ADALM2000による実習:MOSトランジスタで構成したゼロゲイン・アンプ

目的

前回(ADALM2000による実習:バイポーラ・トランジスタで構成したゼロゲイン・アンプ)に続き、今回もカレント・ミラーを取り上げます。カレント・ミラーは、入力電流の変動の影響を受けにくい出力が得られることを特徴とします。今回の実習では、MOSトランジスタで構成したカレント・ミラーを例にとり、ゼロゲイン・アンプの動作を改めて確認してみます。

準備するもの

  • アクティブ・ラーニング・モジュール「ADALM2000
  • ソルダーレス・ブレッドボード
  • 抵抗:2.2kΩ またはそれに値が近いもの(1 個)
  • 抵抗:168Ω(1 個。100Ω の抵抗と 68Ω の抵抗を直列に接続して使用)
  • 小信号NMOSトランジスタ:エンハンスメント型の「CD4007」または「ZVN2110A」(1 個)

説明

図1をご覧ください。これは、今回の実習で取り上げる回路です。NMOSトランジスタを使ってゼロゲイン・アンプを構成しています。

図1. NMOSトランジスタを使って構成したゼロゲイン・アンプ
図1. NMOSトランジスタを使って構成したゼロゲイン・アンプ

ハードウェアの設定

図1の回路において、抵抗R1の一端には任意波形ジェネレータ(AWG)の出力を接続しています。抵抗R1のもう一端は、トランジスタM1のゲートに接続しています。また、M1のゲートとドレインの間には抵抗R2を接続します。M1のソースはグラウンドに接続してください。このように接続することで、M1はソース接地回路として機能します。図2に、図1の回路を実装したブレッドボードを示しました。

図2. 図1の回路を実装したブレッドボード
図2. 図1の回路を実装したブレッドボード

手順

AWGは、ピークtoピークの振幅が4V、オフセットが2V、周波数が1kHzの三角波を生成するように設定します。オシロスコープのチャンネル1(1+)は、AWGの出力W1を表示できるように接続してください。オシロスコープのシングルエンド入力チャンネル2(2+)は、M1のゲート電圧とドレイン電圧を交互に測定するために使用します。

オシロスコープは、測定した2つの信号の数周期分が表示されるように設定します。XY機能を忘れずにオンにしてください。

シロスコープによる波形の表示には、ソフトウェア・パッケージ「Scopy」を使用します。図3~図5に、取得した波形の例を示しました。

図3. VGATEの波形
図3. VGATEの波形

図4. VDRAINの波形
図4. VDRAINの波形

図5.VGATEとVDRAINの比較
図5.VGATEとVDRAINの比較

問題:

  • ゼロゲイン・アンプは、どのような目的で使用されるのでしょうか。同回路の役割について説明してください。

答えはStudentZoneで確認できます。

著者

Doug Mercer

Doug Mercer

Doug Mercerは、1977年にレンセラー工科大学で電気電子工学の学士号を取得しました。同年にアナログ・デバイセズに入社して以来、直接または間接的に30種以上のデータ・コンバータ製品の開発に携わりました。また、13件の特許を保有しています。1995年にはアナログ・デバイセズのフェローに任命されました。2009年にフルタイム勤務からは退きましたが、名誉フェローとして仕事を続けており、Active Learning Programにもかかわっています。2016年に、レンセラー工科大学 電気/コンピュータ/システム・エンジニアリング学部のEngineer in Residenceに指名されました。

Antoniu Miclaus

Antoniu Miclaus

Antoniu Miclausは、アナログ・デバイセズのシニア・ソフトウェア・エンジニアです。Linuxやno-OSドライバを対象とした組み込みソフトウェアを担当。それ以外に、アナログ・デバイセズのアカデミック・プログラムやQAオートメーション、プロセス・マネージメントにも携わっています。2017年2月から、ルーマニアのクルジュナポカで勤務。クルジュナポカ技術大学で電子工学と通信工学の学士号、バベシュボヨイ大学でソフトウェア・エンジニアリングの修士号を取得しています。