モノリシック・スイッチング・レギュレータ −すべてを1チップに集約する利点

スイッチング・レギュレータは、モノリシックで、またはコントローラを介して、構成することができます。モノリシックのスイッチング・レギュレータでは、それぞれのパワー・スイッチ(通常はMOSFET)が1つのシリコン・チップ内に組み込まれています。コントローラを使用する場合は、コントローラICに加えてパワー半導体を選択し、別に配置する必要があります。MOSFETの選択は時間のかかる作業であり、スイッチのパラメータに関して一定の理解が必要です。モノリシック設計で設計すれば、設計者はこのような問題に対処する必要はなくなります。また、コントローラ・ソリューションは、通常、高集積ソリューションよりも多くのボード・スペースを必要とします。このため、これまで長年にわたり多くのスイッチング・レギュレータがモノリシック形態で実装されており、大電力の場合でさえも、今日、多くの選択肢から最適なソリューションを選ぶことができるのも不思議ではありません。モノリシック降圧コンバータを図1の左側に、コントローラ・ソリューションを右側に示します。

図1 モノリシック降圧コンバータ(左)外付けスイッチを使用したコントローラ・ソリューション(右)

図1 モノリシック降圧コンバータ(左)外付けスイッチを使用したコントローラ・ソリューション(右)

モノリシック・ソリューションの場合は必要スペースが小さく設計プロセスも簡略化されますが、コントローラ・ソリューションにも柔軟性が高いという利点があります。設計者は、コントローラ・ソリューション用に最適化された特定用途用のスイッチを選ぶことができます。また、スイッチ用のゲートに接続できるので、受動部品をうまく使うことでスイッチング・エッジに影響を及ぼすことが可能です。更に、コントローラ・ソリューションでは大容量のディスクリート・スイッチを選ぶことができるので大電力に適しており、コントローラICから熱的に分離されるのでスイッチング損失が緩和されます。

しかし、モノリシック・ソリューションとの対比でなされるこのような一般的な議論に加えて、あまり考慮されることのない別の側面があります。スイッチング・レギュレータでは、いわゆるホット・ループが放射エミッションを抑制する上で決定的な役割を果たします。すべてのスイッチング・レギュレータは、EMCを最小限に抑える必要があります。これを実現するための基本的なルールの1つが、各ホット・ループの寄生インダクタンスをできるだけ小さくすることです。降圧コンバータでは、入力コンデンサとハイサイド・スイッチ間のパス、ハイサイド・スイッチとローサイド・スイッチ間の接続、およびローサイド・スイッチと入力コンデンサ間の接続が、ホット・ループの一部を構成します。これらの電流パスでは、スイッチング遷移と同じ速度で電流が変化します。この高速の電流変化により寄生インダクタンスを介して電圧オフセットが形成され、それが干渉として様々な回路部分と結合する可能性があります。

したがって、ホット・ループ内に存在するこれらの寄生インダクタンスをできる限り小さく抑える必要があります。図2の左側にモノリシック・スイッチング・レギュレータ、右側にコントローラ・ソリューションを示し、それぞれのホット・ループのパスを赤で示します。モノリシック・ソリューションには2つの利点があります。1つはコントローラ・ソリューションよりもホット・ループが小さいこと、もう1つはハイサイド・スイッチとローサイド・スイッチ間の接続パスが非常に短く、シリコン上でのみ配線されていることです。これに対し、コントローラICを使ったソリューションでは、この接続電流パスは、パッケージングの寄生インダクタンス(通常はボンディング・ワイヤとリード・フレームの寄生インダクタンスによる)を介さざるを得ません。このため電圧オフセットが大きくなり、それに応じてEMC挙動も悪化します。

図2 モノリシック・スイッチング・レギュレータ(左)コントローラIC使用のソリューション(右)、赤:ホット・ループの位置

図2 モノリシック・スイッチング・レギュレータ(左)コントローラIC使用のソリューション(右)、赤:ホット・ループの位置

まとめ

以上のように、モノリシック・スイッチング・レギュレータにはEMIに関する利点もありますが、このことはあまり知られていません。その干渉がどの程度のものであり、回路にどの程度影響するのかは、他の多くのパラメータによって異なります。しかし、モノリシック・スイッチング・レギュレータとコントローラIC使用のソリューションの間には、EMC挙動の点で違いがあるという基本的な認識は、考慮に値する要素です。

Frederik Dostal

Frederik Dostal

Frederik Dostalは、ドイツのエアランゲン・ニュルンベルク大学でマイクロエレクトロニクスについて学びました。2001年にパワー・マネージメント事業の分野で働き始め、アリゾナ州フェニックスで4年間にわたってスイッチング電源を担当したほか、さまざまなアプリケーション分野の業務に携わってきました。2009年にADIに入社し、ミュンヘンのアナログ・デバイセズでパワー・マネージメントのフィールド・アプリケーション・エンジニアとして従事しています。