工具箱の中身は?

質問:

問題を解決するときには電動ツールと手動ツールのどちらが お好みですか?

RAQ:  Issue 41

回答:

作業が小~中規模のものなら手動、大規模な作業なら電動のツールにします。

私たちは、毎日「ツール」を使って作業をしています。エンジニアリングの世界では、工具箱はありとあらゆるものでいっぱいです。スプレッドシートや回路/メカニカル・シミュレーション・プログラム、数値演算ソフトウェア(電動ツールに属す)など、何でもかんでもそろっています。とはいえ、最新、最大級、最先端のツールが問題を解決するために必ずしも最善の選択肢になるわけではありません。実際、「その仕事に最適なツール」によって大きな成果をあげられることがあります。

精巧に作られ調整された工具を使って、難易度の高い仕事や技を要する作業をするほど楽しいことはありません。私などは自分のアトリエでビンテージのスタンリー社製かんなを使うのが大好きです。この道具のすばらしい性能にいつも惚れ惚れします…すみません、ちょっと脱線してしまいました。


ツールが役に立っているかどうかを判断する真の基準は、そのツールをどれだけ使っているか、また調子よく使えているかどうかでわかります。職場では、アプリケーションで毎日発生する問題を解決するためにあらゆるツールを用意していますが、お気に入りのものを2つ挙げるとすると、テブナンの定理および重ね合わせ(手動ツール)になります。ホワイトボードや紙の上でこれらのツールを使えば、複雑な回路の問題がたちまち簡単になり、解決することができます。特に、オペアンプや差動アンプのアプリケーションに効果的です。

現代のようにあらゆる自動化システムや計算システムの力を借りることができる時代に、誰かが好んで手書きで問題を解くといえば、笑われるかもしれません。しかし、皆さんがシミュレーション・プログラムを起動し、回路図を入力し、シミュレーションを実行する頃には、たいていの場合、私のほうは古き良きテブナンの定理や重ね合わせによって答えを出しているのです。

ご存知のように、テブナンの定理を使用すれば、線形回路網を等価なオープン・サーキット電圧VThと等価な直列抵抗RThに置き換えることができます。RThを決定するには、独立したすべての電圧源を短絡し、独立した電流源をオープン・サーキットにします。重ね合わせは、複数の独立したソースを持つ線形回路網に利用します。まず、各ソースの寄与を、ほかの電圧/電流源をゼロに設定して個別に計算します。次いで、すべての結果を合計して出力を計算します。この2つのツールを組み合わせれば、非常に効果的です。

そういうわけで、今度皆さんが思わず「電動ツール」に手を伸ばそうとしていたら、ちょっと考えてみてください。ひょっとしたら、「手動ツール」のほうがよいかもしれませんよ。皆さんは、仕事や趣味でどんなツールがお気に入りでしょうか?ぜひ、私宛に電子メール(john.ardizzoni@analog.com)をお送りください。次回のこのコラムでそのうちの2~3をご紹介したいと思います。



 




著者

John Ardizzoni

John Ardizzoni

John Ardizzoniは、アナログ・デバイセズの高速リニア・グループの上級アプリケーション・エンジニアです。 マサチューセッツ州ノースアンドーバーのメリマック・カレッジでBSEE(電子工学士)を取得し、2002年にアナログ・デバイセズに入社しました。エレクトロニクス業界で30年以上のキャリアがあります。