するデバイス数などがあります。iCouplerデバイスのコストは、チャンネル数に比例して高くなりますが、チャンネルあたりのコストは、デバイスのチャンネル数の増加に伴って減少します。
可能なかぎり多数のチャンネルを1 個のデバイスに集積するその他のコスト上の利点としては、ボード・スペースと組み立てコストの削減などがあります。デバイス数を削減するとボード面積が小さくなります。また、デバイス数が少なくなると、ボード・レイアウトが簡素化されます。ボードの小型化とレイアウトの簡素化の組み合わせによりボード・コストが削減されます。更に、回路ボードの組み立てコストは、一般にボード組み立て工程で必要とされるデバイス数に比例して減少します。したがって、デバイス数の少ない設計では製造コストが低くなります。
アナログ・デバイセズのiCoupler 製品
アナログ・デバイセズのiCoupler 技術は、システム設計者にとってその他のアイソレーション・オプションと比較して明確な利点を持つ製品を可能にしました。
この独自のiCoupler 技術により、アイソレーションの実現に新しいオプションが加わりました。iCoupler製品は、優れた性能、低消費電力、高信頼性、部品数の削減をオプトカプラと同等のコストで提供します。
iCoupler 技術の概要
アナログ・デバイセズのiCoupler 技術は、オプトカプラ内で用いられるLED やフォトダイオードではなく、アイソレーションベースのオンチップ・スケールのトランスを提供します。ウェハ・レベルのプロセスを使ってトランスをチップ上に直接形成するため、低価格で複数のiCoupler チャンネルを他の半導体機能と一緒に組み込むことができます(図4 参照)。)
iCoupler設計で採用されている技術では、オプトカプラ内で行われる効率の悪い電気/光変換が不要になります。これは、iCoupler ではオプトカプラで使用されているLED がなくなるためです。また、チャンネルは完全にウェハ・レベルのプロセスで形成されるため、複数のiCouplerチャンネルを1 個のパッケージに組込むことができます。iCoupler技術は、性能の向上、低消費電力、小型化、高信頼性、コスト削減を可能にします。
オプトカプラに比較したiCoupler のもう1 つの明確な利点は、外付け部品が不要なことです。オプトカプラでは、バイパス・コンデンサの他に、出力トランジスタをバイアスしLED を駆動する外付けディスクリート・デバイスが必要です。iCouplerデバイスではデカップリング・コンデンサ以外の外付け部品は不要です。iCouplerソリューションを使うことで、回路が簡素化されてコストが削減されます。
isoPower を用いたiCoupler 技術
isoPower®技術により、チップ・スケールの絶縁型DC/DC コンバータの統合が可能になります。これらの電力コンバータは、デジタル・アイソレータやインターフェース・トランシーバーなどのアナログ・デバイセズの絶縁型製品に組み込まれています。isoPower デバイスは、16 ピンのSOIC で最大500mWの絶縁型電力を提供します。isoPower を利用する製品には、個別のDC/DC コンバータと比較して、全体的なシステム・コストとシステム・サイズを削減できるという利点があります。
isoPower デバイスは、300MHz もの高周波で電流をスイッチングする絶縁型DC/DC コンバータを採用しています。これらの高周波動作は、放射エミッション(放射妨害波)や伝導ノイズの原因となります。設計者は必ず、プリント回路基板(PCB)のレイアウトと構造に注意を払う必要があります。EMI の軽減方法については、AN-0971 アプリケーション・ノートを参照してください。
iCoupler 製品の選択
iCouplerファミリは製品の広範囲なポートフォリオから構成されているため、設計に最適な製品を選択することができます。iCoupler デバイスのポートフォリオには、1 チャンネル~4 チャンネルのオプションがあり、双方向通信向けに設計されたデバイスや、ボード設計を通じたフローを強化するために設計されたデバイスも含まれています。また、iCouplerデバイスでは広範囲なデータ・レート性能も提供しているため、アプリケーションに最適な製品を選択することができます。
iCouplerの機能とオプションのポートフォリオにより、デバイス数を削減しシステムのデータ性能条件をより良く満たすシステムの設計が可能となります(表1 参照)。
Model1, 2 | Number of Channels | Channel Configuration3 | UL Installation Rating (kV) | Fail-Safe Output State | Maximum Data Rate, 5 V | Maximum Operating Temperature | Package |
ADuM110N1BRZ ADuM110N0BRZ |
1 1 |
1/0 1/0 |
3.0 3.0 |
High Low |
150 Mbps 150 Mbps |
125°C 125°C |
8-lead SOIC_N 8-lead SOIC_N |
ADuM120N1BRZ ADuM120N0BRZ |
2 2 |
2/0 2/0 |
3.0 3.0 |
High Low |
150 Mbps 150 Mbps |
125°C 125°C |
8-lead SOIC_N 8-lead SOIC_N |
ADuM121N1BRZ ADuM121N0BRZ ADuM121N1WBRZ |
2 2 2 |
1/1 1/1 1/1 |
3.0 3.0 3.0 |
High Low High |
150 Mbps 150 Mbps 150 Mbps |
125°C 125°C 125°C |
8-lead SOIC_N 8-lead SOIC_N 8-lead SOIC_N |
ADuM130E1BRZ ADuM130E0BRZ ADuM130E1BRWZ ADuM130E0BRWZ |
3 3 3 3 |
3/0 3/0 3/0 3/0 |
3.0 3.0 3.75 3.75 |
High Low High Low |
150 Mbps 150 Mbps 150 Mbps 150 Mbps |
125°C 125°C 125°C 125°C |
16-lead SOIC_N 16-lead SOIC_N 16-lead SOIC_W 16-lead SOIC_W |
ADuM131E1BRZ ADuM131E0BRZ ADuM131E1BRWZ ADuM131E0BRWZ |
3 3 3 3 |
2/1 2/1 2/1 2/1 |
3.0 3.0 3.75 3.75 |
High Low High Low |
150 Mbps 150 Mbps 150 Mbps 150 Mbps |
125°C 125°C 125°C 125°C |
16-lead SOIC_N 16-lead SOIC_N 16-lead SOIC_W 16-lead SOIC_W |
ADuM140E1BRZ ADuM140E0BRZ ADuM140E1BRWZ ADuM140E0BRWZ |
4 4 4 4 |
4/0 4/0 4/0 4/0 |
3.0 3.0 3.75 3.75 |
High Low High Low |
150 Mbps 150 Mbps 150 Mbps 150 Mbps |
125°C 125°C 125°C 125°C |
16-lead SOIC_N 16-lead SOIC_N 16-lead SOIC_W 16-lead SOIC_W |
ADuM141E1BRZ ADuM141E0BRZ ADuM141E1BRWZ ADuM141E0BRWZ ADuM141E1WBRWZ |
4 4 4 4 4 |
3/1 3/1 3/1 3/1 3/1 |
3.0 3.0 3.75 3.75 3.75 |
High Low High Low High |
150 Mbps 150 Mbps 150 Mbps 150 Mbps 150 Mbps |
125°C 125°C 125°C 125°C 125°C |
16-lead SOIC_N 16-lead SOIC_N 16-lead SOIC_W 16-lead SOIC_W 16-lead SOIC_W |
ADuM142E1BRZ ADuM142E0BRZ ADuM142E1BRWZ ADuM142E0BRWZ |
4 4 4 4 |
2/2 2/2 2/2 2/2 |
3.0 3.0 3.75 3.75 |
High Low High Low |
150 Mbps 150 Mbps 150 Mbps 150 Mbps |
125°C 125°C 125°C 125°C |
16-lead SOIC_N 16-lead SOIC_N 16-lead SOIC_W 16-lead SOIC_W |
ADM3251EARWZ ADM3252EABCZ |
2 4 |
1 Tx/1 Rx 2 Tx/2 Rx |
2.5 2.5 |
N/A N/A |
460 kbps 460 kbps |
85°C 85°C |
20-lead SOIC_W 44-ball CSP_BGA |
1 D バージョンとE バージョンでは、有効/無効の機能が異なります。これらの製品のデータシートを参照してください。 2 ADuM121N1WBRZ とADuM141E1WBRWZ は、車載アプリケーションに適合しています。 3 Channel configuration とはアイソレーション・チャンネルの方向を意味します。例えば、2/1 は2 チャンネルが単方向で交信し、3 つ目のチャンネルは逆方向で交信することを意味します。 |
前述のように、アナログ・デバイセズはiCoupler 製品の広い選択肢を提供しています。性能とチャンネル構成の組み合わせにより、システムとデバイスの適合を最適化するための複数のシステム設計オプションが得られます。表1 に、チャンネル数やデータ速度性能などの製品比較を示します。
絶縁型RS-232 トランシーバーの放射エミッションの結果
完全絶縁型デュアルチャンネルRS-232 ソリューション用の評価用ボードEVAL-ADM3252EEBZ は、放射エミッション規格EN55022:2010 クラスB に従って実施しました。測定は、30MHz~2GHz まで、電波暗室(10m 法)内で行いました。表2 は、水平および垂直スキャンの結果が、いずれもEN55022 クラスB に合格できることを示しています。表2 は、放射エミッションが1GHz までしか観測されないことを示しています。1GHz~2GHzの範囲では放射エミッションは何も検出されませんでした。
VCC (V) | Frequency (MHz) | Quasi Peak Level (μV/m) | EN55022 Class B (μV/m) | Antenna Polarity | Antenna Height (m) | Pass/Fail |
3.3 | 173.672 | 16.6 | 30 | Vertical | 3.3 | Pass |
3.3 | 173.500 | 23.3 | 30 | Horizontal | 4.0 | Pass |
3.0 | 172.588 | 15.5 | 30 | Vertical | 2.7 | Pass |
3.0 | 172.848 | 28.1 | 30 | Horizontal | 4.0 | Pass |
5.5 | 174.656 | 10.6 | 30 | Vertical | 1.0 | Pass |
5.5 | 190.476 | 10.6 | 30 | Vertical | 1.0 | Pass |
5.5 | 190.476 | 18.1 | 30 | Horizontal | 4.0 | Pass |
1 ユーザ・ガイドUG-440 を参照。 |
バイパス・コンデンサ
iCoupler製品では、バイパス・コンデンサ以外の外付け部品は不要です。入力電源ピンと出力電源ピンにはバイパス・コンデンサを接続することが強く推奨されます。バイパス・コンデンサの値は、0.01μF~0.1μF にします。コンデンサの両端と電源ピンとの間のパターン長は20mm 以下にする必要があります。
出力イネーブル・コントロール
多くのiCoupler 製品には、出力を高インピーダンス状態にできる出力イネーブル・コントロール・ピンがあります。出力イネーブル・ピンがハイ・レベルまたはフローティング状態のとき、出力はアクティブなロジック状態になります。出力イネーブル・ピンがロー・レベルになると、出力はディスエーブルされます。ノイズの多いアプリケーションでは、出力イネーブル・ピンを既知のロジック・レベル(ハイ・レベルまたはロー・レベル)にすることが推奨されます。
まとめ
RS-232 仕様は柔軟性と高いノイズ耐性を持つため、このデザインはシステム間通信で非常に多く採用されていますが、システム間通信のケーブル・システムは、過電圧トランジェントとグラウンド・ループからの干渉と損傷を受け易くなっています。
RS-232 バスをそれに接続されたシステムからデジタル的にアイソレーションすると、信号の歪みと誤りが少なくなり、バス電圧とグラウンドの不一致からシステムと部品を保護します。
iCouplerファミリ製品は、広範囲な性能、チャンネル数、構成を提供しています。性能とチャンネル構成の組み合わせにより、システム設計に複数のオプションが生まれ、システム設計の最適化が可能となります。iCoupler 製品は、不可欠なアイソレーションをシステム設計に組込むコスト効率の高い方法を提供します。