データシートとSPICEマクロモデルのどちらに重きを置くべきでしょうか?(「変化は必ずしも人生のスパイスにならない」ということについて)

質問:

貴社のアンプ・モデルの1つを 用いてSPICE(Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis) シミュレーションを実行すると、 データシートと異なる結果が出ます。 どちらを信じたらよいのでしょうか?

RAQ:  Issue 47

回答:

これは、人生において色々であることが必ずしも好ましくない例の1 つですね。確かにSPICEモデルとデータシートに関して私たちが求めているのは、つねに同じであることと整合性です。ご質問に答える前に、SPICE についてちょっと一般的な説明をさせてください。SPICE ソフトは、マクロモデルを用いて実際のデバイスのシミュレーションを行うものです。マクロモデルは簡略化された回路モデルであり、一般に“ 実際”の素子はごくわずかで、大部分は依存型や独立型の電圧/電流源で構成されています。マクロモデルは、完全なトランジスタ・レベルのモデルではありません。多くのアプリケーションで、マクロモデルを用いたSPICE シミュレーションによって実際の回路性能の優れた1 次近似が得られます。ただし、あくまで「優れた」であって、「正確な」とは言いません。高速アプリケーションの場合は、特にこのことが当てはまります。

大部分のオペアンプ・マクロモデルは、入手できるあらゆるオペアンプ・パラメータの約50 ~ 75%しかモデル化していません。これには色々な理由がありますが、たとえばシミュレーションの速度、マクロモデルの開発にかかる時間、モデルの複雑さなどがあります。したがって、モデルによってはデータシートの性能に届かず、可能なあらゆる条件において現実と一致しないことがあっても不思議ではありません。これがマクロモデルの限界なのです。

では、くどくどしい説明はこれくらいにして、ご質問の件に戻りましょう。「データシートとSPICE モデルのどちらの情報を信用すべきか?」ですね。アナログ・デバイセズでは、モデルは測定データを基にして作成していますが、データシートに記載されているのがその測定データです。したがって、モデルの性能かデータシートかという問題が発生したら、必ずデータシートの情報を信頼するようにアドバイスしています。データシートの情報は測定済み、証明済みの信頼できるデータです。

大部分のお客様は、回路を設計するときに何らかのシミュレーションを行っています。SPICE モデルのないアンプには見向きもしないという方もなかにはおります。今日ではブレッドボードやプロトタイプを作成する時間や人手の余裕のある設計者はごくわずかしかいません。これは長い目で見れば時間の節約ができるということからです。特に高速アプリケーションの場合は、回路基板が回路の性能に決定的な影響を与えるため、ブレッドボードが重要であるといくら口をすっぱくして言っても言い足りないくらいです。ブレッドボードが不可能であれば、シミュレーションが次善の策になります。それでも、とにかくデータシートを信頼することが第一であることを忘れないでください。

では、くどくどしい説明はこれくらいにして、ご質問の件に戻りましょう。「データシートとSPICE モデルのどちらの情報を信用すべきか?」ですね。アナログ・デバイセズでは、モデルは測定データを基にして作成していますが、データシートに記載されているのがその測定データです。したがって、モデルの性能かデータシートかという問題が発生したら、必ずデータシートの情報を信頼するようにアドバイスしています。データシートの情報は測定済み、証明済みの信頼できるデータです。

大部分のお客様は、回路を設計するときに何らかのシミュレーションを行っています。SPICE モデルのないアンプには見向きもしないという方もなかにはおります。今日ではブレッドボードやプロトタイプを作成する時間や人手の余裕のある設計者はごくわずかしかいません。これは長い目で見れば時間の節約ができるということからです。特に高速アプリケーションの場合は、回路基板が回路の性能に決定的な影響を与えるため、ブレッドボードが重要であるといくら口をすっぱくして言っても言い足りないくらいです。ブレッドボードが不可能であれば、シミュレーションが次善の策になります。それでも、とにかくデータシートを信頼することが第一であることを忘れないでください。




著者

John Ardizzoni

John Ardizzoni

John Ardizzoniは、アナログ・デバイセズの高速リニア・グループの上級アプリケーション・エンジニアです。 マサチューセッツ州ノースアンドーバーのメリマック・カレッジでBSEE(電子工学士)を取得し、2002年にアナログ・デバイセズに入社しました。エレクトロニクス業界で30年以上のキャリアがあります。