アナログ・ダイアログの 2017 年 12 月号では、アクティブ・ラーニング・モジュール「ADALM1000」を紹介しました。前回(2018 年 1 月号)に引き続き、今回も同モジュールを使用して小規模かつ基本的な測定を行う方法について説明します。ADALM1000 に関する以前の記事は、こちらからご覧になれます。
それでは、2 つ目の実験を始めましょう。
トピック 2: 線形性/重ね合わせの理
目的
この実験の目的は、線形性/重ね合わせの理について確認することです。
背景
この実験では、図 2 に示した回路を例にとり、線形性/重ね合わせの理について検証してみます。
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「回路の応答が、回路上で機能している電圧源の値に比例する」とき、その回路には線形性があると言えます。その場合、比例定数 A を使用することにより、入力電圧と出力電圧の関係は以下の式で表すことができます。
比例定数 A は、回路のゲインと呼ばれることもあります。図 2 の回路の電圧源は VIN です。4.7 kΩ の抵抗の両端が応答 VOUT になります。線形性が存在する場合、重ね合わせの理が成り立ちます。ここが最も重要なポイントです。
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重ね合わせの理とは、図 3 のように、「複数の独立した電圧源が存在する線形回路の応答は、独立して機能している各電圧源によって生じる個々の応答を加算することによって得られる」というものです。
図 4 に示すように、回路内で単独で機能している個々の電源に対し、それ以外のすべての独立した電圧源はショート・サーキットによって置き換えることができ、それ以外のすべての独立した電流源はオープン・サーキットによって置き換えることができます。
準備するもの
- ADALM1000
- いくつかの抵抗: 1 kΩ 、2.2 kΩ、4.7 kΩ
手順
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分圧を確認します:
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図 2 の回路を構成します。電圧計ツールを使い、表1 に示す 3 種類の入力電圧 VIN(ADALM1000 で生成した固定の電源電圧を使用)に対応する VOUT を正確に測定します。また、固定の電源電圧の値も実測して記録します。
表 1.結果を記入するための表 VIN 〔V〕 VOUT〔V〕 A(単位はなし) 2.5 V 3.3 V 5.0 V - 前掲の式を使用し、それぞれの結果を基にして A の値を求めます。
- X 軸を VIN、y 軸を VOUT として値をプロットしたグラフを作成します。
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重ね合わせの理の確認行います:
- 図 3 の回路を構成します。4.7 kΩ の抵抗の両端にかかる電圧を測定/記録します。
- 図 4 の回路を構成します。4.7 kΩ の抵抗の両端にかかる電圧を測定/記録します。
- ステップ 1-a とステップ 2-b の応答を加算することにより、図 3 の回路全体の応答 VOUT を求めます。計算結果とステップ 2-a の測定結果を比較し、その違いについて説明してください。
問題
- 得られたグラフの形状は直線になっていますか。任意の点におけるグラフの傾きを求め、測定によって得られた A の値と比較してください。そのうえで、違いについて説明してください。
- 実験用に構成した 3 つの回路について、計算値と測定値を慎重に比較してください。そのうえで、違いについて説明してください。
答えは StudentZone で確認できます。
注記
アクティブ・ラーニング・モジュールを使用する記事では、本稿と同様に、ADALM1000 に対するコネクタの接続やハードウェアの設定を行う際、以下のような用語を使用することにします。まず、緑色の影が付いた長方形は、ADALM1000 が備えるアナログ I/O のコネクタに対する接続を表します。アナログ I/O チャンネルのピンは「CA」または「CB」と呼びます。電圧を印加して電流の測定を行うための設定を行う場合には、「CA-V」のように「-V」を付加します。また、電流を印加して電圧を測定するための設定を行う場合には、「CA-I」のように「-I」を付加します。1 つのチャンネルをハイ・インピーダンス・モードに設定して電圧の測定のみを行う場合、「CA-H」のように「-H」を付加して表します。
同様に、表示する波形についても、電圧の波形は「CA-V」と「CB-V」、電流の波形は「CA-I」と「CB-I」のように、チャンネル名と V(電圧)、I(電流)を組み合わせて表します。
本稿の例では、ALICE(Active Learning Interface for Circuits and Electronics)の Rev 1.1 を使用しています。
同ツールのファイル(alice-desktop-1.1-setup.zip)は、こちらからダウンロードすることができます。
ALICEは、次のような機能を提供します。
- 電圧/電流波形の時間領域での表示、解析を行うための 2 チャンネルのオシロスコープ
- 2 チャンネルの AWG の制御
- 電圧と電流のデータの X/Y 軸プロットや電圧波形のヒストグラムの表示
- 2 チャンネルのスペクトル・アナライザによる電圧信号の周波数領域での表示、解析
- スイープ・ジェネレータを内蔵したボーデ・プロッタとネットワーク・アナライザ
- インピーダンス・アナライザによる複雑な RLC 回路網の解析、RLC メーター機能、ベクトル電圧計機能
- 既知の外付け抵抗または 50 Ω の内部抵抗に関連する未知の抵抗の値を測定するための DC 抵抗計
- 2.5 V の高精度リファレンス「AD584」を利用して行うボードの自己キャリブレーション。同リファレンスはアナログ・パーツ・キット「ADALP2000」に含まれている
- ALICE M1K の電圧計
- ALICE M1K のメーター・ソース
- ALICE M1K のデスクトップ・ツール
詳細についてはこちらをご覧ください。
注)このソフトウェアを使用するには、PC に ADALM1000 を接続する必要があります。